特集 2021年夏季総合Ⅱ(6)/わが社の飛躍への萌芽/事例研究

2021年07月27日 (火曜日)

〈宇仁繊維/「解放感」がキーワード/色柄開発を改めて強化〉

 「解放感がキーワードになってくる」と宇仁繊維(大阪市中央区)の宇仁龍一社長は先を読む。新型コロナウイルス感染対策のワクチン接種が進み、自粛を強いられていた人々が外出し始める。繊維・ファッションもそこに照準を合わせるべきだと強調する。

 テントやバーベキューセットが売れている。遠出は自粛しつつも、自宅の庭でテントを張る光景も目にする。皆が解放感を求めている。宇仁社長によれば、明るいカラーやこれまでにない変わった柄がここに来てファッション市場で台頭しているが、それにも解放感が関係していそう。アフターコロナを見据え、「色柄開発に改めて力を入れる」考えだ。

 「9月ごろには市況は8割まで戻る」とみる。7、8、9月にはニューヨーク、上海、パリでの展示会に参加し、徐々に回復する市況に合わせて提案を加速させる。

 デジタル活用も意識する。「生地の良し悪しはデジタルだけでは分からない」ことを前提にしつつ、情報発信や効率化に向けて取り組みを進める。社内に専門委員会も作った。

〈ヤギとツバメタオル/シナジーが着々と高まる/製販両面でタッグ〉

 ヤギと子会社のタオル製造、ツバメタオル(大阪府泉佐野市)の間では、製販両面でシナジーが高まっている。

 ヤギは2019年7月、タオル生産量日本一のツバメタオルの全株式を取得し子会社化した。綿糸販売を祖業の一つとするヤギが、その販売先の一社を子会社化した形だ。この直接的効果として、ツバメタオルの綿糸仕入れ先ランキングの首位にヤギが躍り出た。

 製販両面でシナジーも高まっている。ツバメタオル製のタオル地とヤギの縫製事業を融合させてTシャツ、パジャマ、ルームウエアなどの開発が進むほか、ヤギによるツバメタオル製タオル販売事業もスタートした。

 慈善事業の一環として、ウイッグケアに適したサイズと吸水性を持つタオルを、NPO法人、JHD&Cに対してヤギとツバメタオルのダブルネームで提供している。同法人は、寄付された髪だけで作ったメディカルウイッグを、頭髪に悩みを抱える18歳以下の子供たちに無償提供している。

 タオル輸出拡大に向け、2社共同による越境ECへの挑戦も始まった。

〈蝶理/一体化運営で総合力発揮/グローバル展開を加速化〉

 蝶理は、2022年度までの中期経営計画で繊維事業のテーマを「グローバル・ワンストップ・オペレーション・バイ・チョウリ」に設定した。20年4月には、事業の一体化運営を強化するため、3本部制から1本部制に組織を改編した。川上から川下までグローバルに展開する繊維事業の総合力を結集させるのが狙い。

 グローバル事業では、独自のサプライチェーン構築に力を注ぐ。競争力のあるグローバルメーカーと連携し、製造・調達・加工・縫製基盤の高度化を目指す。世界的なSPAアパレルやスポーツメーカーへの出口戦略も進める。世界6極体制の充実化も図る。

 SDGs(持続可能な開発目標)に関連し、環境・リサイクルをキーワードにした商材軸での提案を強める。

 得意とする機能性商材のブランディングも重視し、健康や快適性を求める新常態に向けた素材の提案に力を入れる。

 6月に子会社化したスミテックス・インターナショナルの綿と蝶理が強みとする合繊を組み合わせるなどして、エコ分野でも相乗効果を生み出していく。

〈豊島/DXの推進とサステを軸に/生活全般に向けた商材提案〉

 豊島はデジタル技術で社会を変革するDXとサステイナビリティーへの対応を軸に新たな商材の提案を進める。従来のファッション衣料のみならずスマートウエアや生活雑貨、衛生品といったライフスタイル全般に向けた取り組みを加速する。

 DXの取り組みとしてはアダストリアと協業し3D・CGデザイン技術「バーチャルクロージング」を活用し、着やすさとデザイン性を両立させた衣料品の製作を推進。体に障害がある人や病院着を着用する機会が多い人に向けたインクルーシブプロジェクトだ。

 バーチャルクロージングはパターンデータを読み込み3Dモデリングし、データを蓄積して実績を増やすことで作業を大幅に短縮することが可能。衣料品の生産効率向上が可能でサステイナブルな服作りを実現する。

 環境への対応にも力を入れており、オーガニック綿の普及プロジェクト「オーガビッツ」は昨年で15周年を迎えた。ほかにも、トレーサブルなトルコ産オーガニック綿「トゥルーコットン」、廃棄食材を染料に活用する「フードテキスタイル」など多彩な展開をする。