繊維業界の緊急事態宣言対応/在宅勤務拡大など準備/小売りも臨時休業などを検討

2020年04月07日 (火曜日)

 新型コロナウイルス感染の拡大を受け政府が7日にも新型インフルエンザ等対策特別措置法に基づく緊急事態宣言を発令する可能性が高まった。宣言が発令された場合、対象地域の都道府県知事は不要不急の外出の自粛要請、学校や映画館などの使用停止や制限の要請・指示、医薬品などの強制収用などが可能になる。このため6日段階で繊維業界も対応を急ぐ。

 繊維企業各社とも既に在宅勤務やテレワークを実施しており、その延長線上での対応となりそうだ。日清紡ホールディングスは原則的に在宅勤務としながらも、会社の判断で出社が必要となった場合は場長の承認で出社を認める。富士紡ホールディングス、大和紡績、日東紡も在宅勤務やテレワークを基本とし、場長の判断で出社を認める。

 シキボウは時差出勤に加えてテレワークの実施に向けた検証を行った。各部署の人員を2組に分け交互に出社することで濃厚接触の頻度を抑えることも検討する。クラボウは宣言発令後に対策会議を開き、具体的な対応を決定する。

 東洋紡やユニチカも既に在宅勤務の徹底や出張の原則禁止を実施しており、宣言発令後の対応を協議している。東レも出張の禁止や東京、大阪や周辺地域から自治体からの外出自粛要請に従って出社制限を行っており、宣言発令後もこれら対応を継続する。

 伊藤忠商事や蝶理、ヤギなど商社も既にテレワークや時差出勤を実施しており、宣言発令後の対応を想定している。

 既に店舗営業時間の短縮や土日の臨時休業、催事中止などの対策を講じている大手百貨店では三越伊勢丹が政府の動きを注視しながら、新たな対応を検討している。本社スタッフのテレワークも継続中の高島屋も国や自治体の要請応じて対策を協議する。そごう・西武は首都圏店舗の11、12日臨時休業を決めたが、引き続き対応を検討する。

〈アパレルの対応/販売員の休業補償は?/ネット頼りも物流に不安〉

 アパレルにとって、緊急事態宣言が出された場合、百貨店などの閉鎖が想定され、店舗販売員の休業補償問題が浮上する。緊急事態宣言発出とセットされる形で、政府は休業補償などの緊急支援対策を講じることも求められるだろう。ネット通販が今後、代替販路としてさらに注目される。倉庫や宅配などが宣言後、正常に機能するかも、留意される事項だ。

 TSIホールディングスの店舗は現在、土日の営業を自粛している。緊急事態宣言が出た場合、「店舗の平日営業は各子会社の社長が判断する」方針。販売員については「原則10日間の特別休暇を与える」と言う。販売員以外は「出勤禁止。細則については各子会社が設定」する。

 イトキンも緊急事態宣言対策として「売り場は館の指示に従う」。「販売員は休業補償する予定だが、国が支援対策を明示してほしい」という。それ以外の従業員は基本在宅勤務。部署によっては隔日勤務の場合もある。東京本社だけでなく、大阪支社も適用される。店舗が閉鎖されても、ネット通販は継続する。首都圏の店舗在庫を地方に送る指示も出された。

 ワールドは本部系が既にテレワーク中。「店舗は館の指示に従うが、休業補償について検討」しているところだ。レナウンも緊急事態宣言対応の検討段階。「店舗は館の指示次第。販売員は有休扱い」の方向にある。

 休業も短期間であれば休業補償もできる。しかし、長期化すると、経営を圧迫しかねない。雇用の保証、有給休暇の与え方、給与支払いのための融資、賃料の支払い猶予など助成策が求められる。

 三陽商会は「来週まで土日の店舗休業は決定」。平日について検討しているところだ。販売員以外は既に在宅勤務中。来週、決算発表があり、どのような形にするかも検討中である。「店舗が閉鎖となってもネット通販で対応する。しかし、倉庫や宅配業者がどうなるか」が不透明である。

 東京ソワールは「総合職はテレワーク、時差ビズ、半休などで対応している。学校の休校については特別休暇を認めている」。緊急事態宣言が出た場合の販売員の処遇は検討段階。「店舗が休業しても、ネット通販がある。会員制交流サイト(SNS)やコーポレートサイトを活用した情報発信をこれまで以上に強化」していく。