シキボウ/分野ボーダレス化に対応/ベトナム、台湾に拠点検討

2021年09月07日 (火曜日)

 シキボウの繊維部門は2021年度下半期(21年10月~22年3月)の重点課題として商材の用途や提案分野がボーダレス化している状況への対応を進め、需要の掘り起こしを進める。新型コロナウイルス禍で計画が遅れている海外戦略も再起動させる。そのためにベトナムと台湾に新たな拠点を立ち上げることを検討する。

 加藤守上席執行役員繊維部門長によると、21年度上半期(4~9月)は4~6月こそワクチン接種進展による新型コロナ禍収束への期待などから原糸やユニフォーム地、寝装を中心に販売は比較的堅調に推移した。ところが「7月以降はデルタ株による感染再拡大で市場のマインドが明らかに悪化してきた」と指摘する。綿花や染料・薬剤の価格上昇によるコストアップも利益面の回復を遅らせる。

 このため下半期は引き続き抗ウイルス加工など衛生加工を提案の柱の一つに置く。「昨年のような特需こそなくなったが、マスクや寝装でリピート受注が続いている。一定の需要が定着した」と指摘。ファッション分野でも採用されるなど「用途・分野のボーダレス化が進んでいる」。

 このため、10月1日付で繊維部門の営業部署の機構改革を実施する。原糸、製品などを担当していた営業第一部とユニフォームや寝装などを担当していた営業第二部を統合し、繊維営業部に一本化する。衛生加工や機能加工を分野横断で提案するほか、ユニフォームなどにもファッション素材のノウハウを投入する。

 環境配慮素材にも力を入れる。燃焼時の二酸化炭素排出量を削減する特殊ポリエステル繊維「オフコナノ」は量産体制が整い、具体的な成約も始まった。サステイナブルな科学的農法で栽培された米綿を使った「コットンUSA」認証品と合わせて、他の機能も複合することで差別化を進める。完全子会社化した新内外綿や、協力関係を結んだユニチカトレーディングとの連携も進め、12月には合同展も予定する。

 海外戦略も再起動させる。インドネシア子会社のメルテックス、ベトナムのホーチミン事務所、新内外綿のタイ子会社であるJPボスコが連携し、海外生産・販売の拡大を目指す。ベトナムでの営業活動強化のため、ホーチミン事務所を現地法人化することを検討する。合繊を中心とした素材調達の拡充のため台湾に現地法人を立ち上げることも検討する。