東洋紡/モビリティを700億~800億円に/エアバッグでシェア30%目指す

2020年05月13日 (水曜日)

 東洋紡は2025年度で連結売上高5千億円を目指す長期構想に取り組んでいる。エアバッグやエンプラ事業の拡大を通じ、この時点でモビリティソリューション本部の年商を700億~800億円に引き上げる。

 同社は今年4月1日付で組織改正を行い、これまでの5本部を4ソリューション本部体制に再編した。エアバッグ、エンプラなどの自動車関連資材を統合したモビリティ事業を「当社の優位性を発揮させられる最重要事業」(楢原誠慈社長)に位置付ける。

 モビリティ事業は現状で連結売上高の13~14%を占めており、モビリティ本部の年商は420億~430億円になると言う。

 一昨年、敦賀事業所第二で発生させた火災事故の影響でエアバッグ事業は苦戦に転じており、現中計の最終21年度で「黒字浮上させるのは難しい」と見ているものの、今後も成長戦略に力を入れ、現状で10数%と見通すグローバルなシェアを25年度をめどに30%に引き上げる。

 タイの石化大手インドラマとはタイにエアバッグ用ナイロン66の新工場を建設することで合意しており、当初は21年の年初に新工場を稼働させる計画だったが、新型コロナウイルス禍の影響で9~10月スタートにずれ込む見通しとなった。

 同社は当初、20年度は300億円近い設備投資(19年度は364億円)を計画していたが、新型コロナ禍の終息を見通せないため200億円超に減額する。

〈微増収増益を達成/20年3月期連結〉

 東洋紡の2020年3月期連結は売上高3396億円(前期比0・9%増)、営業利益227億円(4・9%増)、経常利益180億円(1・4%増)、純利益137億円(前期は6億円の損失)となった。

 当期は産業マテリアル、繊維・商事が苦戦したもののフィルム・機能樹脂の大幅増益、ヘルスケアの大幅増収が寄与し微増収営業増益を達成した。火災事故に伴う受取保険金106億円の計上で純損益が黒字浮上した。

 産業マテリアルでは、エアバッグが火災事故や自動車生産の減速で苦戦。スーパー繊維「イザナス」はロープ向けが、「ザイロン」は自転車用タイヤ向けがそれぞれ好調だった。

 繊維・商事では、中東向けトーブの販売が好転したほか、ユニフォーム(企業別注)が堅調だった一方、「エクスラン」(アクリル)やインナー向けが低調だった。

 フィルム・機能樹脂では、帝人のフィルム子会社2社の買収で国内の生産規模を業界トップの年産11万㌧に増強した。

 通期業績については、新型コロナウイルス禍の影響で算定が困難なため非公表とした。