特集 JFW-JC、PTJ開催(3)/JFW‐JC2020&PTJ20秋冬/有力出展企業

2019年11月14日 (木曜日)

〈宇仁繊維/PJの進展を披露〉

 PTJ常連の宇仁繊維(大阪市中央区)は今回展でも備蓄機能による多品種・小ロット・短納期機能をアピールするとともに、推進中の各種プロジェクト(PJ)から生まれた新作生地を披露する。

 売れ筋として、ウール調合繊、割繊糸使いのジャカードやプリントなどを打ち出す。先頃開催した個展でもこれらの生地が来場者から好評を博した。

 同社は近年、高級化路線や効率生産、モノ作りの充実などを目的に各種PJを社内で立ち上げている。初弾として取り組んだ「ゴーゴージャカードPJ」では播州や北陸産地の提携織布工場に設備を導入したり、専用ラインを敷くなどで増強生産体制を整え、カットジャカードやジャカードオンプリントなどを中心に販売も順調に拡大している。

 今期(2020年8月期)から新たに立ち上げたのが、「ゴーゴーテックPJ」。小松マテーレと連携し、吸水速乾、防汚、UVカット、抗菌防臭、撥水(はっすい)といった機能加工生地を充実させる。プリントでもPJを立ち上げており、スクリーン、インクジェットを駆使した多様なプリント生地を打ち出す。

〈柴屋/新規開拓へ天日干しなど〉

 生地商社の柴屋(大阪市中央区)は今回が8回目のPTJ出展。近年はブースを広くし、ブースに詰める社員の数を増やしたことも奏功してPTJ出展者の中でも多くの来場者を集めるブースとして認知されている。

 以前は最少小間で出展していたが、2017年11月展からブースを広げ、人員も大幅に増やした。以来、120社、207社、360社、272社とブースを訪れるバイヤーが拡大している。

 同社は広範な産地企業と取り組んだ多彩な生地を備蓄し、小口・短納期対応を最大の特徴とする。PTJに求めるのは新規顧客との出会い。名刺の数にこだわり、スワッチピックアップの数にこだわる。新規の名刺のうち、10社に1社ほどが成約につながるらしく、「PTJを通じて新規を増やしてきた」。業績もここ数年右肩上がりだが、新規獲得という点でPTJの貢献度合いは非常に高いと言う。

 今回展のイチ押し生地は、天日干しのシリーズ。加工を終えた生地を実際に天日で干すため機械乾燥とは大きく違う風合いに仕上がる。取り扱いの難しい生地ではあるが、大きな反響が既に寄せられており、今回展でも訴求を強めて拡販を狙う。このほか、和紙使いの提案にも力を入れる。

〈播/「へそデニム」に特化〉

 播州織産地の産元、播(兵庫県西脇市)は、今回のPTJで同産地企業と共同で開発した生地「へそデニム」に特化してアピールする。

 この生地は、昨年販売を始め、これまでシャツ、ワンピース、チュニック、ボトムスなどカジュアルウエアで採用実績がある。今回のPTJは出展内容をこの商材に絞ることで認知度アップと、拡販を狙う。

 へそデニムは、インディゴ染料で綛(かせ)染めした糸を使う。まとまった量に適したロープ染色に対して、少量でもインディゴの多彩な色合いを出せる独自の綛染め機を開発し、同産地内で一貫生産する“初のデニム”をうたう。播と糸染めの播磨染工(同多可町)、繊維機械商社の片山商店(西脇市)の3社で共同開発した。

 一般的なデニムとは異なる生地の表情が魅力。染料濃度を調整できるため、さまざまな色の違いを楽しめる。播州が得意とするカラフルな先染め糸と組み合わせた豊富なカラーバリエーションも強み。糸の混用率は綿に限らず、綿・「テンセル」リヨセル混、綿・リネン混なども染色できる。

〈内外織物/原糸の独自性生かし提案〉

 播州織産地の産元、内外織物(兵庫県西脇市)はオリジナルの原糸で差別化したテキスタイルの提案を得意とする。今回のPTJでも独自性を追求した、新たな原糸での提案に力を入れる。

 その一環として、特殊な複合紡績技術を駆使した「スーパーウルトラファインポリエステル」を用いた綿混原糸(60番単糸、80番単糸)、ポリノジック混原糸(50番単糸)を使用した織物をアピールする。トップス、アウター、メンズからレディースまで幅広く提案する。

