不織布新書21秋(3)/三菱製紙/フロイデンベルグ・スパンウェブ・ジャパン/クラレクラフレックス/旭化成アドバンス

2021年09月29日 (水曜日)

〈三菱製紙/MBの生産・販売開始/高砂工場に設備導入〉

 紙やパルプ、写真感光材などを製造・販売する三菱製紙が、メルトブロー不織布(MB)の展開を始めた。これまでも湿式不織布の生産は行ってきたが、MBをはじめとする乾式不織布の生産は初めて。兵庫県高砂市の高砂工場に設備を導入し、このほど生産を開始した。

 MBの生産設備は、経済産業省の「サプライチェーン対策のための国内投資促進事業費補助金」に採択され、不織布マスク生産設備と共に設置した。設備投資額は約5億円。MBの生産能力はマスク用フィルターで換算すると、年間約2億枚になる。

 自社製不織布マスクのフィルターに活用するほか、マスク市場に新規参入した企業に販売する。既に提案を済ませ、「採用も決まった」と言う。そのほかHEPAフィルターをはじめとするエアフィルターや液体フィルターの需要も取り込む。MB販売で2023年3月期に黒字化を目指す。

 同社の不織布事業はこれまで湿式不織布の分野が中心で、主にクッションフロアの基材や水処理膜基材、バッテリーセパレータなどを生産してきた。乾式不織布では空気清浄機用抗ウイルス機能性フィルターを製造・販売するなど、機能性ろ材の技術的知見を蓄積している。

 不織布マスクは今年1月に製造・販売をスタートしている。

〈フロイデンベルグ・スパンウェブ・ジャパン/環境配慮型で拡販/「コルバック」「エンカ」打ち出す〉

 フロイデンベルグ・スパンウェブ・ジャパンは既に新型コロナウイルス禍に伴う苦戦から業績を回復させており、2021年1~6月期の販売量は前年同期比5%増となった。

 昨年、ドイツの本社が台湾工場を年産2万トンから同3万1千トンへと増設。5月から操業を開始しており、新工場は既にフル操業状態を迎えていると言う。

 21年から新しい中期3カ年計画を立ち上げており、環境を意識した商品群の拡販、東南アジアに進出した日系シューズメーカーへの販促を強化し業績拡大を目指す。

 既に再生ポリエステルで商品化した原反で幅広いラインアップを構えており、欧米のスポーツメガブランド向けの販売を伸ばしているほか、50%混が中心の日系スポーツアパレルとの取り組みを80%混、100%使いにも広げる。

 先にドイツの本社が英ロー&ボナー社を買収したことでポリエステル・ナイロンのスパンボンド「コルバック」がラインアップに加わり、10月から全ての用途を「うちが担当する」ことになった。

 中計では、このコルバックと欧州での販売が先行する「エンカ」の販売を上乗せし、全体の業績拡大につなげる。

 コルバックでは、ガラス繊維で強度を向上させた原反を建材向けに投入。エンカでは、これから市場調査に着手し、結露防止材などで新規販路を掘り起こす。

〈クラレクラフレックス/複合品の開発推進/エコに配慮した開発も〉

 クラレクラフレックスは2020年(1~12月)、新型コロナ禍に伴いマスクや除菌シート向けの販売を大きく伸ばしたものの、「カウンタークロス」やコスメティック関連で苦戦を強いられ、トータルの販売量は前年割れにとどまった。

 21年はマスク向けで「原反の供給責任をしっかり果たしていく」とともに、新規用途の掘り起こしを改めて強化し、前年を上回る業績確保を計画する。

 メルトブロー不織布を既に年産2700トンに増設し、年末から量産を開始。今回の増設に伴いマスクフィルターも生産できる設備を導入した。既にフル操業へと引き上げており、現在は採算の高いアイテムへの品種転換に取り組んでいる。

 カウンタークロスでは、いまだに回復の兆しが見えてこないものの、アフターコロナを見据え反転に向けた準備に余念がない。

 これまでメルトブロー不織布を西条工場で生産してきた。複合品の開発に取り組んでいくため、今回の設備投資では岡山工場に新系列を導入。岡山工場で生産するスパンレース不織布、カウンタークロスなどとの複合品開発を改めて推進し、新規原反で新規用途を掘り起こす。

 クラレグループは22年から中期5カ年計画をスタートさせる。クラレクラフレックスは環境を切り口とする経営目標を掲げ、環境配慮型素材の開発に乗り出し業績拡大を目指す。

〈旭化成アドバンス/繊維資材で過去最高計画/「ラスタン」不織布を自動車に〉

 旭化成アドバンスの繊維資材事業部は2021年度、「ラスタン」や「フュージョン」の販売を伸ばすとともに、縫製にも参入したエアバッグ事業を拡大し、21年度も売上高で過去最高業績を計画する。

 20年度は建設市況の低迷で、好調だった耐炎繊維「ラスタン」の販売は伸び悩みに転じたが、下半期から回復し前年実績をクリア。ある家電メーカーの空気清浄機(フィルター)に採用された3次元立体編み物「フュージョン」の販売も大きく伸びた。

 不織布関連では、マスク向けの不織布、耳ひも、ノーズワイヤーをセットで販売する取り組みが急増したほか、高密度ポリエチレン不織布「タイベック」による防護服の販売が順調だった。

 21年度は、新型コロナ禍関連の特需が失われるため利益が伸び悩むものの、自動車関連で新規商材の販売を立ち上げる増収効果を見込んでおり、引き続き売上高で過去最高の更新を計画する。

 ラスタンで、海外の加工場とも連携し不織布の開発を進めており、家電や自動車向けでスペックインを急ぐ。

 同社は2次製品の販売にも乗り出しており、旭化成のポリエステルスパンボンド「エルタス」で商品化したラミネート不要の印刷基材「ペクトリー」の販促に取り組んでいる。レーザープリンターで手軽に印刷ができるほか、耐候性、耐水性に優れているのが特徴。