合繊メーカー 中期計画/サステ配慮の経営を徹底/積極投資を続行

2020年05月26日 (火曜日)

 5月13日に東レが中期経営課題、長期経営ビジョンを発表したことで合繊メーカーが進める中期計画が出そろった。2019年度末に発生した新型コロナウイルスの感染拡大の長期化で出鼻をくじかれた格好となったが、各社はサステイナビリティー(持続可能性)に配慮した経営に意欲を示しているほか、繊維事業では成長領域に位置付けるモビリティーで拡大戦略を描こうとする傾向を強めている。(堤 貴一)

 合繊各社の中計における業績目標は別表の通り。帝人は売上高などでの目標を公表しないかわりに、22年度でROE10%以上、EBITDA1500億円、D/Eレシオ0・9などを目標に掲げる。三菱ケミカルは16年度から20年度までの中計に取り組んでいる。

 各社は引き続き事業ポートフォリオの転換を重点的に進めたいとの意向を強めているほか、ソリューション提供型の事業体構築に意欲を示している。そのために、旭化成が昨年4月に、東洋紡、ユニチカが今年4月に組織を再編。東レは6月23日付の事業部門長人事を発表済み。

 サステイナビリティーを意識した経営強化がうたわれていることも大きな特徴といえる。旭化成は温室効果ガス削減やプラスチック問題解決のため他社との協業も含め積極的に取り組む方針を打ち出している。

 クラレは環境への貢献を主要経営戦略の一つに位置付ける。帝人は30年度などをめどにCO2排出量や水使用量などにおける削減目標を掲げている。

 東洋紡は環境に配慮した製品“エコパートナーシステム”の売上高を30年度で全社売上高の30%に引き上げる。東レはグリーンイノベーション事業を拡大し22年度で年商を現状の8300億円から1兆円に伸ばす。

 中計を通じ旭化成はマテリアル、住宅、ヘルスケアの3領域で、帝人は自動車や航空機向けのマテリアル、ヘルスケアなどで、東洋紡はフィルム・コーティング、モビリティでそれぞれ事業拡大を計画する。

 4月の組織改正で東洋紡はモビリティソリューション本部を設立。25年度をめどにモビリティ関連事業を現在の倍増近い700億~800億円規模に引き上げる。

 東レは水素・燃料電池関連材料、バイオマス活用製品・プロセス技術といった次代を担う新規事業に経営資源を重点的に投入し、20年代のどこかで1兆円規模の基幹事業に育成する。

 新型コロナ感染拡大の影響で今後の見直しが避けられないムードが濃厚になってきているものの、中計には積極的な設備投資計画が盛り込まれている。

 各社は前中計で実施した設備投資の刈り取りを強化するとともに、旭化成は前中計時の6700億円を上回る8000億円を投じる。帝人は3500億円の設備投資、東レは5000億円の設備投資をそれぞれ計画する。