2021春季総合特集Ⅳ(13)/トップインタビュー  スタイレム瀧定大阪/社長 瀧 隆太 氏/変化する市場に対応する/「海外」「モノ作り」「新規事業」に力

2021年04月27日 (火曜日)

 瀧定大阪とスタイレムが統合し、2月からスタイレム瀧定大阪という新会社が誕生した。これを機に組織や人事も大きく変更。サステイナビリティーとデジタル技術の活用をテーマに挙げつつ、「グローバル」「モノ作り」「新規事業」という3大方針を掲げる。時代の変化に対応することで発展してきたのが同社。その考えは今後も変わらない。瀧隆太社長に聞いた。

  ――新型コロナ禍収束後に日本の繊維産業が発展するためには何が必要でしょうか。

 デジタル技術の活用で、衣料品ブランドが容易に立ち上げられるようになっています。日本に限らず、世界全般の話です。中国や欧米、日本などで独自の世界観を持ったブランドが実際にどんどん立ち上がっており、既存の繊維産業もこの流れにフィットしていくべきだと考えます。

 新たに立ち上がったブランドはわれわれのような生地、製品を提供する企業の顧客になり得ます。顧客というよりも、一緒にモノやコトを作っていくパートナーのような感じでしょうか。

 そこに求められる存在にならないといけない。世界中の新進アパレルの課題解決に貢献し、新たな発想を生み出すお手伝いをする。こうしたスタンスが今後は不可欠になるのではないでしょうか。

 グローバル化も重要です。日本製生地はもっと海外で売れていい。しかし、品質やリードタイムといった諸問題を抱えているため輸出拡大はいまいち進展していません。これを成功させるためには日本独自のスタンダードや意識を変えなくてはいけない。日本のスタンダードに合わせてくれる海外顧客など存在しません。日本が市場に合わせないといけないのです。

 当社は幸いにもこの間、中国市場向けを中心に輸出を拡大させています。ただ、日本のモノ作りが抱える諸問題を解決しない限り、いつか選ばれなくなるのではという危機感を強く持っています。輸出については特に信頼関係が重要。信頼を得るためには相手が求める納期や品質に応え続ける必要があります。既に一部の国内メーカーとは海外のスタンダードに合わせるような取り組みを進めています。検証中ですが、これを広げていくことが海外市場開拓につながると信じています。

  ――今期方針にも掲げていることですね。

 グローバル事業の強化、モノ作りの強化、新事業への挑戦を3大方針に掲げています。この三つは日本の繊維産業全体の課題とほぼイコールだと思います。

  ――21年1月期を振り返ってください。

 グループ決算は海外法人など14社の単純合算で、売上高が694億円(前期比26・6%減)、売上総利益が111億円(27・2%減)、営業利益が3100万円(98・5%減)でした。

 品目別売上高は原料が16億6400万円(63・6%減)、生地が374億円(26・6%減)、衣料製品が253億円(23・1%減)、ライフスタイル製品が30億円(20・0%減)といずれも2桁%の減少でした。

 スタイレムと瀧定大阪の2社連結決算は、売上高が580億円(27・3%減)、営業損失が4億6600万円(前期は13億2千万円の黒字)、経常損失5億5900万円(前期は12億8800万円の黒字)、純損失27億400万円(前期は3億3100万円の黒字)です。

 ファッションアパレル向けが事業の大半を占めるため、新型コロナウイルス禍で低迷するアパレル業界の影響を大きく受けました。出張旅費は5億円減少し、各種経費削減にも努めましたが、2社連結決算では各段階の損益で赤字を強いられました。

  ――2社連結で営業赤字だったのがグループ業績では営業黒字。その理由は。

 そこに最も貢献したのは売り上げ100億円超に成長した海外事業です。特に中国内販の利益貢献度が高く、グループ業績を押し上げてくれました。

  ――重点方針を。

 先に話しましたように、グローバル化、モノ作り強化、新規事業創出に取り組みます。そのため組織も大きく変更しました。サステイナビリティーとデジタル技術の活用も重要なテーマです。

〈新型コロナ禍収束後にまずやってみたいこと/各国巡ってねぎらい〉

 新型コロナ禍で海外出張に行けていない。人々の価値観や生活様式が変化する。「収束後どう変わったのかを実際に目で見てみたい」と瀧さんは好奇心を隠さない。同社には中国、イタリア、インド、香港、韓国、タイ、インドネシアの各拠点に計22人の日本人スタッフが駐在している。頼もしいと思うと同時に帰国もできず現地で奮闘するスタッフのことを考えると胸が痛む。収束後はそのねぎらいのために各拠点を巡ると決めている。

〈略歴〉

 たき・りゅうた 1999年ソニー入社。2007年瀧定大阪入社。08年4月から瀧定大阪社長。18年4月から兼スタイレム会長。瀧定大阪とスタイレムの吸収合併・社名変更に伴い21年2月からスタイレム瀧定大阪社長。