シキボウ/社会的価値との両立を/新たな事業領域の開拓加速

2021年08月27日 (金曜日)

 6月に就任したシキボウの尻家正博社長は今後の基本方針として、これまで蓄積してきた技術やノウハウを生かして新たな事業領域への進出を加速させるとの考えを示した。「世の中の価値観が急速に変化する中、社会的価値が一段と求められている。企業として経済的価値と社会的価値を両立することを目指す」と強調する。

 尻家社長は、同社の強みとして繊維事業からスタートし、産業資材や機能材料などに事業領域を広げてきた技術力などモノ作りのノウハウと信用力を挙げる。その一方、「最近は新しい領域への進出が少なくなっている」ことを課題として挙げる。

 このため今後は自社の技術やノウハウを生かして新たな事業領域への進出を加速させたい考えだ。加えて、ESG(環境・社会・ガバナンス)の重視やSDGs(持続可能な開発目標)に向けた取り組みが重視されるようになっていることから、自社の技術や商品によって経済的価値だけでなく社会的価値の向上につながる事業領域の開拓が不可欠との認識を示す。

 その一例として抗ウイルス加工「フルテクト」など挙げる。新型コロナウイルス禍によって衛生加工に対する社会的要請が高まっていることから、幅広い用途で採用が進む。「社会的価値の向上は単独ではできない。パートナーとの取り組みが重要になる」として、連携するユニチカトレーディングとの取り組みや、完全子会社化した新内外綿との連携を推進する。

 繊維事業は特に機能加工とサステイナビリティーを重視した事業運営に取り組む。フルテクトに加えて、燃焼時の二酸化炭素排出量を抑制する特殊ポリエステル繊維「オフコナノ」やサステイナブルな科学的農法で栽培する米綿使い「コットンUSA」などの拡販を進める。蚕の野生種の一つであるエリ蚕のシルクを使った「エリナチュレ」の実用化にも力を入れる。

 「紡績、織り・編み、染色加工、縫製といった多様な生産工程をグループに持ち、日本、インドネシア、ベトナムに生産背景を持つことが繊維事業の強み」とし、これらを有効に組み合わせることで海外販売の拡大を目指す。