クラレ/エンプラの繊維化推進/「ベクトラン」技術生かす

2021年08月31日 (火曜日)

 クラレは高強力ポリアリレート繊維「ベクトラン」で培った技術ノウハウを生かし、さまざまなエンジニアリングプラスック(エンプラ)の繊維化に取り組む。

 ベクトランは1990年に年産400トン規模で事業化した。2020年に30周年を迎えたが「ベクトランで培った技術ノウハウ、中でも高温下での溶融紡糸技術を生かして、さまざまなエンプラの繊維化も進める」(髙井庸善繊維資材事業部長)。

 既に自社開発のポリアミド系エンプラ「ジェネスタ」の繊維化に成功し、特殊用途で販売する。ジェネスタは同社が原料ポリマーから開発したもので、低吸水性、高耐熱性、高耐薬品性を持ち、寸法精度に優れる。

 自社だけではなく、他社のエンプラも活用する。PEI(ポリエーテルイミド)繊維「クラキス」もその一つで、サウジアラビアのサビック・グループが生産するエンプラのPEI「ウルテム」を繊維化したもの。難燃性(LOI値=限界酸素指数31)、低発煙性、染色可能などの特徴を生かし、航空機用の内装向けで商品開発を進める。

 ジェネスタ、クラキスだけでなく、今後も高温溶融紡糸技術を生かし、さまざまなエンプラを活用しながら新繊維の開発に取り組む。

〈「ベクトラン」増設へ〉

 一方、ベクトランはクラレ西条(愛媛県西条市)に置く年産千トン設備がフル生産中で需給タイトな状況にある。このため、22年度(22年12月期)からの新中期経営計画では増設を計画する。

 ベクトランはさまざまな高性能繊維の中でも「優れた低クリープ性、非吸湿性、極低温下での高強力物性、耐湿磨耗性が最大の特徴」。この特徴を生かし、光ファイバーケーブルのテンションメンバー(張力から光ファイバーを守る補強材)、各種ロープ、スリングベルトなど向けで輸出を中心(輸出比率は70~80%)に販売する。

 パソコン、スマートフォンの普及、5Gなど次世代移動通信の進展で光ファイバーは世界的に拡大するため、テンションメンバー向けでさらに増販を狙う。同分野も水分を吸わないベクトランの特徴が評価されるという。

 ロープ向けも米国輸出を中心に需要が旺盛で、海底油田などの海底資源用や、浮体式の洋上風力発電用のロープも低吸水性が生きる分野として市場拡大を見込む。ワイヤー代替としてスリングベルト向けの増販も期待する。