スタイレム瀧定大阪/トレサ確保の有機栽培綿/種、畑の段階から介在して

2021年07月28日 (水曜日)

 スタイレム瀧定大阪(大阪市浪速区)はこのほど、種、畑の段階からトレーサビリティーを確保したオーガニックコットンを普及させるプロジェクトを立ち上げた。農場に種を販売するインドの会社と契約し、まずは900軒(約200ヘクタール)の綿花農場のオーガニック化を進める。収穫量は年間約100トン。今後徐々に契約農場、作付面積を増やしていく。

 オーガニック繊維の国際的な認証組織「グローバル・オーガニック・テキスタイル・スタンダード(GOTS)」は昨年10月、インドでオーガニックコットンの偽装売買を確認したと発表した。インドでは通常の綿花がオーガニックコットンと偽って売買されているとのうわさが以前から根強く、GOTSの発表によりその疑いが一段と強まった。

 スタイレム瀧定大阪によると、偽装問題が発覚した途端に「サプライヤーからのオファーが急減し、証明が取れているものは値段が高騰した」。一方、国内外のアパレルブランドでオーガニックコットンの需要は高まっている。ニーズの高まりの一方で供給が停滞している状況を改善する策の一つがトレーサビリティーの確保にあると、プロジェクトを立ち上げた。

 インドで綿花の種の販売を手掛けるNSLグループと契約。NSLが約900軒の農場と交渉し、オーガニック化の了承を得た。一カ月前に作付けが完了。900軒の農場で100トン相当の有機栽培が新たに始まった。

 2年目、3年目の“プレ”段階のオーガニックコットンはその全量をスタイレム瀧定大阪が買い取る。

 同社本体で原料を取り扱うマテリアル課とニューデリーのインド法人とで糸とわたを備蓄販売する。その後、生地や製品へと広げていくとともに、このプロジェクトに賛同する企業や人を国内外で募っていく。

 農場がオーガニック化に踏み切れない最大の理由が、“プレ”期間中に利益が出ないためだとされる。その全量の買い取りをスタイレム瀧定大阪が行うことで参入障壁を下げた。

 同社は「無農薬化は農場で働く人たちの健康にとっても良いこと。その人たちの寿命が延びれば技術の継承もしやすくなる。これが持続可能性への真の取り組み」とオーガニック化の意義を強調する。「単に仕入れることと畑を一から作るということは全く違う。モノ作りの本質が学べるはず」とし、商品の付加価値化とともに、社員など関係者の本質理解につなげる取り組みになると今回のプロジェクトを位置付けている。