東レ ウルトラスエード事業/19年度の業績超えに手応え/ブランド向上に新サイト開設

2021年09月10日 (金曜日)

 東レのウルトラスエード事業部は新型コロナウイルス禍で2020年度(21年3月期)は苦戦を強いられたが、既に主力の自動車内装材を中心に販売量を回復させており、21年度は「19年度を上回る業績を確保できる」(安東克彦ウルトラスエード事業部長)との見通しを示す。

 ファッションや雑貨向けはいまだ復調に至っていないものの、20年度上半期の苦戦からは改善しており、自動車内装材やインテリア向けの販売は好調に転じている。

 ウルトラスエード事業は19年9月に増設を実施し、従来比約60%増となる年産1千万平方メートル体制となった。当初は22年度の上半期末でフル操業させる計画だったが、自動車内装材で新規採用が相次いでいるほか、インテリア向けの販売が順調に拡大しているため「1年半ほど前倒しでフル操業させられる」と言う。

 インテリア用途では「ウルトラスエード・ヌー」が引き合いを集めており、高級インテリア・家具を展開するドリームベッド(広島市)のソファー、クッションやマットレスの加地(島根県奥出雲町)のクッションに採用された。

 ウルトラスエード・ヌーは、本革に近い質感や耐久性があり、アニリンレザー調の表面感をファッションや靴、バッグ向けにも売り込んでいる。自動車メーカーへの企画提案にも取り組んでいる。

 新たに部分バイオポリエステル使いで「ウルトラスエードTS」も開発した。天然皮革の代替を目指し、動物由来素材を避けるビーガン(完全菜食で、動物由来製品を使用しない人たち)のニーズにも応えていく。

 厚みが1・47ミリと「ウルトラスエード」としては多少、厚めに設計。天然皮革にはない軽さ、水に強い物性をファッションや靴、雑貨向けに打ち出しており、21秋冬から製品が店頭に並ぶ。

 ウルトラスエードは昨年、事業化50周年を迎えた。新型コロナ禍を踏まえイベントなどは開催しないが、代わりに顧客のインタビュー動画で構成する特別サイトを立ち上げ、ウルトラスエードのブランド価値の向上に取り組む。21年度中にデザイナーや家具職人など4~5人の動画をアップする。