伊藤忠・諸藤雅浩繊維カンパニープレジデント/全社で通期黒字めざす/環境配慮商材拡販に自信

2021年12月22日 (水曜日)

 伊藤忠商事の諸藤雅浩常務執行役員・繊維カンパニープレジデントは21日、大阪市北区の大阪本社で会見し、今期方針に掲げる利益重視の「低重心経営」の進捗(しんちょく)に手応えを示した。前期(2021年3月期)は事業会社の赤字社数も多かったが、今上半期はかなり減少、「通期で全社の黒字を目指す」。

 繊維カンパニーの重点商材である環境配慮素材については、古くから取り組むインド産オーガニックコットンの供給拡大を「大々的に推進する」とともに、再生ポリエステル「レニュー」やフィンランドのメッツァファイバーと共同開発したリヨセル繊維「クウラ」、100%バイオマス由来の皮革代替素材「ミラム」などを今後の拡販に期待できる商材として挙げた。

 クウラに関しては業務資本提携するタイクラボウで生地にし、繊維公団ビナテックスと提携するベトナムで縫製品にして全世界に販売する体制を構想、2年後の本格展開を予定する。

 ブランド事業では「ハンティングワールド」「レスポートサック」「コンバース」などで環境配慮の取り組みが進展していることを強調した。

 赤字会社の減少については低採算店舗の閉鎖、在庫圧縮などが進み、「利益を出せる体制が構築できた」としている。

 会見では各部門長が今期の進捗と来期の方針を述べた。コメントは以下の通り。

【ファッションアパレル部門長・中西英雄氏】

来期は攻めの姿勢

 前期は全てのセグメントの業績が落ち込んだ。今上半期は19年度には届かないものの市況はやや戻った。原料高、物流経費高騰、ベトナムのロックダウン(都市封鎖)など事業環境は厳しさが続くが、なんとか計画を達成したい。

 来期は新規投資や事業拡大を狙う。ファミリーマートとの「コンビニエンスウエアプロジェクト」は好調に推移している。

 レニューの取り扱い量は昨年比で2倍に拡大と順調。23年度には今年の3倍を計画している。

 環境配慮は原料、生地、製品のいずれでも取り組むもので、そのバリューチェーン構築を急ぐ。

【ブランドマーケティング第一部門長・北島義典氏】

マーケットインのSDGs

 昨年よりはましなものの百貨店向けブランドを中心に上半期も苦戦を強いられた。10月以降のリベンジ消費もまだまだ本格化していない。アウトドア、ゴルフ、肌着、靴下、ルームウエアなどは好調を持続している。10月からスーツ販売が拡大したことも今後に向けた好材料と言える。

 今後はマーケットインに基づいたSDGs(持続可能な開発目標)対応が重要になる。コンバースでリペア事業をスタートしたのもその一環だ。

 来期は既存ブランドに磨きをかけて足元を固める。コロネット、ジョイックスコーポレーション、コンバースジャパンという三つの事業会社で収益強化を図る。ネットとリアル店舗の在庫の一元化も進める。海外市場開拓にも臨む。

【執行役員ブランドマーケティング第二部門長・武内秀人氏】

各ブランドで益率向上狙う

 ブランド事業の今期は4月からのロケットスタートに期待していたが、結果は苦しいものだった。市況が悪い中、在庫の圧縮など低重心経営の実践で乗り切った。

 「レリアン」の売り上げが前年比で10月7%増、11月15%増、12月13%増、レスポートサックジャパンの売り上げが10月24%増、11月13%増、12月33%増と好調だったことは好材料。リブランディング中の「ランバン」や丸紅フットウエアと展開する「フィラ」も含め、看板ブランドの利益率向上を目指したい。

 繊維資材・ライフスタイル事業は原料高など厳しい情勢だが、好調な衛材、自動車関連だけでなく各種資材でしっかり利益を出していく。