特集 カーペット(2)/メーカー/持続可能なモノ作りをバックアップ

2021年04月21日 (水曜日)

〈豊富な原着糸の備蓄強み/インビスタジャパン〉

 インビスタジャパンは、国内で191色のカーペット用ナイロン66原着糸を備蓄する。

 原着ナイロン糸「アントロン ルーミナ」は、994デシテックス(T)の「ファイン」と1383Tの「スタンダード」で構成。ファインは79色、スタンダードは88色に上り、2020年9月に新たにファインを24色追加した。イエロー系などアクセントとなる差し色を充実させたほか、黒・グレー系をより階層化した。ルーミナでは機能剤を練り込んで防汚性を高める高機能化も進めている。

 21年は、アントロンを紹介するサイトをベースにコンテンツを充実し、ルーミナの魅力などをより身近に感じてもらう仕掛けづくりに力を入れる。設計者やデザイナー、メーカー、卸、小売りなどをつなぐプラットフォームづくりも計画する。

〈残さ量を3分の2削減へ/トーア紡マテリアル〉

 トーア紡マテリアルは、カーペットの連続染色時に出る汚泥のさらなる残さ量削減に取り組む。

 同社は、四日市工場(三重県四日市市)にカーペットのタフティングから連続染色、ドライヤーまで一連の設備を持つ点が強みの一つになっている。連続染色の後染めには意匠面で独自性を発揮できることや機能加工ができるといった利点がある。さらに環境対応を進めることで差別化へつなげる。

 2018年に廃水処理関係の設備投資を行って、染色工程で出る汚泥の残さ量を従来比4割低減している。さらにシステムの変更などで3分の2の削減へつなげる計画だ。燃料もA重油、ブタンガスから液化天然ガスに変更することで低炭素化を図る考え。

 岐阜大学、三重大学、三重県工業研究所と共同で炭素繊維のリサイクルに関する研究も行っている。

〈細繊度や豊富なカラーに対応/シンコーケミカル〉

 ポリプロピレン(PP)長繊維を年間約2千トン製造するシンコーケミカル(大阪府泉南市)は、細繊度や豊富なカラーへの対応力が強みに挙がる。

 同社はノイマーク社製紡糸機を保有する。1330デシテックス(T)から4千Tまで幅広い繊度に対応できる。原糸に膨らみを持たすことでボリューム感のある製品に仕上げることができる。

 原糸カラーのバリエーションも豊富で、オリジナルカラーを開発して提案。ビビットなカラーもそろえ、グリーン系の売れ行きも良いと言う。

 生産はタイト感がある。2020年11月ごろから自動車用途の需要が旺盛だったが、3月上旬以降はやや落ち着いている。例年、4月は生産スペースに余裕が出るが、タイルカーペット用途でナイロンからPPへのシフトが見られることなどで、高稼働が続いている。

〈PPの紡糸機本格稼働へ/藤井撚糸〉

 藤井撚糸(三重県四日市市)は新たに導入したポリプロピレン(PP)溶融紡糸機の本格稼働に入る。今期(2022年3月期)の生産量は3千トンを目標に掲げる。

 現在は試験生産中で糸の品質確認を進めている段階。確認が済めば量産できる体制は既に整っている。5月中には本格生産に入る予定と言う。

 新たな設備は第二工場に設置し、人員は日本人2人と技能実習生4人の計6人投入した。今回の導入によって溶融紡糸機は2台体制となり、既存の1台は主に開発用とする。

 前期のPP糸の生産量は2千トン弱だった。今期の3千トンが達成できれば、国内ではPP糸の製造最大手になるとみられる。

 今期は策定した3カ年計画を元に、デジタル化の推進やサステイナビリティーなどの取り組みを推進する。

〈サステ紡毛糸打ち出し/比楽紡績〉

 紡毛紡績の比楽紡績(堺市)は、サステイナブル紡毛糸「REWOOL」(リウール)を打ち出す。

 リウールは主にウールノイル、再生ナイロン短繊維、再生ポリエステル短繊維、リサイクルウールで構成する。このうち一つ以上を使用した素材をリウールとして打ち出す。同4素材を中心にさまざまな組み合わせができ、別注対応する。

 ウールノイルは、梳毛糸用ウールトップのコーミングの際に出るくずを洗って化炭処理したもの。細繊度の18・5、19・5マイクロメートルもそろえる。リサイクルウールは、国内の生産で出る糸くずや裁断くず、着用後の服を選別してわた状に加工した繊維を使用。再生ナイロン短繊維は、東南アジアで出たエアバッグ用端材を国内でチップにして紡糸した再生ナイロン66短繊維を使う。再生ポリエステル短繊維は、国内で回収された使用済みペットボトルを使用する。

〈カーマットの原反オペレーションも/東レ〉

 東レ産業資材事業部は、カーペット用BCFナイロンの白糸を安定供給する。他のナイロンメーカーが2019年末に白糸の一部生産を終了したことに伴い、東レが白糸の供給量や品種を増やして対応。「これまでの白糸との置き換えを顧客とお互い踏み込む」(同部)ことで順調に取り込みを進める。

 原着糸も米国からの調達とともに、岡崎工場(愛知県岡崎市)で生産しており、白糸、原着糸とも対応力を高める。

 サステイナビリティー対応では、再生ナイロン使いのカーペットナイロン6糸も検討する。

 自動車用途では、カーマットの原反オペレーションも進めており、顧客の設備を活用しながら防汚系の加工をした原反の組み立てを始めている。