 好評の「フェザーコットン」では今回は細番手シリーズも加え拡販を狙う。従来は40番単糸と60番単糸で展開してきたが今回は80単糸を使ったものを加える。先染め織物では、同社が国内独占販売する。

 フェザーコットンは生地にした際の柔らかさと軽さが特徴。風合いだけでなく、機能性を持たせた素材も提案する。これまで綿100%だったが、横糸にポリノジック混の糸を打ち、これまでにないバリエーションにする。トップスからアウター衣料に加え寝装用途にも訴求する。

〈カゲヤマ/海外顧客の獲得狙う〉

 播州織産地の産元、カゲヤマ(兵庫県西脇市)はバイオーダーと備蓄販売の両方を展開し、カジュアルを中心に幅広く対応する。産地生産を軸にしながらも中国での生産対応も可能。こうした生産基盤を強みにPTJ展にはほぼ毎回、出展しており、備蓄機能と独自の企画開発力を武器に新規顧客を獲得してきた。

 今回展では徐々にアジアのバイヤーが増えているため海外顧客への販路拡大に取り組むとともに、既存顧客への新作披露の場としてもPTJ展を活用する。海外向け強化策としてオーガニック綿混、キュプラ混素材など環境への影響を考えた商材を充実させる方針。

 今回のイチ押し商材の一つは、綿とカシミヤを複合した綾織素材。同社の人気シリーズである特殊起毛を施した「マイクロナップツイル」でカシミヤ混を投入した。トレンドを意識した配色と高級感のある風合いに仕上がっている。

 二つ目は綿100%のオンブレーチェック。オンブレーチェックに小紋柄を組み込み、見た目、目付ともにヘビーな仕上がりになっており、粗い起毛を施すことによってビンテージ感も付与した。

〈森菊/サステ訴求、天然の複合も〉

 三河産地の産元、森菊(愛知県蒲郡市)はPTJでサステイナビリティー(持続可能性)を意識した生地ブランド「ネイチャーアンドサンズ」を訴求する。オーガニックコットンを中心とした天然繊維の複合素材をそろえた。

 ネイチャーアンドサンズは昨年開催のPTJ2019秋冬展で初めて披露。同ブランドではオーガニックコットンのほか、ウールやシルクといった天然繊維に加え、再生繊維といった豊富な素材を使った生地をそろえる。

 同社はブランドを展開する前からオーガニックコットンや再生セルロース繊維「テンセル」を使った生地を各部署で手掛けており、元々サステイナビリティーへの意識は高かった。各部署を超えて横断的にサステイナビリティーを打ち出すためブランドを立ち上げた。

 今回のPTJでは、得意とするオーガニックコットンをメインにテンセルやシルクを複合させた生地をアピールする。シワ加工での表面変化やジャカードで特殊な柄を施し見た目の面白さをアピールする。

 ブランド展開からちょうど1年が経過し認知度も徐々に向上しているが、サステイナブル(持続可能な)素材イコール森菊となるべく今後もPRを図る。

〈古橋織布/昔人気の遠州ツイード訴求〉

 シャトル織機による製織を手掛ける古橋織布(浜松市)はPTJで、以前人気だった遠州ツイードに加えて、サステイナビリティー(持続可能性)を意識した生地を提案する。

 遠州ツイードは経糸、緯糸にウールとヘンプの混紡糸を使用し霜降り調を表した。整理工程で洗いしかしていないため、尾州産地にはない粗野でラフな表情感が特徴。糸は同社がオリジナルで開発しており、毛番手で3、7、20番を使った生地もそろえた。

 10年ほど前に人気だった生地で、これまで出品した展示会でも好評を得ており、ピックアップ数や問い合わせも増えている。

 サステイナビリティーに対応した素材としては、経糸に綿、緯糸に「ベンベルグ」と防縮ウールの混紡糸を使った高密度織物を打ち出し、エレガントなシャツ地向けに訴求。反応染料で染めることによって、ウールが染まりにくくなり色ムラができるのが特徴。ウールをラミーに変えた生地も用意する。

