タイ・東レグループ/ポートフォリオ改革加速/自動車関連が業績回復をリード

2021年09月06日 (月曜日)

 タイの東レグループは、新型コロナウイルス禍による打撃からの回復に向けて生産品種の転換によるポートフォリオ改革を加速させている。2021年度上半期(4~9月)は自動車関連事業が業績回復をリードし、苦戦する短繊維織物事業も一部で改革の成果が出ている。在タイ国東レ代表で、トーレ・インダストリーズ〈タイランド〉の松村正英社長は「短繊維織物事業の再構築を今期で完遂し、新商流の開拓などに取り組む」と話す。

 松村代表によると、タイ東レグループの21年上半期業績は売上高が前年同期比50%増で推移しており、19年度の水準にまで回復する見通しとなった。売上高回復をリードするのが自動車関連事業。合繊長繊維製造のタイ・トーレ・シンセティクス(TTS)はエアバッグ原糸やシートベルト原糸、ブレーキホース用コードが好調。紡織加工のトーレ・テキスタイルズ〈タイランド〉(TTT)もエアバッグ基布がフル生産となっている。世界的に自動車生産の回復が寄与した。

 一方、衣料用途は回復が鈍い。TTSのナイロン長繊維はタイ国内のインバウンド需要に向けたインナー用途が主力のため、新型コロナ禍による観光産業への打撃の影響を強く受けた。TTTのポリエステル綿混織物やポリエステル短繊維織物もシャツ地など定番品の需要減退が続いている。

 利益の回復は十分ではない。自動車関連は原料のナイロン66が急騰。販売価格は粗原料価格に連動して改定する仕組みだが、「原料価格の上昇に販売価格改定のタイミングが追い付かず、期ズレによる採算低下となった」。短繊維織物も綿花など原料高騰の価格転嫁が遅れている。

 自動車関連は下半期から販売価格の改定が進むことから採算の改善を見込む。このため下半期はTTTの短繊維織物事業の再構築に重点的に取り組む。「当社の開発力・企画力が認められない商品からは手を引く」として、定番シャツ地などからユニフォーム地やスポーツ素材など高付加価値品に転換するポートフォリオ改革を加速する。

 そのために新規商流の開拓を進める。既に日本や欧米の有力ブランドとの取引も始まった。これをさらに拡大するためにTTSが生産する原糸の細繊度化やハイカウント化など開発を強化する。

 そのほかASEAN域内やインド市場の開拓にも取り組む。特にインド市場は民族衣装向けポリエステル短繊維織物やゴム資材向けコードなどの拡販に取り組む。原糸からテキスタイルまでタイで一貫生産することを生かし、リードタイム短縮などで競争力強化に取り組む。

 ここに来てタイでは新型コロナ感染の拡大が大きな懸念材料となっているが、松村代表は「感染対策に全力を挙げながら、これら施策で下半期は利益を回復させる」と話す。