LIVING-BIZ vol.65(1)/特集 寝具寝装21春夏・モノ作り

2020年12月16日 (水曜日)

〈新型コロナ禍へ対応/サステもテーマに〉

 2020年は、新型コロナウイルス禍で、モノ作りの対応力が問われた年だった。

 新型コロナの感染が拡大する中で中国の工場などが操業を停止。再開後も海外渡航が制限され、商談などに支障が出ている。

 その状況下で、中国にグループ企業の生産拠点を持つ商社の1社は、自社グループ一貫体制による安定供給が強みになり、受注を増やした。現地工場の担当者、得意先、自社の3者をオンラインでつないできめ細かな打ち合わせなども行い、現地に行けない状況をカバーする。

 新型コロナ禍で先行きが不透明なことから、小売サイドが20秋冬の発注をぎりぎりまで引き延ばして見極める動きもあった。短納期が求められるケースが増え、機動力も問われた。

 機能では、新型コロナ禍で衛生や清潔をテーマとしたニーズが高まっている。抗ウイルス機能を持つ製品の打ち出しをはじめ、従来の機能に抗菌などの清潔性をプラスした素材に対するニーズも高い。

 寝具業界でもサステイナビリティーへの関心が高まりつつあり、素材メーカーも提案に力が入る。再生素材をはじめ、綿を改質して吸湿発熱、消臭機能を持たせたオーガニックコットン使いの生地など、サステイナブルと機能性を融合した新素材も注目される。

〈清潔・衛生素材の提案強化/帝人フロンティア〉

 人々の清潔・衛生志向が高まる中、帝人フロンティアは暮らしのさまざまな場面を想定し、長年研究と実績を積み重ねてきた抗菌・抗ウイルス素材の提案を強めている。

 寝装関連では、安心安全、心地よさ、環境配慮にこだわったポリエステルわたをベースに、多様な機能性わたを展開。「ケミタックΣ」は抗菌防臭加工と制菌加工に対応、「マイティトップⅡad」は抗菌防臭加工と防ダニ性でダニを寄せ付けず嫌な臭いも防ぐ。防臭加工の「フィルケア」と制菌加工の「フィルケアM」は、シリコンコーティング加工でソフトな風合いと優れた洗濯耐久性を持つ。

 制菌性や抗菌防臭性は繊維評価技術協議会のSEKマークを取得。洗濯を繰り返しても効果が持続すると言う。防ダニ性はインテリアファブリックス性能評価協議会の素材認定を受けている。

 インテリア分野でも強みを発揮する。制菌加工の「バリュー」シリーズに抗ウイルス性能を加え、抗ウイルス・カーテンを新規提案するほか、病院やホテルなどの業務用カーテンでは、SEKマーク取得の制菌・抗菌防臭性と消防法に合格した高難燃性を併せ持つ高機能糸「エースツイン」を展開している。

〈サステ+機能性/東洋紡ユニプロダクツ〉

 東洋紡ユニプロダクツのライフスタイル事業部寝装グループは、寝装用途で綿を改質して吸湿発熱、消臭機能を持たせたオーガニックコットン使いの生地を提案する。“サステイナブル+機能性を高めた素材”で差別化する。

 消臭機能を持つオーガニックコットンは、セルロースの分子構造を改質し、汗臭の元となるアンモニア、酢酸、イソ吉草酸などを軽減する。汗や尿などのアルカリ成分や酸性成分などを中和するpHコントロール機能もある。

 吸湿発熱有機綿は、通常の綿と比べて約1・5倍の吸湿性があり、プラス0・5℃の発熱性がある。

 バイオーダーの生地売りが基本だが、製品対応も行う。再生ポリエステル素材も提案し、サステイナブル素材使いのラインアップを充実する。

 2021年3月期は、新型コロナウイルス禍の影響で、上半期が前年同期を大きく下回ったが、下半期は前年を上回るペースで推移する。通期では前期実績を下回る見込みだが、業績は回復傾向にある。素材は従来の機能に、抗菌などの清潔をキーワードとした機能をプラスした提案が支持を受けた。抗ウイルス後加工「ナノバリアー」のポリエステル丸編み地使いも2社に採用されたという。