 今後は綿を中心としながら、シルクやカシミヤといった高級素材を複合させた生地も展開する方針。アッパーゾーン向けの提案を強化する。

〈鈴木晒整理/アレル物質沈静化スプレー訴求〉

 染色整理加工の鈴木晒整理(浜松市)は機能加工の技術を生かして開発した、ハウスダストなどのアレルゲンを沈静化する効果があるスプレーを訴求する。

 スプレーは花粉とハウスダスト、インフルエンザとノロウイルスを沈静化する2種類を用意。衣料品や寝装品に直接吹き掛けて使う。一度使用すると、洗濯などをしても1カ月は効果が持続するというデータも実証済み。

 スプレーと同様の効果がある「アレルアタック」という機能加工があったが、洗濯を繰り返すとどうしても効果が落ちることがあった。直接吹き掛けられるスプレーにすることで、製品を購入した消費者が自宅などで気軽に“加工”を施すことができる。

 PTJでは新たに開発した風合い加工も訴求。シャツやブラウス向けの「ソルベ」はシャリ感に滑りの良い手触りを付与する。さらに、上品な光沢感も表現できるためトレンドとして浮上しているエレガントさも演出できる。

 光沢感やソフトなタッチを施す「ディアモイスト」はこれまでの起毛品から別珍やコーデュロイなどに素材を変えて提案する。ベルベット調の生地を表現できるのが特徴だ。

〈豊島/廃棄食材を染料に活用〉

 豊島の八部はPTJに初出展する。廃棄予定の食材を再利用して染料に活用するプロジェクト「フードテキスタイル」を提案。原料から生産までのトレーサビリティー(追跡可能性)の仕組みを訴求する。

 同プロジェクトは2015年に開始。カット野菜の切れ端やコーヒーの出がらし、形が不ぞろいな食品といった廃棄食材を食品メーカーから買い取り、野菜やフルーツといった分類に分けて染料を抽出する。現在では500色展開しており、綿素材を中心にTシャツやバッグなどを製品化している。

 廃棄食材でも徹底した管理を実施しており、どのような流通工程を経たのかが分かるような仕組みを構築。食品メーカー、染工場、編み立て・織布工場、縫製工場といった一連の生産・流通工程を同社が一元管理することで、厳格なトレーサビリティーを実現する。

 PTJではトレーサビリティーを確立したトルコのオーガニックコットンを使った製品を展示し、原料からのトレーサビリティーにもこだわった。さらに、何グラムの廃棄食材で染めたかが分かるQRコードも用意し手軽に追跡ができることをアピールする。

〈岐阜化繊工業/NPの新用途を提案〉

 ニードルパンチ不織布(NP)専業メーカーの岐阜化繊工業(岐阜県各務原市)はJFW―JCに初めて出展する。アパレル・雑貨製造卸業に対して、NP素材の市場開拓をするのが狙い。

 ブースではNPと織・編み物を貼り合わせ、主に衣料分野向けに開発した「クリサンセマム」と小物・雑貨を対象とした「エフバイエフ」の両素材を商品化して展示。NPの特徴である軽量感、保温性、通気性の利点を活用した新素材をとして訴求する。

 提案商品では、クリサンセマムでドレス、帽子、巻きスカートのファッション衣料のほか、和のイメージを訴求した甲冑タイプのワインボトルホルダーも出品。貼り合わせ素材は織物・ニットの他、レースとも組み合わせて色、柄、意匠性も追求した。エフバイエフではカラフルに染色したNPでペン立てといった雑貨類を展示する。

 不織布というとこれまで衣料副資材や産業・生活資材向けが多く、衣料や雑貨の表素材用として提案するのは珍しい。

 岐阜化繊工業では、今回の出展を機会に来場者の声を聞き、さらに新たな用途の開発も進める予定。今月の6~9日にポートメッセなごやで開かれた国内最大級の異業種交流展示会「メッセナゴヤ2019」にも出展した。

〈ササキセルム/ノスタルジー性を訴求〉

 アウターやボトム用生地を主に扱うササキセルム(愛知県一宮市)は、PTJの出展が6回目。主力のポリエステル・レーヨン混素材に加え、尾州産地を含めた国内外のウール混生地を、テーマカラーで統一して提案する。半面、生地の風合いや機能も分類してブランディングした。

 今回のテーマは「デイ ドリーム ノスタルジア」に設定。日常の中にも感動的な懐かしさを訴求した素材で、非日常性を具現化した。テーマカラーは肌をイメージするスキンカラーをアレンジし、ナチュラルな配色が主体。

