特集 アパレル(3)/アパレル総合21秋冬~企画&トレンド~紳士服 編

2021年06月23日 (水曜日)

〈オンワード樫山「J・プレス」/カジュアル衣料に注力〉

 オンワード樫山が展開する紳士服「J・プレス」は、イエナカ需要や在宅ワーク、ワンマイルウエアを意識したカジュアルウエアを強化する。21秋冬シーズンは、丸編み地のトップスやシャツを軸に中軽衣料の品番数を増やす考え。

 J・プレスの定番であるポロシャツやラガーシャツなどを展開しながら、前述したカジュアルを拡充。スエットやTシャツをはじめ、ブランドの起源である「ユニバーシティーアイテムを提案する。一部の商材で世代や性別を超えたユニセックス仕様も用意する」と説明した。

 シャツについては、異素材コンビ、クレージーパターンといったテクニカルなコンテンツを採用する。普遍的なシャツに色や柄で遊び心を加え、モダンに表現する。

 マーケットではベーシックの価値が見直され、同ブランドが持つ歴史に根差した定番商品も「改めてクローズアップする」。さらに、機能性MDカテゴリーとして展開する「J・プレス・プラス」において、アウター、セットアップ、ボトムス、インナーを拡充。ライフスタイルの変化に対応する。

〈オッジ・インターナショナル「ダーバン」/ビジネスパーソンへPO〉

 オッジ・インターナショナルが展開する紳士服「ダーバン」は、ファッション性とトレンド感を重視したウールコートを21秋冬シーズンに展開する。ブランドの強みであるカシミヤコートは、宮崎ファクトリー(旧ダーバン宮崎ソーイング)で生産。非ウールでは、桐生産地と取り組んだ合繊素材を軸に機能コート、ダウンアイテムを用意する。

 新常態でビジネスシーンが変化し、「さまざまなニーズに対応する」と説明する。今春夏に引き続き、セットアップを拡充するほか、合わせるインナー商品を増やす。一方で、ビジネスパーソンの「スーツが必要」「スーツを楽しみたい」という需要に応え、ウール100%のジャージー素材でスーツを提案する。

 ビジネスにおけるスーツ需要は減少傾向と言われているものの、同社では「時代とともにアップデートさせる。パターンオーダー(PO)も引き続き強化する」とした。今年に入り、スーツのPOは堅調。さらに、21秋冬からカシミヤコートのPOを開始し、体形や好みなどオーダーできる範囲を広げる。

〈三陽商会「マッキントッシュ・フィロソフィー」/ジャケットレス化に備える〉

 三陽商会が展開する紳士服「マッキントッシュ・フィロソフィー」は、機能的な仕様や着心地を重視した商品を21秋冬シーズンに投入する。9月には、ジャージー素材のテーラードジャケットとパンツのセットアップを提案。同社では「モダンブリティッシュを基軸に着心地も追求した」と説明する。

 ウール素材のビジネススーツは減少し、ジャージー素材のアウターが増加。ジャケットに代わるニットアイテムを増やし、スニーカーに合わせやすい単品を充実させる。今季は「市場の“ジャケットレス化”に備える」とした。

 冬物最盛期には、2ウエーのフーデッドコートを展開する。ストレッチ性のあるポリエステル素材のコートで、中わた入りのキルトライナーがドッキングしている。フード部分は着脱可能で、外すとスタンドカラーのコートになる。

 そのほかにもオン・オフ兼用のアウターを増やす考え。汎用性のあるコートやブルゾン、ニットウエアを提案し、アクティブウエアとテーラリングの融合を目指した。

〈YKK「クリックトラック」「クイックフリー」/利便性で用途の幅広げる〉

 YKKは2019年から、ファスナーを閉める際の操作性を簡単にした「クリックトラック」の販売を開始した。同製品はその利便性により、スポーツやアウトドアに加えキッズウエア、ユニバーサルデザインファッションにまで用途を広げている。

 開部パーツをボタンのように重ね合わせてスナップするだけで、開具が自動的に回転・係合し、ファスナーを簡単に閉じることができる。開具の形状を丸く大きめにしているため、さらに操作の簡易性が高まった。

 クリックトラックは「誰もがファッションを楽しめるように」との思いから生まれた。高齢や体の障害などの理由で細かい作業が困難であるため、開ファスナーの使用に抵抗を感じるユーザーが、衣服の着脱をしやすくなる配慮を施した。