〈中国で積極設備投資/リュクス〉

 寝装・インテリア企画製造のリュクス(大阪市西区)は、中国のグループ企業で積極的な設備投資を行っている。

 中国に合弁の寧波明輝寝具(浙江省)、青島徳隆紡織(山東省)のグループ企業を持つ。青島徳隆紡織はふとんカバーや敷パッド、キルトケットを生産する。日本向けが主力で、ふとんカバーは年間4百万枚を手掛ける。

 中国の環境規制から廃業する企業がある中で、安定供給のため、毛布の縫製加工設備も導入。2019年に月産8万枚の供給体制を構築したが、需要の高まりから今年7月に設備を追加して生産能力を1・5倍に増強し、20秋冬向け販売量を増やしている。

 増えつつあるニット使いのふとんカバーなどに対応するため、ニット専用ミシン10台も今秋増強した。

 寧波明輝寝具はウレタン連続発泡機、モールド成型機、圧縮機、3Dウレタンカット機、プロファイル加工機、本縫いミシンなどを備えて、マットレスや枕、クッションを生産する。年間生産能力は枕約3百万個、マットレス約80万枚に上る。さらに物流コスト上昇への対応や作業効率化を図るため、この半年間に自動圧縮機3台を入れた。

 リュクスは企画から製造、検品、物流まで自社グループ一貫体制による安定供給が強み。新型コロナウイルス禍の下でもグループ企業と密に連携した対応力が評価され、受注を伸ばしており、今年度の売り上げは前年を上回る見通し。

〈抗ウイルス生地備蓄販売/田村駒〉

 田村駒は、寝具寝装向けで抗ウイルス機能を持つ生地の備蓄販売を始めた。

 一般向けは、染色整理仕上の高橋練染(京都市)の制菌や抗ウイルスなどの機能を持つ「デオファクター」を採用した生地を備蓄する。羽毛ふとん“側”(中わたを入れる前の半製品)用で2種類、カバー用で1種類そろえる。菌やウイルスから生活を守ることをテーマにデオファクターを使用した素材や製品を「デオリー」ブランドとして打ち出す。

 デオファクターは天然鉱物ミネラル(鉄・カリウム・アルミニウム・チタン・ゼオライト)による独自の加工剤を使った機能加工。鉱物ミネラルが空気中の酸素と水分に化学反応して活性酸素を作り、有害物質の分解効果を発揮する。

 業務用では、シキボウの抗ウイルス加工「フルテクト」を採用したふとん側用生地を備蓄し、製品対応する。フルテクトは繊維に加工した抗ウイルス剤が、繊維上に付着したウイルスのエンベロープ(ウイルスの外側にある膜状構造)に作用し、感染力を失わせる。

 フルテクト使いの側用生地はポリエステル×ポリエステル・綿の交織、中わたはポリエステル。備蓄販売する不織布製のディスポーサブル(使い捨て)カバーセットも併せて提案して感染リスクの軽減を図る。

〈巣ごもり需要で受注好調/モリリン〉

 モリリンのリビンググループでは、新型コロナウイルス禍の影響で在宅時間が増えたことによる“巣ごもり需要”の増加から、各種通販媒体で寝具・インテリア商品が好調に推移した。

 特に10月は気温低下により受注も好調。羽毛ふとんや毛布、ラグなど冬物が全体的に動いた。

 通信販売はもちろん、店頭関連も堅調に推移し、前倒し納品依頼も多かったと言う。しかし11月は天候要因から失速した。

 新型コロナ禍発生当初は、中国での生産に不安があったが、特に大きな問題が生じることなく進めることができた。今も中国など生産地に出張できず、ウェブ会議システムなどを活用した商談にとどまるが、現物確認できないことなどを除けば、現地の協力を得て何とか進行しているという。

 好調な受注に伴う前倒し納品に対応するため、タイトな生産スケジュールで依頼することが増え、工場では忙しい状態が続いた。

 現在は21夏~冬物の商談中。通販などは好調に推移した今年の実績数をどう捉え、来年の数量を設定するかといった詰めの段階に入った。新型コロナ禍を背景に、抗菌防臭など清潔イメージの商品への引き合いが増えているという。

