特集 メンズウインター(1)/市場のカジュアル化に即応/オンワード樫山/三陽商会/オッジ・インターナショナル/ジョイックスコーポレーション

2021年08月23日 (月曜日)

 大手アパレルの業績が回復している。ブランドの統廃合や販管費、人件費の抑制も進み、利益面で成果が出てきた。その一方、これまで守りに徹していた経営から転換し、成長に向けた攻めの投資が始まる。21秋冬シーズンは、アフターコロナを見据えた分岐点になりそうだ。取材した企業は「今後も消費は不透明」との共通認識があるものの、メンズ市場で新しい芽を探っている。

〈オンワード樫山「J・プレス」/ユニバーシティー発想に強み〉

 オンワード樫山が展開する紳士服「J・プレス」は、イエナカ需要や在宅ワーク、ワンマイルウエアを意識したカジュアルウエアを強化する。21秋冬シーズンは、肌触りの良い丸編み地のトップスやシャツを軸に中軽衣料の品番数を増やす。

 J・プレスの強みであるユニバーシティー(大学)から発想したポロシャツやラガーシャツなどを展開しながら、前述したカジュアルを拡充。スエットやTシャツをはじめ、一部の商材で世代や性別を超えたユニセックス仕様も用意する。

 シャツについては、異素材コンビ、クレージーパターンといったテクニカルなコンテンツを採用する。普遍的なシャツに色や柄で遊び心を加え、モダンに表現。

 紳士服マーケットではベーシックの価値が見直され、同ブランドが持つ歴史に根差した定番商品が改めてクローズアップされている。機能性MDカテゴリーとして展開する「J・プレス・プラス」では、アウター、セットアップ、ボトムス、インナーを拡充。昨今のライフスタイルの変化に対応する。

〈三陽商会「ブラックレーベル・クレストブリッジ」/高感度コレクション投入〉

 三陽商会が展開する紳士服「ブラックレーベル・クレストブリッジ」は、アウトドアやミリタリー、スポーツの要素を盛り込む。同社では「多様化するライフスタイルに対応し、都会的なアイテムに仕上げた」と説明する。

 先シーズンから同ブランドのクリエーティブ・ディレクターを務める江角泰俊デザイナーのデザインが好評と言う。英国調のモチーフを基本に、江角氏のクリーンでモダンなアレンジを加味。21秋冬シーズンは、テレワークスタイルを意識した企画や、ちょっとした外出ができる部屋着もそろえた。ブランドのアイコンである“クレストブリッジチェック”には、落ち着きと深みのあるダークベージュチェックを新たに投入する。

 さらに、江角氏の名前を記した高感度なカプセルコレクション「ブラックレーベル・エズミ」を展開する。21秋冬は9型を提案し、キルティングやボアなどの素材をアウターに採用し、チェック柄の生地を効果的に組み合わせた。同アイテムは、クレストブリッジ原宿本店(東京都渋谷区)と自社ECで販売する。

〈オッジ・インターナショナル「アクアスキュータム」/創業170周年企画に期待〉

 オッジ・インターナショナルが展開する紳士服「アクアスキュータム」は、ロンドンの中心地であるリージェント・ストリート沿いで創業してから170周年という節目を迎えた。21秋冬シーズンは、世代を超えて支持を集めているトレンチコートで特徴的な限定企画を用意する。

 トレンチのルーツとされるタイロッケンコートや、ブランドのシンボルである“クラブチェック”のステンカラーコート、大柄なチェックのウールコートを提案。さらにウェブサイト上で、ジーンズやドレス、スニーカーなどとスタイリングしたトレンチコートのルックを紹介するなど、若年層への訴求を強化する。

 同社の江端克之第四事業部事業部長は「トレンチコートはエイジレスの商品として、幅広い層へ展開できる。品質の良いモノを長く着る意味では、環境保全につながる」と説明する。

 クリミア戦争(1853~1856年)で英国軍が高級将校用の防水コートとして採用している。その後は英国王室御用達に任命されるなど「素晴らしい歴史がある」とする。7月末時点で紳士服は35店舗体制で運営している。

〈ジョイックスコーポレーション「ランバンコレクション」/セットアップが充実〉

 ジョイックスコーポレーションが展開する紳士服「ランバンコレクション」は、新たに10万円台のセットアップを投入する。21秋冬シーズンもビジネススーツの品番数を絞り込み、セットアップをはじめとしたカジュアルシーンで着用できる商品を増やす。

 スポーティーなブルゾン、カジュアルジャケットのバリエーションを拡充。ロロ・ピアーナ社が提供する天然の無染色素材「ペコラネラ」を使ったジャケットや、オーガニックコットンでモノグラム柄トップスを製作するなど、持続可能な取り組みも強化する。

 従来のビジネススーツは15万円前後だったこともあり、10万円のモダンなセットアップで新規顧客を開拓する考え。一方、パターンオーダーで紳士のスーツ需要に対応し、エグゼクティブ層に訴求する。

 今季は自然から影響を受けたボタニカル柄、フラワープリントなどを絵画的なアプローチで採用した。アートワークをシャツやアウターに落とし込んだほか、リラックス感のあるシルエットを軸に、スモーキーブルーといったアースカラーで仕上げた。