 「クイックフリー」も、利便性を追求して用途を広げたファスナーだ。「挿入補助」と「緊急開放」の両機能を併せ持つ。

 スライダーの下面に添えて入れるように差し込むことができる機能を付与した。一定以上の負荷がかかると、エレメント(務歯)が自動的に開放される。例えば、子供服のフードが引っ掛かり首つり状態になるような危険性も回避する。

 チェーンを左右に引っ張るだけで開く「クイックリリース機能」により、衣服を素早く脱ぐ場面が多いスポーツ分野でも需要を獲得している。

〈オーダーシャツ企業/新型コロナ禍でも動き活発〉

 テレワークの浸透によるビジネス服のカジュアル化は、ドレスシャツ市場にも負の影響を与えている。全体の需要は縮小傾向にあるが、オーダーシャツを展開する企業は積極的な動きを続けている。中国での事業拡大や新商品開発などが目立っている。

 メーカーズシャツ鎌倉(神奈川県鎌倉市)は、中国・上海の金融の中心地である浦東エリアの上海ワールドフィナンシャルセンター内にポップアップストアを開設した。同社は2019年11月に上海に常設店舗を出店しており、今回のポップアップストアはさらなる店舗展開を見据えたもの。8月31日までの期間中にマーケティングを行い、実際の出店につなげる。

 オンラインでオーダーシャツを販売するSolve(東京都港区)は、“楽ながらもきっちりした”新ワークウエアスタイルをコンセプトにしたビジネスカジュアル向けの商品を展開している。

 4月の「仕事Tシャツ」の販売に続き、6月に「仕事POLO」を発売した。新商品はきちんと感を出すため、ボックス型のシルエットを採用した。

〈フレックスジャパン/ポリ100%経編地に複合機能〉

 フレックスジャパン(長野県千曲市)は、21秋冬からポリエステル100%トリコット生地を使ったシャツの販売を始める。日清紡テキスタイルと共同開発した生地で、防汚と抗菌・防臭、制菌加工を施した。ポリエステル100%トリコット生地が持つ「皮脂汚れが落ちにくい」「臭いが気になる」といった課題を解決している。

 伸縮性や速乾性、形態安定性などが評価され、ポリエステル100%トリコット生地を使ったシャツの販売は伸びている。同時に「襟や袖の皮脂汚れが落ちにくく、汗の臭いが生地に染み込んで取れない」との意見も多い。そうした声に応えたのが、新開発の「コンフォートコントロール」だ。

 襟やカフス部分に高性能防汚加工「クリアキープ」を採用し、臭いが気になるボディー部分は抗菌・防臭・制菌加工「エージーフレッシュ プラス」を施す。共に繊維評価技術協議会の「SEKマーク」の認証基準をクリアするレベル。防汚機能については食品汚れや化粧品汚れに対する効果も確認済み。再生ポリエステルを一定量使う。

〈AOKI「オリヒカ」/「シャツパンスーツ」販売〉

 AOKIは、ビジネスからホームまで1着で過ごせる「パジャマスーツ」を開発するなど、新型コロナウイルス禍によって誕生した新しい働き方に対応した商品を数多く展開している。そうした取り組みの中で出てきたのが「オリヒカ」の販売する「シャツパンスーツ」で、シャツとパンツが同素材のセットアップだ。

 6月にオリヒカ全店とオンラインショップで販売を始めたシャツパンスーツは、シャツとパンツに同じ素材を使用することで程よいきちんと感を演出する。機能面ではストレッチ性を付与することで気軽な着用感を演出している。ウオッシャブル性と防シワ性も持っているためイージーケア性も兼ね備える。

 パンツとシャツにはポケットを付けているので、在宅ワークの休憩中のちょっとした外出にも便利。パンツのウエスト部分にシャーリングを採用することで着席時の窮屈感を解消している。濃紺とチャコールグレーの2色で展開し、MとLの2サイズ。

 オリヒカ限定店舗ではショートパンツバージョンも展開している。着用シーンや用途で選べる。

〈青山商事/すわりシゴト専用パンツ開発〉

 青山商事は、テレワークなどに対応するさまざまな商品を市場に投入している。6月に全国の「洋服の青山」と公式オンラインストアで展開を開始したのが、座った状態でも快適に着用できる「すわりシゴト専用パンツ」の夏仕様だ。「有能パンツ」シリーズの新商品として数量限定で販売している。

