東レ/高熱伝導化の新技術開発/CFRPの放熱性高める

2021年05月20日 (木曜日)

 東レはこのほど炭素繊維複合材料(CFRP)の放熱性を金属同等まで高める高熱伝導化技術を開発した。同技術をCFRPに用いると、熱源からCFRP内部の熱伝導経路を通って効果的に放熱させることができるため、モビリティー用途のバッテリーの劣化抑制、電子機器用途のパフォーマンス向上に貢献する。

 CASEに代表される次世代モビリティー用途では、充電時の発熱によるバッテリーの劣化を防ぐため構造材料であるCFRPの放熱性向上が求められているという。

 CFRPの熱伝導率はアルミ合金などの金属に比べ劣っているため、金属よりも熱伝導性に優れるグラファイトシート(黒鉛をシート状に加工したもの)を表面や内部に配置することで放熱性の改善が行われている。

 グラファイトシートは脆性材料であるため破断や飛散、損傷しやすく、CFRPの品位、品質が損なわれてしまうことが課題だった。

 東レは独自技術により炭素繊維の短繊維で3次元的なネットワークを形成した高剛性多孔質CFRPを開発し実用化している。今回はこの多孔質CFRPを支持体としグラファイトシートを保護した熱伝導層を開発した。

 熱伝導層にCFRPプリプレグ(繊維状補強材に樹脂を含侵させたシート状の中間材料)を積層することでCFRPの力学特性や品位、品質を損なうことなく金属以上の熱伝導性を発現させることに成功した。

 熱伝導経路であるグラファイトシートの厚みや積層位置を自由に制御・配置できるため、CFRPの冷却効率や熱伝導経路を自由に設計するヒートマネージメント設計が可能という。

 CFRPの軽量性を損なうことなく、バッテリーや電子回路からの発熱を効率よく放熱するソリューションを提供する技術であるため、軽量性に加え放熱性が求められる次世代モビリティー用途、モバイル電子機器用途、ウエアラブル端末用途への適用が期待できるとしている。