クローズアップ/ユニチカトレ―ディング 衣料繊維事業本部長 渡辺 巧 氏/布石の具体化を急ぐ

2021年02月03日 (水曜日)

 新型コロナウイルス禍であらゆる企業が苦戦を強いられる中、ユニチカトレーディングは医療用ガウンの拡販で上半期(2020年4~9月)は大幅増益を確保した。衣料繊維事業で長く苦戦を強いられていたが、一方で幾つかの布石を投じてきており、これらの具体化を急ぎ業績反転を期す。衣料繊維事業の当面の方針を渡辺巧本部長に聞いた。

  ――上半期業績は微減収大幅増益だった。

 厚生労働省からの要請に基づき医療用ガウン700万着を供給したことが業績に貢献しました。新型コロナ禍で衣料繊維事業では当社の強みだったユニフォームですら苦戦に転じたため、売り上げはほぼ前年並みでしたが、ガウンでの取り組みは収益面を下支えしてくれました。

  ――20年度から中期3カ年計画をスタートさせた。

 初年度で目標との大きな乖離(かいり)を発生させてしまいました。しかし、国の施策とも連動し、生産体制を整備した上で防護服の用途に参入できました。安全で安心な暮らしに貢献するという当社の指針にも合致していますし、今後もしっかり取り組んでいきます。

  ――デュポングループと「パルパーソロナ」を共同開発した。

 現在、さまざまな商品開発に取り組んでおり、21年度から環境配慮型の素材として打ち出します。シャツ向けの織物、ニットの販売を21秋冬から立ち上げられればと考えています。

  ――いくつかの環境配慮型素材を構えている。

 再生ポリエステル「エコフレンドリー」では山ほど開発案件を抱えています。東京ソワールさんのブラックフォーマルに採用されましたし、瀧定名古屋さんとのコラボレーションにも力を入れています。植物由来ナイロン「キャストロン」にも期待しています。バイオ由来のナイロンを手掛けているメーカーは少なく、国内の幅広い用途にアピールしていきます。

  ――新事業開発室が間もなく2年目を迎える。

 防護服の取り組みを主導したのがここですし、パルパーソロナでもデュポンとの下地を作ってくれました。当社はマスクの販売から電子商取引(EC)ビジネスに着手し、第2弾として植物由来の毛布をマクアケを通じクラウドファンディングしました。消費者からのダイレクトな反応を得られるのがこれらの取り組みの大きなメリットです。間もなく第3弾を発売します。営業との連携で相乗効果が出始めました。

  ――ベトナムのアセアン開発センターは。

 新型コロナ禍の影響で出遅れましたが、21年度から始動します。中国、インドネシアに派遣した技術者とも連携し、現地ニーズにマッチした新商品の開発を加速します。ミャンマーへの進出も検討しており、21年度の早い時期に事務所を開設します。

  ――21年度をどう見る。

 上半期はまだ厳しさが残っていると思います。下半期から業績を反転させます。そのためにまいてきた種の刈り取りを強化し、何としても前進させていきます。