2020年春季総合特集Ⅲ(12)/トップインタビュー/ユニチカトレーディング/ユニチカ 常務執行役員特需部担当兼ユニチカトレーディング代表取締役社長 細田 雅弘氏/重要なのは多極化への対応/B

2020年04月22日 (水曜日)

 ユニチカトレーディングは4月から新しい中期計画に着手した。「エコフレンドリー」のような環境配慮型の商材を打ち出すとともに、ベトナムの開発拠点を駆使した海外展開を推進し数年続きの減収に歯止めをかける。2020年度以降の中期戦略を聞いた。(インタビューは3月12日)

  ――10年後、日本の繊維産業はどう変わっていると思いますか。

 今、世の中の動きがすごく早くなっていて、社会構造も世界情勢も至る所で多極化しています。この多極化する世の中にいかに対応していくかが重要になってくると思います。

 しかし、全ての変化に対応するのは難しい。身の丈に合ったやり方で変化への対応を強化し、存在感をアピールできるところが生き残っていくのではないでしょうか。

 繊維業界では、百貨店のような店頭での販売からネット通販のような売り方への移行がさらに進んでいくとみています。百貨店で品定めをしてタブレットでオーダーするような購買形態が当たり前になってくるのかも知れません。このとき、われわれはどういうカスタマーに商品やサービスを提供させてもらえるのか。ここでいかに知恵を出せるのかが勝負を分けると考えています。

  ――4月1日付で組織を再編しました。

 苦戦を続けていた機能素材営業部とレディス営業部をテキスタイル営業部に統合し、これまでの2部4課を1部2課に集約しました。一方、IT社会の到来に対応する新規事業を創出するため、新事業開発室を発足しました。

 これまでのような単なるテキスタイルビジネスを続けていたのでは将来の先細りを避けられません。当社のビジネスはB2Bが基本です。できればB2Cを展開するどこかと組んで一つのチャプターで取り組ませてもらい、早く成功体験を打ち出せればと考えています。次のステップで他社とも取り組むヨコ展開に着手します。

  ――サステイナビリティー(持続可能性)への関心が高まっています。

 ケミカルリサイクルを中心とする再生ポリエステルを「エコフレンドリー」ブランドで打ち出し、今年度から本格販売を立ち上げます。本来ならば、差別化糸、高機能糸による織・編み物が婦人服地を含む全用途・全分野で採用される運びとなっていました。

 ところが、新型コロナウイルスの感染拡大で商談を進めることができず、中断のやむなきに至っています。しかし、環境への配慮が問われるという世の中の大きな流れは今後も変わらないでしょう。ポリエステル長繊維に占めるエコフレンドリーの比率を25年度くらいをめどに30~40%に引き上げることを目標に掲げています。

 当社は非可食植物のヒマ(唐胡麻)を原料とするナイロン11「キャストロン」、ポリ乳酸繊維「テラマック」も販売しています。これらを統合し環境配慮型の素材をトータルで売り込んでいくマーケティングも検討していきます。

 新型コロナの影響で、スパンボンドで展開する防護服の販売が急増し在庫がなくなりました。こういうウイルス対策のような用途における開発も改めて強化していきます。

  ――この間、海外生産体制の増強を進めてきました。

 規模の大小はありますが、中国、ベトナム、インドネシアを充実させてきました。

 20年度以降はベトナムをさらに増強しサプライチェーンを充実させます。ハノイの事務所に加えて、4月からはホーチミンにアセアン開発センターを立ち上げました。中国、インドネシアにも技術系の人材を置き、現地での技術支援や情報収集、3拠点間の情報共有に力を入れていきます。

 14年3月に開設したユニチカトレーディングインドネシアが昨年、黒字化しました。インドネシアでもさらに生産体制の拡充を進めていきますし、ミャンマーにも近々、事務所を開設しようと考えています。

  ――4月から新しい中期3カ年計画が始まりました。

 「Z―10」や「パルパー」のような独自素材群の販促を強化し、合繊の岡崎工場、紡績の常盤工場における生産を維持・拡大します。海外展開を加速するため、アセアン開発センターでの取り組みを加速し、グローバルなマーケットへの対応を改めて強化していきます。

 新事業開発室にはIT化をにらんだ新規事業だけでなく、ここにきて高まってきている安全・安心・防災へのニーズに応えていくため、土木資材や河川修復用の資材、防護衣料で新しいビジネスを掘り起こします。環境配慮型素材を浸透させることも中計における重要課題です。これらを通じ長く続いた減収基調に歯止めをかけ、売り上げの反転を目指していきます。

〈10年前の私にひと言/もっと緊張感をもって〉

 学生時代は大阪大学のゴルフ部に所属。卒業後も当時の仲間が集まり2泊3日で2ラウンドする旅行を続けている。10年くらい前から「再度、ゴルフに真剣に取り組み始めた」のだと言う。しかし、学生時代のように「もっとピリピリとした緊張感をもってプレーしていれば」とこの10年余を悔やんでいる様子。今年2月に還暦を迎え、行きつけの練習場のシニア会員になった。70歳になってもしっかりゴルフを続けるために「後になって悔いの残らないような10年間を過ごしていきたい」と語る。

〈略歴〉

ほそだ・まさひろ 1982年4月ユニチカ入社。2007年7月技術開発本部技術開発企画室長、12年7月執行役員、14年6月執行役員樹脂事業本部長、15年4月執行役員樹脂事業部長、16年4月上席執行役員樹脂事業部長、19年4月常務執行役員繊維事業本部長兼特需部担当兼ユニチカトレーディング代表取締役社長、20年4月常務執行役員特需部担当兼ユニチカトレーディング代表取締役社長