旭化成/工業用も電気以外で海外/小津産業とプロジェクト

2019年12月06日 (金曜日)

 旭化成の不織布事業部はキュプラ長繊維不織布「ベンリーゼ」使いの工業用ワイパー「ベンコット」で、エレクトロニクス以外の海外市場開拓に乗り出す。19年度からベンコットの製造販売元である小津産業(東京都中央区)と海外拡大プロジェクトを設けて市場調査をスタートした。

 ベンコットは短繊維不織布や編み地製ワイパーに比べて、脱落繊維が少ないという低発塵性が最大の特徴。これを生かして半導体製造などエレクトロニクスのクリーンルーム用ワイパーを国内外で販売するが「低発塵(じん)性が合致する分野は海外も含めて他にもある」(中嶋康善不織布事業部長)ことから、エレクトロニクス以外の用途開拓に力を入れる。

 医療用ガーゼ「ハイゼガーゼ」などメディカル用でも海外市場を攻める。パートナー探索の段階だが「いかに流通チェーンを抑えるかが課題」と言う。中国市場については、旭化成メディカルの中国子会社や専門商社と連携しながら開拓を図る。

 ベンリーゼはこの数年、中国や韓国のフェースマスク向けを拡大してきたが、ここに来て中国向けは低価格品との競争により販売が鈍化。その影響で70%だった輸出比率も60%に下がった。工業用ワイパーやメディカル用の海外販売の強化はフェースマスク依存度の高さを是正する意味もある。

〈油水分離も海外へ増員し市場調査着手〉

 旭化成の不織布事業部は油水分離フィルターシステム「ユーテック」などを手掛ける応用製品でも海外販売を本格化する。

 応用製品はこれまで国内販売を主体としていたが、人員も増強し海外市場の開拓に乗り出した。専門商社と連携しながら、出張ベースで中国、台湾、韓国、シンガポールなどの市場調査を始めた。

 中嶋事業部長は「主力用途の石油精製や化学などの国内プラントは減少しているが、海外にはまだまだニーズがある」と期待。油水分離だけでなく、産業用洗浄分野の開拓も探る。これまでは人員体制の問題もあり、本格的に海外開拓には取り組めていなかった。