東レ「シベラス」/原料一貫の強み生かす/グループ企業とも連携

2021年09月08日 (水曜日)

 東レは液晶ポリエステル繊維(高強力ポリアリレート繊維)「シベラス」で、原料からの一貫生産の強みを生かしながら需要家との共同開発を進め、中長期での事業拡大を目指す。

 シベラスはエンジニアリングプラスチックである、液晶ポリエステル樹脂を繊維化したもの。同社は液晶ポリエステル樹脂も製造販売する原料一貫メーカーだ。シベラスは2017年4月に岡崎工場(愛知県岡崎市)に年産100トン弱(公称)の製造設備を導入し、19年度(20年3月期)から本格販売を始めた。

 各種ロープやスリングベルト、産業用ロボット向け保護材などに使われているが、倉本将秀産業資材事業部長は「現状は用途開拓の段階。しかし、中長期的には洋上発電用、海底資源用などの設備に使うワイヤー代替や、これらの設備に横付けする特殊船舶用ホーサー(係留索)などの市場拡大が期待できる」とする。

 これらを本格販売につなげるためにも原料一貫生産の強みを生かした需要家との共同開発に力を入れる考えで、シベラス専任の開発担当も置く。

 パラ系アラミド繊維「ケブラー」を製造販売する東レ・デュポン(東京都中央区)やメタ系アラミド長・短繊維を製造販売する、韓国子会社のトーレ・アドバンスド・マテリアルズ・コリアとも連携。アラミド繊維などとの複合テキスタイルの開発も進める。販売は現在、国内にとどまるが、商事子会社の東レインターナショナルの海外拠点と連携して欧米、中国市場の開拓にも取り組む。

〈グリーン水素で独企業とパートナーシップ/東レ〉

 東レは6日、発電や送電事業を行うシーメンス・エナジー(ドイツ)とPEM型水電解を用いたグリーン水素製造技術の創出を図る「戦略的パートナーシップの構築」に係る基本合意書を締結した。両社の水素・燃料電池関連技術・事業などを生かし、世界各国・地域での再生エネルギー由来グリーン水素の導入拡大などを推進する。

 再生可能エネルギーなど由来の電力を用いて水の電気分解からグリーン水素を製造。得られたグリーン水素を大規模発電などの電力用途に加えて、熱や輸送燃料、産業用途で活用するセクターカップリングによって、脱炭素・カーボンニュートラルな社会の実現、地球環境の課題解決に貢献する。

 東レは独自の「炭化水素系電解質膜」をシーメンス・エナジーに供給し、両社が協力して、シーメンス・エナジーのPEM型大型水電解スタック・装置「Elyzer」への搭載・実証・事業化を推進する。同時にグリーン水素の利活用分野への協業拡大についても検討する。

 今後、成長が予想される市場獲得に向けて両社のグローバルネットワークを生かして世界中の顧客に最適なソリューションを提供する。東レの日覺昭廣社長は「(パートナーシップの)期間は定めていない。技術創出・実証・事業化と並行してグローバル展開を行うため時間はかかる」との見解を示した。

 東レとシーメンス・エナジー日本法人のシーメンス・エナジーは、山梨県企業局や東京電力ホールディングスなど8者共同のグリーンイノベーション基金事業「再エネ等由来の電力を活用した水電解による水素製造プロジェクト」を推進している。同事業は戦略的パートナーシップ構築の一環。