クローズアップ/伊藤忠商事 アジア・大洋州繊維グループ長兼伊藤忠テキスタイル・プロミネント〈アジア〉社長 森田 洋 氏/内販、欧米中向けに商機

2021年09月15日 (水曜日)

 新型コロナウイルスの変異株により混乱を極めるASEAN地域。各国でロックダウン(都市封鎖)、あるいは同等の移動制限措置が取られ、多くの工場が稼働を止めている。対日縫製品のサプライチェーンも変化を余儀なくされる。伊藤忠商事アジア・大洋州繊維グループ長兼伊藤忠テキスタイル・プロミネント〈アジア〉(IPA)社長、森田洋氏にベトナムの現状と今後を聞いた。

  ――香港に2回の赴任歴があり、今回のベトナムも3回目だそうですが、現状のベトナムをどう見ますか。

 4月の赴任以来、一度も協力工場に行けていません。新型コロナ感染拡大によるものです。私含め社員も全員自宅待機中です(9月上旬時点)。今後の成長性を考えて拠点を香港からベトナムに移したのですが、思うように動けないのがもどかしいですね。

  ――新型コロナ禍とは別に、今後のベトナムの成長についてはどうお考えですか。

 現在はロックダウンによる工場停止の影響が大きく出荷も滞っています。しかし、下半期で取り戻したいですし、可能だとみています。当社は対日だけでなく欧米向けも手掛けていますが、第1四半期(2021年4~6月)は欧米向けが急拡大していました。新型コロナ禍による発注減からの反動です。

 この需要にベトナムの成長戦略が描けます。欧米ブランドは今、急ピッチで脱・中国を進めています。同時に、中国や台湾の繊維企業もベトナムで工場建設を進めています。まだまだベトナムへの生産移管の流れは強まりそうです。

 内販も拡大しています。数年前から専任チームを設けて現地の大手小売りやブランドへの提案を強めてきたことが実っています。資本提携する国営繊維公団ビナテックスの存在も大きいし、モノ作り強化のために2年前に立ち上げたアセアンR&Dセンターの存在も大きい。サステイナブル機運の高まりも、再生ポリエステル繊維「レニュー」など各種環境配慮商材をそろえる当社にとって追い風です。

  ――今後の展望、展開を。

 5年前にベトナムに赴任した時と比べて繊維産業全体も当社の事業規模も大きく拡大しています。今後もベトナム生産の質を高めつつ量を拡大していきます。サステイナブルは必須のキーワードになります。衣料品だけでなく生活資材や産業資材も拡大対象です。

 アジアの繊維大国である中国とベトナムは良好な関係とは言えません。水と油と言ってもいい。その間に日系の商社が入ることで有効な橋になれる。対日、対欧米だけでなく対中でも成長戦略は描けます。脱・中国の受け皿としてのサプライチェーン、中国を意識したサプライチェーンの二つを持っておくことが事業拡大のポイントになると考えています。