特集 オフィス&サービスウエア21秋冬(3)/新たなビジネスを切り開くDXの新潮流/商社編

2021年07月02日 (金曜日)

 ユニフォーム業界にもデジタル技術で企業を変革するDXの波が押し寄せている。ファッションテックをはじめ、ユニフォームビジネスとの融合が進めば新たな可能性を生み出す原動力にもなる。グローバルネットワークを生かす商社は、デジタル技術の多様な活用法を提案する。

〈在庫リスク削減に注力/DX活用で効率化図る/日鉄物産〉

 日鉄物産の繊維部門は、2021年3月期連結決算で減収減益となった。売上高は984億円(前期比24・3%減)で、国内アパレル産業全体の構造上の課題に加え、店舗の休業や営業時間短縮、在宅勤務の定着などの影響で衣料品販売が落ち込んだ。コスト改善に努めたが、売り上げ減少をカバーできず経常利益は16億円(同64・3%減)にとどまった。

 機能衣料分野では在庫リスク削減への取り組みを強化しており、「在庫を積まずに必要なものを必要な分だけ作るという仕組みを、しっかりと構築することが大事」と野原篤智機能衣料課長。メンズファッションで採用しているパターンオーダーの仕組みをオフィスユニフォームに取り入れるといった新たな試みも始めている。

 重点課題となっている「製造の可視化」については、原材料の仕入れから出荷に至るまで工程ごとにデータ管理で生産状況を把握。サプライチェーン全体を一つのシステムで運営していくことで効率化を図っている。

 全社方針で進めているDXでは、3Dモデリングやデジタル採寸を積極的に取り入れている。カラーの選定だけでなく、着用モデルの身長や体形を変化させたイメージをその場で表示できるなど、限られ商談時間の中で、より的確な提案を進めることができる。

 リモート対応も可能なため、ケースによっては会議場所を選ぶ必要もなく、3Dモデレーターやパタンナーを含め多くの参加者のスケジュール調整の手間も大幅に簡略化できるメリットも生み出している。

 国内縫製工場と新たな生産体制の構築を進める。リードタイムを短縮することで納期対応をよりスムーズにしていくほか、QRや小ロット対応にも有効と見る。

 政変が続くミャンマーには設備貸与している工場が4カ所あり、企業用ユニフォームの海外生産拠点でもある。現地との連絡を密にして状況把握を行いつつ、一時的に周辺国での生産に切り替えるなどの対策をとる。

 SDGs(持続可能な開発目標)の一環として取り組むリサイクルシステムの拡充に当たっては、「商社、アパレル、リネンサプライヤーなど幅広く連携しながら取り組む必要がある」と野原課長は話す。

〈幅広い商材でフォローアップ/ファッションテックの提案も/豊島〉

 新型コロナウイルス禍の影響が長引く中、オフィス・サービスウエア向け事業を取り巻く状況は厳しい。豊島ではユニフォームアパレル企業への幅広い商材提案でフォローアップを進めている。

 ファッションテックの取り組みもその一つ。今期からウエアラブル事業を担当する部署を新たに設置しており、5月には東京本社内でスマートウエア関連製品に特化した展示会「スマートウェアWEEK」を開催した。アパレル製品や生地の展示に加え、Xenoma(東京都大田区)やミツフジ(京都府精華町)のスマートウエア関連製品でスマート化のメリットを体感してもらうことで、ユニフォーム事業にプラスアルファとなるようなヒントを提案する。

 ワーク系に応用できそうな製品がXenomaのスマートウエア「イースキン・エムスタイル」。電気刺激による筋肉負荷をかけ20分で全身の筋トレを完了させる。転倒検知・通知機能とともに睡眠状態を可視化する機能を搭載するスマートパジャマ「イースキン・スリープ&ラウンジ」や、歩行データを解析するツール「イースキン・ミーバレッツウォーク」も働き方改革を推進する職場での需要創出を期待できる。

 ミツフジのリストバンド型ウエアラブルデバイス「ハモンバンド」は、暑熱リスク対策に特化しており、建設現場など多様なシーンでの活用が可能だ。

 新型コロナ禍でのユニフォーム営業のツールに役立てもらおうと、換気用フィルターやマスク、各種消耗品などの感染対策用品も扱う。

 生地では、スポーツウエア向けに開発し、ユニフォームとの親和性も高い軽量ストレッチ素材「ハイパーヘリックス」の本格展開を開始。2種類のポリマー(高分子の集合体)を融合させた特殊繊維で、熱を加えた時の収縮率の違いで生じるらせん状の捲縮(けんしゅく)が、生地にストレッチ性と軽量感をもたらす。

 サステイナブルに対しては、「MY WILL」(マイウィル)をステートメントとして、日本環境設計の「ブリング」や、オーガニックコットン普及プロジェクト「オーガビッツ」をはじめとしたサステイナブル素材群を全社として幅広く対応できる体制を整える。

 生産面で同社の強みとなっているベトナムの自社工場「トヨシマ・ロンアン・ガーメント」は、引き続き順調な稼働率を維持。昨春にCAM(自動裁断機)と特殊ミシン機を導入し多品種小ロットに対応しており、オフィス・レディースウエア関連ではブラウスなどの生産が増えている。ミャンマーの政情不安による影響は現在のところほぼ出ていないと言う。