インドネシアの日系繊維企業/“日本向けだけ”では限界/内販、三国間輸出が重要に

2020年03月24日 (火曜日)

 インドネシアの日系繊維企業が内販や三国間輸出への志向を一段と強めている。背景にあるのが日本国内の衣料品市況の冷え込み。多くの繊維企業の間で“日本向けに依存するのは限界に来た”との認識が一段と強まっている。日系アパレルやSPAがインドネシアでの生産と販売を拡大していることも、こうした流れを加速させる。(宇治光洋)

 インドネシアの日系繊維企業でも、特に紡織企業は日本向けの比率が高い。2019年はシャツ地やユニフォーム地、日本で加工する中東民族衣装用生地などが堅調だったものの「日本国内の衣料品市況の冷え込みを考えると、これ以上日本向けの販売に依存するのは限界がある」との声が上がる。こうした中、糸・生地のインドネシア内販やASEAN域内販売など三国間輸出の重要性が一段と高まった。

 背景にはインドネシアの独自事情もある。インドネシア当局は国内産業保護政策として小売業に対して一定割合の国産品を扱うことを要請している。このためインドネシアで内販を拡大している日系SPAやシャツアパレルなどはインドネシアでの生産を拡大せざるを得ない事情がある。こうした需要を取り込むことが日系繊維企業にとって重要になる。

 もちろんハードルは高い。米中貿易摩擦の影響でインドネシアにも安価な中国製の糸・生地が流入しており、汎用的な商品では太刀打ちできない。このため独自性のあるモノ作りが不可欠になった。

 東洋紡グループは東洋紡マニュファクチャリングインドネシアで編み立て・染色し、STGガーメントで縫製するニット製シャツ「Zシャツ」が日系シャツアパレルや欧米ブランドのライセンス生産品に採用されるなど成果を上げている。

 東レグループはインドネシアだけでなくタイ、マレーシアのグループ各社と連携し、生機や染色加工スペースの相互利用や開発情報の一元化を進める。これにより商品の高付加価値化を進め、SPA向け縫製オペレーションへの参画を拡大する。回収ペットボトルを原料とする再生ポリエステル「&+(アンドプラス)」の生産も日本とASEAN各地の拠点が連携することで生産を本格化し、ブランド展開する構想が進む。

 インドネシア内販でもう一つ注目が高まっているのがバティックやヒジャブなど民族衣装用の生地。比較的安定した需要があることに加え、海外品との競争も少ないとされる。東海染工のインドネシア子会社、トーカイテクスプリントインドネシアは民族衣装用プリントを強化し、紡織のニカワテキスタイルインドネシア、織布・染色加工の日清紡インドネシアを擁する日清紡グループも主力のシャツ地に加えて民族衣装用織物の販売拡大に取り組む。

 日本国内の繊維市況が低迷する中、インドネシアの日系繊維企業も従来以上に“自立”することが必要になったと言えそうだ。