 すわりシゴト専用パンツは、テレワークやオフィスでのデスクワーク向けとして昨年の秋に販売を始めた独自商品。その名の通り、座った状態でも窮屈感がなく、快適に着用できるビジネスパンツとして好評を博した。「夏にはけるタイプも欲しい」との要望が増えていることから夏バージョンを企画した。

 新商品は、接触冷感の生地を使用することによる“ひんやり”としたドライタッチな肌触りといった特徴を持つ。従来品は縦方向のワンウエーストレッチだったが、2ウエーストレッチに改良することで動きやすさを向上した。腰部の後ろ側のアクションプリーツが尻部の生地の張りを軽減する。ストレスフリーな着用感も持つ。

〈三政テキスタイル/ニット向けと海外展開に活路〉

 三政テキスタイルは、高級シャツ地を主力とするコンバーター。豊富な品ぞろえを背景にした提案力で、セレクトショップなどに販路を広げてきた。海外の生地の取り扱いに力を入れ、イタリアのアルビニ社など有力メーカーの商材の販売実績を積んだ。中国・山東省の先染め織物メーカー、魯泰(ルータイ)紡織の生地の拡販も担う。

 2020年には東京都千代田区から渋谷区神宮前に本社を移転した。顧客とのコミュニケーションの強化や情報収集能力の向上を図るため、アパレル企業の集積地に拠点を置いた。これを機にさらなる飛躍を目指したが、新型コロナウイルス禍で事業環境が一変した。生活様式の変化でドレスシャツの販売が減少した。

 それでも、時代の転換を事業領域拡大の好機と捉え、新しい成長戦略を打ち出す。その一つが、布帛以外のニット製品に向けた生地の取り扱いだ。Tシャツやポロシャツに使用する綿の生地の拡販に注力する。

 二つ目が、シャツ地の海外販売の拡大。自社で企画した高品質の生地を韓国へ売り込み、販路を開拓する。将来は欧州への進出も狙う。野村昌平社長は「日本のコンバーター機能は海外にも負けない」と自らを鼓舞する。

〈太陽繊維/備蓄機能など強みを前に〉

 紳士ドレスシャツ生地商社の太陽繊維(大阪市中央区)は、自社の強みをアピールすることで存在感を高める。その一つが生地の備蓄機能であり、もう一つが国内外の産地と直接つながっていることだ。さらにドレスシャツ(地)に関する専門的知識を持っているスタッフの存在も優位点と言える。

 生地の備蓄は、常時2千点はあるとしており、顧客の細かい要望への対応はシャツ地に関しては何でもできると強調する。産地とのつながりについては、日本では兵庫県の西脇や静岡県の遠州との取り組みが深い。海外では中国、ベトナム、タイから直接仕入れているため、タイムリーに適正な価格で提案ができると自信を示す。

 同社の機能・強みについて「新規に参入する会社はなく、競合企業も生まれにくい。ただこのような機能を太陽繊維が持っていることを知らない会社も多い。もっと広く知ってもらう必要がある」と捉えている。このため、自社のホームページや会員制交流サイト(SNS)などを活用して認知を広げるとしている。

〈クロスプラス「ビズコス」/Tシャツを新たに打ち出し〉

 クロスプラスは、メンズEC専用ブランド「biscos」(ビズコス)でポロシャツに加えてTシャツを新たに打ち出す。“着心地はオフでも見た目はオン”というコンセプトのもと、テレワーク向けにも適したアイテムとして訴求を図る。

 ポロシャツは50番単糸の綿糸と83デシテックスのポリエステル糸を交編した鹿の子生地を使用。吸水速乾性と通気性を持ち形崩れも起こしにくい。襟型は台襟仕立てのカッタウエーとボタンダウンの2種類。パターンはレギュラーフィットと、着丈を短くしてシャープに仕上げたスマートフィットの2種類を構える。

 Tシャツは60番単糸でシルケット加工を施した綿100%スムース生地を使う。光沢感と滑らかな肌触りの生地が特徴でジャケット着用時のインナーとしても重宝する。サイズは6種類そろえる。

 ポロシャツはネービー・ホワイト・ブラックを基本色とするが、ブラウンやサックスの売れ行きも良い。Tシャツもポロシャツと同様の基本色がそろうが、ベージュの消化が早いという。