アパレル総合21春夏~コロナ下のファッション~(1)

2020年11月25日 (水曜日)

 紳士服チェーンの青山商事が店舗の2割削減、婦人服では「ジャケットが売れない」といった声をよく聞く。21春夏企画は、大都市商業施設の回復遅れ、リモートワークの拡大などの変化を受け、紳士、婦人服とも新型コロナウイルス感染拡大の影響を反映したものになった。

〈新常態のビジネス服は〉

 ユナイテッドアローズは「新型コロナ禍で、社会には大きな変化が起きている。密を避ける行動様式に伴って外出も抑制傾向となり、リモートワークの普及で通勤回数も減り、特に大都市においては昼間人口の減少が続く」と指摘。企業業績の悪化で収入不安も生まれ「消費の抑制にもつながっている」と懸念する。

 小売業界ではこの間、外出抑制による実店舗の入店客数減、感染懸念による店舗滞在時間の短縮、オンラインシフトの加速、収入不安による消費の抑制が起きている。大都市商業施設は郊外店に比べて回復が遅れている。居住地が生活の中心となれば、ワンマイルウエアなどの動きがよくなる。

 嗜好(しこう)品ニーズは低下し、式典ニーズなどフォーマル需要も落ち込んだ。ビジネスウエアのカジュアル化も進んでおり、ニューノーマル(新常態)時代のビジネスウエアの開発が急務となった。

 在庫問題もある。20春夏商品は4~5月の店舗の臨時休業後の6月からセール消化に努めた。トレンド商品はセール販売されたが、定番的な商品は20秋冬、21春夏に販売時期を移行。このため、21春夏のアパレル仕入れ量はワールドの「前年並み」を除いて、3割、4割減といった企業が多い。商品供給量を抑え、プロパー販売に徹することで、粗利益改善を図る狙いがある。

〈カジュアル化が加速〉

 婦人服ではイトキンの「ジャンニロ ジュディチェ」が消費者の変化を企画に反映させた。21春夏は「顧客ニーズの変化に対応した新たな商品、プロパー販売できる価値ある商品、ブランドの独自性を強めた商品を適時・適品・適量・適価で提案」する。

 フランドルの「イッツインターナショナル」は「ファッションはより良いものを長く着たいという本質的なものへ流れが変わった」と言う。着心地を重視し、ルームウエア調のリラックスウエアを新たに提案した。綿カシミヤを丸胴でゆっくり編み上げたタンクトップや半袖を打ち出すなどリモートワークにも適した商品である。

 ルックの「コレット」は立ち上がりの型数を約7割に絞り込み、スプリングコートやアウターなどのアイテムを減らす一方、丸編み製品やパンツ、ライトアウターを拡充する。清涼感のある素材も3月末から早期展開する。

 アパレルには不振のジャケットを絞り、ブラウスなどを拡充、抗菌など機能加工付与といった動きも目立つ。

 紳士服では、三陽商会が在宅勤務を意識したライトウエアやカジュアル商材のセットアップの提案を進めている。オンワード樫山の「ジョセフ アブード」もテレワークを反映し、洋品や羽織物の比率を高めたほか、イエナカウエアの新ライン「ジョセフ アブード スペース」を投入する。オッジ・インターナショナルの「ダーバン」もアンタイド商品を強化した。紳士服はカジュアル化が加速している。

〈オンワード樫山「23区」/楽ちん×きちんと見え〉

 オンワード樫山の「23区」は21春夏に、シンプルながらディテール、シルエット、素材感にこだわった服を提案する。

 好評のこだわり素材軸は、定番の形だけでなく、女性らしいデザインの幅を広げてバリエーションを増やす。定番軸は素材や仕立ての良さをより多くの顧客に知ってもらおうと、価格を見直す。

 アフターコロナの働き方に合わせた仕事に使える普段着を強化する。テレワークの普及などで外出の機会が減り、家で過ごす時間が増えた。そのニーズに合わせた「楽ちん×きちんと見え」アイテムを拡充する。イエナカで快適に過ごせるようにこだわった肌触り、ストレスフリーな生活を実現する仕様に工夫を凝らす。

 洋品・パンツも強化する。定番の素材軸をブラッシュアップしながら、1枚で着映えする洋品アイテムを投入。ステイホームを前提に、肌触り、着心地にこだわったパンツアイテムを布帛、ジャージー、ニットで展開。ファッションにより高揚感を求めるマインドに対して、小ロット・多品種商材を月ごとに訴求する。

〈三陽商会「エヴェックス バイ クリツィア」/サステと機能性を訴求〉

 三陽商会の婦人服ブランド「エヴェックス バイ クリツィア」は、21春夏の型数を絞り込み、4月はジャストニーズのブラウスを打ち出す。元々ブラウスは強かったが、羽織りや1枚着としてニーズがある。イタリアのプロフィロ社の表情のあるカラーストライプ生地にオリジナル配色を交えた2型、ゼブラ柄とストライプ柄を融合させたシャツ1型を提案する。

 5月は機能性として接触冷感素材を強化。ブランドポリシーでもあるサステイナブル企画として打ち出す。FSC(森林管理協議会)認証の木材パルプを原料にしたトリアセテート66%とポリエステル34%の生地を使用した。トレンドのシアー感がある。ロングブラウス、半袖プルオーバー、シャツ、プリーツスカートで展開する。

 機能性では同社の「エポカ」が新シリーズの「ラ・マリア・イン・カーサ・リュ・テックス」にイージーケアを取り入れ、「ポール・スチュアート」はビジネスラインに抗菌や軽量機能を付加したジャケットを展開。「トランスワーク」も抗菌・制菌加工を採用した。