特集 アジアの繊維産業Ⅱ(4)

2020年03月31日 (火曜日)

〈独自商品で内販拡大/車両用資材も新規開拓/東洋紡グループ〉

 東洋紡グループはニット製シャツ「Zシャツ」など独自商品を生かしたインドネシア内販の拡大を進めている。自動二輪車・自動車向け資材編み地の拡販も成果を上げており、勢いのない日本向けスポーツウエア、シャツの落ち込みをカバーする戦略を鮮明にした。

 販売・事業統括の東洋紡インドネシア(TID)、編み立て・染色加工の東洋紡マニュファクチャリング・インドネシア(TMI)、縫製のSTGガーメント(STG)の社長を兼務する清水栄一氏によると2019年度は日本国内の衣料品市況低迷の影響が大きく、日本向けが苦戦した。そんな中、「Zシャツが踏ん張っている。ビジネスシャツ用途だけでなくサービスユニフォーム用途も拡大した」と振り返る。

 一方、成果が出るのが内販。TIDによるZシャツの内販も「まだ絶対量は少ないが、倍々のペースで増えている」という。日系シャツアパレルのインドネシア内販向けや欧米ブランドの現地ライセンス生産品などで採用が進んだ。

 TMIが生産する資材用編み地も二輪車・自動車のシート部材として採用が進む。従来は日本から輸入されていたが、昨年11月に当局が繊維資材・製品へのセーフガードを発動し、これら編み地も対象となった。現地部品メーカーが代替品を求め、TMIの商品が採用された。

 このため今後も「TMIは取り扱い品種を入れ替え、Zシャツやユニフォームを拡販することで日本向けの市況低迷やスポーツの不振をカバーする」ことを目指す。

〈現地調達・供給が拡大/仕入れ先現地企業を開拓/島田商事インドネシア〉

 副資材商社の島田商事のインドネシア子会社、島田商事インドネシアは拡大が加速するASEAN縫製に向けてインドネシア国内での副資材調達・供給体制を強化している。阪上啓ディレクターは「調達先となるローカルの副資材メーカーの開拓を進め、2020年度に向けた準備を進めた」と話す。

 同社の主力取引先であるSPAはこれまでインドネシア縫製でも中国から調達した副資材を採用していたが、近年はベトナムやインドネシアでの調達を拡大する動きを強めている。これに対応するために島田商事インドネシアが19年3月に設立された。

 現地法人として初年度となる19年度は仕入れ先となる現地副資材メーカーの開拓を進めた。「ボタン、テープ、副資材用生地などが中心。実際の販売もスタートした」と順調な滑り出しとなった。

 同社では今後もSPAなどのASEAN縫製は拡大するとみる。インドネシアでは小売業に対して、一定割合の国産品を取り扱うことが当局から要請されていることもこうした動きを後押しする。

 このため引き続きインドネシアでの調達先開拓と販売の拡大を目指す。SPAに加えて欧米メガブランドのインドネシア縫製に向けた副資材供給も目指しており、島田商事グループ全体での提案に取り組む。

〈現地ニーズに合った開発/好調続く「アポロコット」/日清紡グループ〉

 紡織のニカワテキスタイルインダストリー、織布・染色加工の日清紡インドネシア、縫製のナイガイシャツインドネシアで構成する日清紡グループは、拡大を目指すインドネシア内販や欧米への三国間輸出に向けて開発体制を改革している。より現地のニーズに合った商品開発を実現することを目指す。

 インドネシア事業統括として現地に駐在する日清紡テキスタイルの松下昌幸取締役兼常務執行役員によると19年度は日本向けシャツ地やユニフォーム地が順調だったことで黒字を確保した。特にシャツ地はノーアイロンシャツ「アポロコット」用が好調を維持している。

 一方、拡大を目指している内販や三国間輸出は満足できる水準に達しなかった。このため20年度は「欧米に向けて先入観のない商品開発が必要。そのため開発体制も組織的に改革する」と強調。日本で開発した商品も積極的に提案する。内販に向けては得意の液アン加工品の提案を強化することに加えて、バティックやヒジャブなど民族衣装用織物にも取り組む。

 欧米への輸出ではサステイナビリティー(持続可能性)への取り組みも必須条件。日清紡インドネシアを中心に排水処理などで環境配慮投資を継続し、取得している「エコテックス」「グローバル・オーガニック・テキスタイル・スタンダード(GOTS)」「グローバル・リサイクル・スタンダード(GRS)」など各種認証も積極的に打ち出す。

〈トーカイテクスプリントインドネシア/民族衣装用プリント強化/新規市場も積極開拓〉

 東海染工のインドネシア子会社であるトーカイテクスプリントインドネシア(TTI)は、中国品との競争が激化する中で、民族衣装向けプリントの開発、提案を強化する。さらにジャワ島以外の新規市場開拓にも乗り出した。

 同社は生地販売の約8割が内販だが、インドネシア市場には米中貿易摩擦の影響で中国製プリント生地が流入し、競争が激化。このため2019年度は無地染め・晒しは比較的安定しているものの、プリントに勢いがなかった。

 このため今後は比較的需要が安定しており海外品との競合も少ないバティックやサロン、ヒジャブなど民族衣装用プリントを拡充する。本田忠敏社長は「伝統柄の企画やろうけつ染め調の仕上がりを実現するなど商品開発も強化し、既に引き合いも増えている」と話す。

 現在の販売先はジャカルタやバンドンなどジャワ島の生地商が中心だが、カリマンタン島やスマトラ島など新規市場の開拓にも積極的に取り組む。現在、市場調査を進めている。

 新型コロナウイルス感染拡大の影響も出てきた。中国の繊維生産・物流が混乱したことで、インドネシアでも輸出向け縫製企業の中には「中国から調達していた生地を国産にシフトさせる動きがある」。こうした需要に対しても提案を進める。