 今後、「取引先との戦略的パートナーシップの構築」「市場変化に対応した“価値ある製品”の創造」「国内外関連会社を中心としたSCMの創造」「チャレンジ精神あふれた活力ある“人・環境・組織”創り」――に重点的に取り組む考え。

 寝具では羽毛ふとんや健康寝具(敷ふとん、枕)、インテリアではラグと、主力商品も今まで以上に強化していく。

 合弁・協力工場の能力を最大限活用した早めの受注で、繁忙・閑散期を平準化した生産を目指すとともに、リサイクルダウンの拡販にも力を入れる。

〈SPA向け毛布など拡大/東レインターナショナル〉

 東レインターナショナルのインテリア部は2021年3月期、前期比10%増収を見込む。新型コロナウイルス禍の巣ごもり需要などで好調な大手SPAやホームセンターへの販売が拡大している。

 20年4~9月期は前年同期比10%強の増収。10月以降も堅調さを維持する。アイテムではカーペット、寝装がそれぞれ10%増収だった。

 寝装は、冷感寝具の販売が伸び悩んだが、SPA向け秋冬毛布の販売が前年よりも増加。リビング用の需要も増えているとみられる。さらに新型コロナ禍の影響で、中国で生産を組み立て2、3月に納品する予定だった寝具の輸入が遅れ、4月以降の売り上げに計上した点も押し上げ要因になった。

 カーペットは大手SPA向けラグなどが伸びた。カーテンは、大手SPAやホームセンター向けが堅調だったものの、インテリア製造卸向けが伸び悩んで前年並みだった。

 同社はメーカー機能を持つ商社として、東レの機能素材を活用した製品OEMと、東レグループのグロバーバルサプライチェーンを活用したモノ作りを強みにする。

 東レの抗ウイルス機能材を活用した寝装・インテリア製品の提案も強める。

〈環境商材の引き合い増/ユニチカトレーディング〉

 ユニチカトレーディングは、寝装向けで環境商材の展開を強化する。

 20年ほど前から寝装分野向けに環境対応型商材としてセルロース系再生繊維「シルフ」を販売しているが、SDGs(持続可能な開発目標)に対応した素材として引き合いが増加しており、国内外の生産拠点を活用してアイテムを拡充している。

 さらに再生ポリエステル「エコフレンドリー」使い商材の開発も進めている。

 20秋冬向けは今年前半、新型コロナウイルス禍で販売先が発注量を抑制していたが、8月から羽毛ふとん用生地が動き、10月から20秋冬向け期近の追加受注が増加した。ただプリント工場のスペースがタイトなため、「納期対応に苦慮している。年内はこの状況が続く」(同社)と見通す。

 9月から堅調な羽毛ふとんに比例する形で、カバーなど他アイテム向け生地出荷も順調という。

 21春夏向けは、20春夏商品の消化が進まなかった影響で受注は例年と比べて減少。先行きの不安から生産を抑制している可能性もあり、期中の商談に期待する。

 今夏から電子商取引(EC)サイトでの製品販売も始めた。今後も自社ECサイトや他のプラットフォームを活用し、自社差別化素材使いの製品の企画・販売に力を入れる。

〈オンライン診断で作る/yuniのマットレス〉

 自分専用のマットレスがオンライン上で手軽に作れる時代が来る。昨年末創業のyuni(東京都渋谷区)が開発・運営するパーソナライズドマットレス「クロススリープ」がそれで、このほどクラウドファンディングサイト「マクアケ」で予約先行販売を開始した。

 家業が寝具メーカーで、機械学習エンジニアの内橋堅志氏が創業、代表を務める。「家業を手伝って知ったマットレスのさまざまな課題を、データとテクノロジーの力で解決できないか」と開発に着手。睡眠、ウレタン系の素材メーカー、オーダーメード事業者、機械学習など専門家集団の共同開発で実現した。

 オンライン上で無料診断に答えると、身長や体重、体形、筋肉量などから学習した独自の人工知能(AI)診断により、その人に合ったマットレスをセミオーダーで製作。圧縮梱包(こんぽう)し配送する。

