三陽商会/今期、攻めの経営に転換/構造改革は完了へ

2021年04月16日 (金曜日)

 三陽商会は今期(2022年2月期)、直営店やネット通販の強化を軸にした攻めの経営に乗り出す。大江伸治社長は14日、経営再建のベースとなる「再生プラン」の進捗(しんちょく)について「基礎固めができた」と述べた。前期は新型コロナウイルス禍が想定以上に長期化する中、不採算店舗の閉鎖や人件費の圧縮、ブランドの統廃合などを実行。守りの経営を粛々と進めた。

 大江社長は「主だった構造改革は完了した。新型コロナ禍の対応もあるが、昨年からの学習効果もある。収益構造の立て直しもめどが付いた」と話す。

 再生プラン最終年度の今期中に、既存ブランドの価値向上を推進するほか、実店舗と電子商取引(EC)のクロスユース率(1人の顧客が実店舗とECの両方で購入するケース)を高める方針。主力購買層であるミドルアッパー層のリサーチやマーケティングを通じ、同社に求められる価値を再定義する。

 主力の百貨店チャネルは今年2月に計160拠点の撤退が完了、選別した売り場についても「坪効率の改善を追求する」とした。直営事業では、英ブランド「マッキントッシュ・ロンドン」で旗艦店を出店するほか、アウトレットにも積極的に出店する。

 昨年開設した直営旗艦店「ポール・スチュアート青山本店」は好調で、新規顧客を開拓。先月は高品質なスーツが売れ筋に浮上した。拡大した値引き販売も抑制し「プロパー消化率は(前期の44%から)53%に高める」とした。

 25年2月期には売上高520億円、営業利益率10%を目指す方針。再生プランで実行した構造改革に手応えがあり「売上高だけを見れば“バーバリーショック”を抜け出せていない。しかし、収益構造の見直しで成果を見せたい」とした。

〈5期連続の最終赤字/21年2月期〉

 三陽商会の21年2月期連結決算は、売上高379億円、営業損失89億1300万円、経常損失90億3600万円、純損失49億8800万円となった。20年2月期は決算期変更により、前期増減率については比較できない。最終損益は5期連続で赤字となった(短信既報)。

 売上高はほぼ計画通りに推移したが、値引き販売を積極的に行ったことで、売上総利益は21億円悪化。販管費は17億円を削減したものの、売上総利益の下振れをカバーできなかった。

 秋冬商戦のピーク時に緊急事態宣言が再発令されたことで「在庫消化のため、積極的にセールを仕掛けた。結果として売上総利益率は低下し、目標値を下回った」(大江社長)。一方で、商品在庫は43億円圧縮し、仕入れの抑制も進めた。

 チャネル別では、主力の百貨店が苦戦したほか、強化している直営店も緊急事態宣言の影響で低迷。しかし、ネット通販は16・6%増で売上構成比の22%を占めるまでになった。

 今期は売上高440億円、営業利益1億円、経常利益5千万円、純利益0円を見込む。純利益は「新型コロナ禍の収束が読めず、ゼロとした。フレキシブルに対応し、少しでもプラスに転換したい」と話す。