クローズアップ/東レACS 代表取締役社長 池田 幸一郎 氏/業容拡大の手段を模索

2021年08月31日 (火曜日)

 東レACSは、アパレルCADシステム「クレアコンポⅡ」を軸にした各種ツールを駆使し、生産現場の効率化を支えてきた。急速なデジタル化などアパレル生産に変革の波が押し寄せる中、同社の社長は池田幸一郎氏に今年6月、引き継がれた。池田社長に抱負や事業方針などを聞いた。

  ――まず抱負を。

 今は新型コロナウイルス禍で取引先への訪問もかなわず、社内と一部のお客さまとの対話により、可能な範囲で状況把握に努めているのが実情です。その中で分かったのが、当社の社員はモチベーションが非常に高いということ。「アパレル企業や縫製工場に貢献したい」という気持ちが強く、仕事にやりがいを持っています。その部分を大事にしながら、アパレル業界に恩返しをしていかなければならないと考えています。苦境にある今こそ、何をご提案できるのかということを追求していきたい。

  ――具体的な取り組みとは。

 このほどクレアコンポⅡの最新版であるver・7を発売しました。今回のバージョンアップでは、工業用パターン自動作成機能を搭載しました。ユーザーの要望に応えるため、毎年のようにバージョンアップをできているのは当社の強みの一つですが、顧客サポートも絶えず拡充していかなければなりません。個人向けのクラウドのユーザーが増えており、自宅で使っている方もしっかりとサポートしていく必要があります。アパレルCADの機能強化と顧客サポートの充実化は、当社のビジネスモデルの基盤であり続けます。

  ――課題は。

 アパレルCADについては既に高シェアを維持しており、新規の需要を開拓する余地は少ないため、新しい分野に目を向けて企業成長を目指さなければなりません。このことは前社長から引き継いだ課題です。現在、当社の縫製仕様書・帳票連携ソフト「サイフォームマジック」とDeep Valleyのアパレル生産管理ツール「アヤトリ」を連携させたサービスの提案を進めています。

 こうした新しいビジネスの展開につながる案件を、計画から実行へと着実に移していくのも重要な務めです。3次元(3D)技術導入に関するニーズへの対応の強化も急務です。

 海外については、アパレル生産のASEANシフトにどう関わっていくか、社内で議論を交わしています。

  ――アパレル生産を取り巻く環境が激変しています。

 生産現場を熟知した人材が豊富にそろっているのも当社の強みであり、実際にこれまで各取引先の実情に即した提案で信頼を獲得してきました。今後は事業発展のため、経営層への提案も視野に入れていきたい。サイフォームマジックが顧客の基幹システムと連携できるメリットなどを訴求すれば、可能性も広がっていくと思います。