特集オフィス・サービスウエア(3)/アジア地域の生産性向上は共通課題/商社編

2020年07月02日 (木曜日)

 新型コロナウイルスの感染拡大による経済活動へのダメージは、ユニフォーム業界でも例外ではない。部材の調達や生産拠点の閉鎖、物流の停滞など、サプライチェーン分断の危機とともに、その危うさも露呈した。国境を越えたグローバルなネットワークを構築する商社に求められる役割はますます大きくなる。

〈ファッションテック推進/サステ素材群と両軸で/豊島〉

 新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、例年4月に実施している翌春夏シーズン向け展示会は動画を通じて情報提供を行うなど新たな手法を試行。社内でのICT(情報通信技術)推進の流れと合わせ、今後の商流の在り方を考えるきっかけになったという。

 新型コロナ禍で市況の見通しは不透明だが、ユニフォーム分野を含め全社対応で新市場開拓の切り札として取り組んでいるのが、サステイナブル(持続可能な)素材群「MY WILL(マイウィル)」とファッションテック。要望が増えているというファッションテック事業は、既にスマートウエアで実用間近まで進展している案件もある。

 生産面での同社の強みは、ベトナムにある自社工場「トヨシマ・ロンアン・ガーメント」。現在の年間生産量はオフィス・レディースウエア約10万枚。多品種小ロットに対応するとともに、品質、価格の両面で安定供給を支える。デジタル化に向けた設備投資も進めており、5月にはCAM(自動裁断機)と特殊ミシン機を導入した。

 自社工場のメリットは効率を上げるための施策を可視化できることとし、当面の目標生産量は12万枚。自社生産以外では中国とASEAN地域内において適材適所で拠点を置いていく。

 21春夏商品では、実際の着用シーンを想定した提案方法で素材、製品を紹介。スポーツウエア向けに開発されたストレッチ性生地「ハイパーヘリックス」を本格的に展開する。2種類のポリマー(高分子の集合体)を融合して生まれた特殊繊維で、熱を加えた時の収縮率の違いで生じるらせん状の捲縮(けんしゅく)が、生地にストレッチ性と軽量感をもたらす。今回はスクラブやシャツ、つなぎなどで提案した。

〈精度高い生産管理目指す/マーケット動向を重視/丸紅〉

 新型コロナウイルスの感染拡大によって、ユニフォーム事業における経済活動も限定されている状況が続く。機能繊維部の田口亘ユニフォーム課長は、「一部のメディカルユニフォーム以外の需要は大きく低迷しており、急激な需要回復を見込むのは難しい」と話す。

 2020年3月期のユニフォーム事業は、上半期までは順調だったが、長梅雨の影響で夏物の販売が思うように伸びなかった。続いて10月からの消費増税の影響でさらに需要が冷え込み、受注ペースに陰りが見え始めていたところで、今回の新型コロナの影響が需要低迷の決定打となった。

 生産拠点となっているASEAN地域での新型コロナの影響は、中国の取引工場が3月上旬には生産再開でき、ベトナムでもほとんどの工場で稼働できないなどの致命的な問題は起こらなかった。それ以外の国では政府の指示で感染予防のための稼働停止や医療資材の生産を優先させなければならないなどの理由で生産の遅れが発生している。

 ただ、安定供給体制を構築していく上で、ASEAN地域の重要性は引き続き変わらない。丸紅グループや各国の協力企業などともに、今後も品質とコストのバランスの取れた工場の取り組みを目指していく。

 今期の見通しは、徐々に経済活動は正常化の方向に向かい、ユニフォームの需要も戻ってくるとみているが、完全に正常化されるのがいつになるかは不透明とする。「少なくとも今期中は新型コロナの影響は続くと覚悟している」(田口氏)。

 在宅勤務が定着しつつあり、働き方も今後大きく変化することが予想される中で、必要とされる商品やマーケットの見極めが重要となってくる。需要が低迷した時ほど取引先との関係強化、目新しい提案、精度の高い生産管理が必要とし、今期はこの点に集中していく方針を示している。