特集 尾州産地総合(4)/在名4商社/尾州産地との取り組み
2021年03月26日 (金曜日)
〈タキヒヨー/素材開発/販売グループ マネジャー/中嶋 正樹 氏/新機軸の構築に注力へ〉
――尾州との取り組みの課題を教えてください。
取り組む機会の減少になかなか歯止めがかからないのが現状です。百貨店向けアパレルも再編の岐路に立つ中でファッションを軸にした取り組みは一定の限界を感じつつあります。
――課題解決に必要な点は何でしょう。
いかに取り組みの軸を新たな需要にマッチさせていくかが必要です。固定観念にとらわれず、あらゆる可能性を探りながら取り組むべき道筋を再構築していきます。生活様式の変化に伴いアウトドア関連用品向けウール生地の需要が高まりました。そのニーズを形にするといった事例を積み重ねて新たな取り組みの実績を共に構築していきたいと考えています。
――尾州産地の強みと今後注力すべき点は。
尾州は高品質なモノ作りを続ける世界有数の産地です。技術はもちろん対応力も高く小ロットから即応する。産地が一貫して分業体制を敷きながら利便性もかなえる。この利点を把握し当社が集めるグローバルな市場ニーズを掛け合わせて新機軸の構築を図ることに注力したいと思います。商品開発を主目的に開設した一宮工場は、尾州の“社交の場”であり“創造の場”として新たな化学反応を生んでくれると期待します。
〈瀧定名古屋/取締役婦人服地部門担当 瀧 浩之 氏/尾州への理解を促進〉
――尾州産地との取り組みについて教えてください。
昨年11月にソトーさんの工場内にラボを作りました。見本生地の展示や商談スペースを設けていますが、尾州産地をお客さんと回る際の起点となる場所です。ここから産地内の織布工場や見本工場などを回りながらお客さんに尾州という産地を理解してもらいます。
――毛織物をはじめとした衣料品の販売は芳しくありません。
新型コロナウイルス禍で厳しい状況です。特に感じるのは素材にこだわり抜いた高級なものと、価格にこだわった安価なものとの二極化です。われわれとしてはこの間のボリュームゾーンを狙っていきたいところですが、それが難しくなっています。尾州の状況も厳しいですが、何よりわれわれがレベルアップすることで産地に貢献できればと考えます。
――今後の方向性を教えてください。
川上企業はもちろん、川下企業との連携もより深めて、ロスをなくした上で量が減ることなく生地を供給できる体制を整えます。さらに、新型コロナ禍でサステイナビリティーが根付きつつあるので尾州の企業と連携しながら、引き続き生地の海外販売にも力を入れていきます。
〈豊島/一宮本店 一部部長 酒井 良将 氏/尾州と消費者つなげる仕組みを〉
――尾州の魅力や特徴を教えてください。
小ロット多品種での対応はもちろん、高品質なモノ作りが得意な産地だと考えています。さらに、紡績から、撚糸、織布、編み立て、染色整理、修整までの工程が国内で唯一そろっているので、一気通貫の生産ができる産地と言えます。
――尾州の現状はいかがですか。
やはり新型コロナウイルス感染拡大の影響で厳しい状況が続いています。紳士向けはテレワークの増加で需要が落ち込みましたし、婦人向けの動きも芳しくありません。その一方で、自社ブランドの立ち上げなど新たな動きを模索している企業も見え始めています。
――そうした中で、豊島一宮本店が担う役割とは何ですか。
尾州と消費者をつなげる仕組み作りを進め、尾州の活性化につなげていきます。先ほどの自社ブランドの話にも関連しますが、メーカーが消費者に直販するD2Cの動きは顕著になっていますので、その波に尾州を乗せていければと考えています。サステイナビリティーの注目度も高まっていますので、リサイクルウールをはじめとした尾州の生地を世界へ売っていきたいという思いもあります。
〈モリリン/マテリアルグループ 素材1部素材2課 部長代理 林 伸太郎 氏/機能生かし輸出でも貢献〉
――尾州産地の特徴をどのようにお考えですか。
高品質でこだわりのあるモノ作り、小ロット対応などに強みがあると捉えています。特に各段階の企業が受け継いだ技術に磨きを掛け特色を出しています。それが需要家に納得してもらえるモノ作りにつながっています。
――尾州との取り組みを教えて下さい。
糸の販売先として、生地の仕入れ先として長年お世話になってきました。尾州産地は現状、厳しい状況にありますが、当社の機能にメリットを感じていただける企業とは共同で前向きな取り組みを進めていきます。
――具体的な取り組みとは何でしょうか。
中国への生地輸出はその一つです。中国子会社を通じて尾州産生地の中国内販に力を入れています。特徴ある生地には手応えも感じています。内販を拡大する上での課題もありますが、どのように解消していくかが今後のポイントになるでしょう。欧米輸出にも取り組みます。そのためにも新しい生地につながる糸開発を進めます。ウールは昨今高まるサステイナブル対応の原料でもあるので、その訴求方法も模索し、全体として産地の活性化に結び付けたいと考えいます。