 主な提案生地では、軽量感のある再生ウールを使用し、オンブレチェックに起毛を施したシャギータイプが注目される。透け感や光沢のある織物に加え、ベロアといったニット素材も提案に加えた。

 生地の風合いと機能を明確化するためにブランディングも行い、生地特性をそれぞれ分類してタグでアピールする。

 尾州産地でストレッチと起毛加工を施した生地は「セリッシュ」、ウール混は「セリッシュ プラス」と分類。スーパーストレッチが特徴の生地は「セルフォート」、起毛した生地は「セルウォーム」と区別した。

〈ケケン/サステイナブルなウール〉

 ケケン試験認証センター(ケケン)はJFW―JCの「Bishu Style」内に出展する。これまでウールを中心とした検査機関として尾州産地に寄り添ってきた。今回はウールの品質や快適性に加え、“サステイナビリティー”(持続可能性)についてもアピールする。

 ケケンは昨年、NTTと共同で科学的産地推定技術を取り入れた「カシミヤ品質検査システム」の実証実験を開始した。NTTのレーザガスセンシング技術を利用したもので、市場に流通するカシミヤ製品を対象に産地推定を行う。今回はその続報を発表する。この産地証明情報を原料から製品までのカシミヤ工場(工程)認証システムにつなげる考え。「将来的には労働環境を含めたCSR(企業の社会的責任)にも広げたい」と言う。

 9月にはSDGs(持続可能な開発目標)を意識した環境配慮団体テキスタイル・エクスチェンジ(米国)に登録加盟した。「カシミヤだけでなくSDGsの分野にも着手」する。ウールの生分解性についても会場でアピールする。「小松菜の鉢に毛糸を入れる生育実験を行った。生分解して有機養分も増え、保水力も高まった」とし、会場で鉢植えを展示する。

〈篠原テキスタイル/多様なデニムをアピール〉

 デニム製造の篠原テキスタイル(広島県福山市)は今回のPTJで、色落ちしないデニム調素材「ポリオリ」など、独自開発したデニムを打ち出し、提案を強める。

 ポリオリは、ポリエステル100%使いでデニム調のツイルを表現した色落ちしない織物。経に再生ポリエステル100%スパン糸、緯にはポリエステル100%スパン糸あるいはストレッチ性のあるポリエステル系複合糸「ライクラT400ファイバー」を採用した。

 耐光堅ろう度4級以上、湿摩擦堅ろう度4級を誇るほか、ピリング試験5級をクリアするなど、安定した物性も確立。アパレル以外にも資材関係などからのサンプル依頼も多いほか、10月に開かれた「ファッションワールド東京」に出展した際にも好評を博すなど関心が高まっている素材となる。

 綿を前晒しせずにわたの色を生かし、“赤土の荒々しい大地”をイメージした風合いが特徴のブルキナファソ綿を使ったデニムや、サステイナビリティー(持続可能性)への意識の高まりから再評価されつつある「テンセル」デニムなども展示。商品開発力を生かした他社にはあまりない独自性の高いデニム素材で訴求を強める。

〈高島織物工業協同組合/ちぢみや帆布を訴求〉

 高島織物工業協同組合(滋賀県高島市)はJFW―JCには初出展。ビッグサイトで開催されていたころのJCには出展していたが、それ以来になる。

 同工協組は毎年1~3月にかけて産地総合展「ビワタカシマ」を開催している。大阪展は既存顧客含めて来場者数が高位安定しているが、東京展は特にここ数回、伸び悩んでいた。この現状を打開するために選んだのが、JFW―JCであり、ビワタカシマ実行委員長を務める増田英信氏(マスダ専務)も「多くのバイヤーと出会いたい」と新規来場者との商談に期待を示す。

 同産地のメイン商材はちぢみ(楊柳、クレープ)で、主な用途はステテコなどのインナー、パジャマなどのルームウエア、シーツなどの寝装品。以前は白生地が主力だったが、これに加えて近年は先染め糸を用いた色鮮やかなちぢみも充実している。資材向けの織布工場もメンバーに名を連ねていることから帆布などの厚地、時代を意識したエコ素材の打ち出しも見どころの一つになる。

 整経、撚糸、製織、加工まで産地内一貫生産が可能で、若い後継者もそろう。JFW―JCで「モノ作りのパートナーを」と意気込む。