 マットレスは2段構造で、ベースにパーソナライズしたトッパーを重ねて使う。パーソナライズされているとは言え、実際に使うと合わないと感じることもある。そこで商品到着後3カ月間は再パーソナライズしたトッパーに無料交換。交換されたトッパーはクッションなどにリサイクルし無駄にしない。

 購入後に発行されるマイページから、再診断(無料)や交換申請が可能。経年劣化や体形変化などで合わなくなったら、再度AI診断を受けトッパーを有料交換し、常に自分に合った状態で使い続けられる。

〈リネン向けでサステ訴求/シキボウ〉

 シキボウは、医療施設などのリネンサプライ向けに、サステイナビリティーをテーマにした生地を打ち出す。リネンサプライ向け繊維資材分野では、サステイナビリティーへの関心はそれほど高いとは言えないが、同社は今後必要になるとして提案を強める。

 サステイナブル素材として「コットンUSA」使いで綿混率が50%以上の細布(49、64、67インチ)を備蓄販売する。コットンUSAは、国際綿花評議会(CCI)が認証する良質な米綿。新型コロナウイルス禍を踏まえて、抗菌・抗ウイルス加工「フルテクト」を採用したコットンUSAの生地も提案。既に病院向けで採用されている。

 「フルテクト」は、工業洗濯後も機能が低下しない高耐久タイプを開発し、リネンサプライサービスが前提となる病院向け寝装品やユニフォームなどへの提案を強めている。

 同社は既に通常のコロナウイルスであるコロナウイルス(ヒト)に対して抗ウイルス効果を確認していていたが、フルテクトを施した機能素材が新型コロナウイルス(SARS―CoV―2)に対する抗ウイルス効果があることを確認している。

〈業務用毛布でサステ推進/ニッケ商事〉

 ニッケ商事は、業務用毛布でサステイナブルな取り組みを押し進める。

 リサイクルでは、業務用毛布を回収して反毛にし、業務用毛布やふとんの中わたに再活用する仕組みを構築。国内協力工場とともに2020年夏から取り組んでおり、今後本格展開する。

 使用した毛布を廃棄せずに回収・洗濯し、真空パックする“リパック”にも力を入れている。19年に関東などで起きた災害で災害用毛布の需要が高まり、リパックが増えた。以前から真空パック設備を併設する洗濯協力工場と連携し、リパックに対応する仕組みを構築していた点が強みになり、受注を伸ばしている。

 12月上旬に開いたオンライン展示会で、業務用寝具の新たな取り組みとしてリサイクルやリパックを動画で紹介した。

 災害用毛布の国内市場は年間50万枚程度で、このうち同社が約60%のシェアを持つとされる。災害用毛布の売り上げは例年3月が最も大きいが、今年は自治体などが新型コロナウイルスの対策製品に予算を割く傾向が強まり、販売数量が減少。市場全体も50万枚を下回る見通しという。

〈「はばたく中小企業」に河田フェザー、龍宮選定/ 中小企業庁〉

 中小企業庁が11月にまとめた「『はばたく中小企業・小規模事業者300社』2020」に、羽毛精製加工の河田フェザー(三重県明和町)と、寝具製造卸の龍宮(福岡県うきは市)が選ばれた。

 さまざまな分野で活躍している中小企業・小規模事業者300社を選定したもので、2社はモノ作りの生産性向上の分野で選ばれた。

 河田フェザーは、国内最大規模の羽毛精製加工場を持つ。ITを活用し、1994年に羽毛精製ラインの完全無人化による24時間稼働を実現。徹底的な洗浄で高品質な羽毛が評価されている。

 羽毛ふとんの生産工程にもオートメーション化を取り入れ、羽詰機を完全自動化。生産量が8時間当たり2千枚(11年)と、20年間で20倍に高めた。

 龍宮は、医療用純度に高めた脱脂綿とガーゼで作った寝具「パシーマ」を主力に、顧客の健康促進に貢献する。

 生産性の向上では、トレーサビリティー管理、異常発見管理、在庫管理の各システムを導入し、注文・製造時の在庫管理や、問題究明と工程改善が迅速化され、効率化へつなげている。さらに作業者の多能工化のため、1人3役制度を実践。従業員の教育とポジションの交代制を導入し、工程間の平準化と生産性の向上を図っている。