特別インタビュー 東レ 日覺 昭廣 社長(前)/懸念残すも経済は上向く/RCEPには期待感

2022年01月04日 (火曜日)

 新型コロナウイルス禍や米中問題が続くなど、先行きに不透明感を残したまま迎えた2022年。乗り越えなければならない課題は多いが、東レの日覺昭廣社長は「世界経済は上向く」と予想する。課題の一つとして原燃料・原材料価格の高止まりを上げ、日本企業にとって「価格転嫁や高付加価値化が不可欠」と説く。(桃井直人)

  ――2022年はどのような年になるとみていますか。

 昨年は、一昨年に続き、新型コロナ感染症に振り回されたと言えます。ベトナムなどではロックダウン(都市封鎖)による工場の操業停止といった措置が取られました。しかし、ワクチンの接種が進むなど、新型コロナへの対処方法が分かるようになるにつれ、経済活動も世界的に戻ってきました。

 今年もこの流れの中にあり、世界経済は上向くと予想しています。一度軌道に乗れば、思っている以上の速さで回復が進展する可能性もあるのではないかと期待しています。とはいえ、昨年、一昨年が停滞していたことを考えると元に戻るだけでは不十分です。回復かつ成長が必要になります。

  ――懸念材料はないのでしょうか。

 原燃料・原材料をはじめ、ほとんどの物の価格が上昇しています。コンテナ問題なども解決していません。そのような状況が続いている中で景気が良くなっていった場合、原燃料・原材料などの価格が高止まりすることも考えられます。これは大きな懸念と言えるでしょう。

 米国と中国の摩擦も心配の種ですが、実際には両国間の貿易額は伸びています。米国にとって中国は重要な生産地で、中国にとって米国は不可欠な消費地です。このため米中デカップリングはないと思います。ただし、部分的な摩擦は避けられず、何が標的にされ、どのような対応が取られるかについては注視が必要です。

  ――1日にRCEP(地域的な包括的経済連携)協定が発効しました。

 2月には韓国でも協定が発効し、日本と中国、韓国で初めて自由貿易が始まります。このインパクトは大きいと感じています。関税撤廃の効果が実際に出てくるのは数年先になりますが、良い方向に進んでいくという期待感があります。ASEAN地域でのモノ作りにも好影響を与えるでしょう。

  ――繊維業界の22年をどのようにみていますか。

 K字回復という言葉がありますが、これは急回復するものと回復のペースが緩慢なものと二極化する状況を指します。繊維、特に衣料品は残念ながら後者に当たります。状況は厳しいですが、原燃料・原材料価格が上昇する中、繊維に限ったことではありませんが、価格転嫁と高付加価値化は必要不可欠です。

  ――繊維は東レにとっても重要な事業です。

 繊維事業ではスパンボンド不織布が堅調なほか、エアバッグの販売も、半導体不足による自動車生産台数減の影響はありますが、伸びています。衣料用については再生ポリエステルやバイオ由来ポリエステルなどのサステイナビリティー素材を軸に拡販を狙います。