特集 事業戦略(7)/ダイワボウレーヨン/「環境」前面に打ち出す/リサイクル技術開発にも参画/社長 福嶋 一成 氏

2022年03月03日 (木曜日)

 世界的にサステイナビリティーへの要求が強まる中、レーヨンなど再生セルロース繊維への注目が一段と高まってきた。こうした流れを追い風とすべく、ダイワボウレーヨンは、レーヨンの環境配慮素材としての側面を前面に打ち出す。新たにカーボンオフセット制度を導入し、カーボンニュートラルレーヨンの販売も開始する。海外の研究機関とも連携し、繊維リサイクル技術開発にも参画した。

  ――2021年度(22年3月期)をここまで振り返ると。

 20年度からは業績も回復しています。原料や燃料の高騰で利益が圧迫される中、なんとか持ちこたえているといった状況でしょうか。値上げも実施しており、ある程度は受け入れられています。

 防炎レーヨンの対米輸出は好調です。米国経済が回復傾向にあることに加え、防炎素材の分野で「脱合繊」「脱ガラス繊維」の流れが強まっていることが背景にあります。そのほか、中国向けの不織布原綿も需要が回復してきました。

 国内も不織布向けは昨年度の好調の反動がありますが悪くはありません。一方、国内の紡績用途はアパレル向けを中心に回復が遅れています。ただ、機能レーヨンはインターネット通販などで販売される商品向けに採用が増えています。レーヨンの生分解性に注目して採用するところも増えています。

  ――22年度に向けての重点戦略は。

 引き続き「環境」を前面に打ち出します。レーヨンは木材パルプを原料とすることから生分解性が特徴ですが、加えて今後は二酸化炭素排出量削減が大きなテーマになってきます。そこで新たにカーボンオフセット制度を導入しました。当社はこれまでも益田工場(島根県益田市)を中心にレーヨン製造工程での二酸化炭素排出量削減に取り組み、対13年比で約30%の削減を実現しています。実際の排出削減に加えてカーボンオフセット制度によるオフセット(相殺)で、排出量をさらに削減します。これを利用し、4月からはカーボンオフセットを組み込んだカーボンニュートラルレーヨンの販売も開始しました。

 カーボンニュートラルに加えて、リサイクル技術も確立することが目標です。既にデニムなど使用済み綿製品を原料に再利用したリサイクルレーヨン「リコビス」を商品化しています。H&M財団と香港繊維アパレル研究所(HKRITA)が進めているポリエステル綿混生地の分離・回収システムの研究開発にも参画しています。既に分離・回収技術が確立されており、回収したポリエステルはマテリアルリサイクルやケミカルリサイクルに利用できますが、問題はコットンです。パウダー状で回収されるため再利用の用途開発が課題でしたが、これをレーヨンに練り込む技術を当社が開発しました。

 KHRITAと共同でリサイクルコットンパウダー練り込みレーヨンを「RDセル」として商標登録申請し、3月16日から20日までスイス・ジュネーブで開催されるジュネーブ国際発明展でも披露します。現在は練り込み技術の応用によるリサイクルですが、さらにコットンパウダーを溶解してレーヨンに再生する開発も進めています。一説には衣料品全体の約60%がポリエステル・綿混使いだといわれています。このリサイクル技術が確立すれば、非常に大きなインパクトがあるでしょう。

  ――既存用途については。

 紡績用途は機能性をどれだけ付与できるかがポイントです。インターネット通販などの拡大は追い風。消費者に訴求できる材料として機能性への関心が高まりました。これは新型コロナウイルス禍以降の大きな変化です。特に健康やリカバリー(休養)機能などが有力な切り口になります。不織布用途は日本のメーカーとして高品質な商品の提供や供給責任をしっかりと果たすことでシェアを高めていくことが重要です。市場としては今後も拡大していきますし、用途も広がり、衛生材料以外の産業用途も増えていくでしょう。EU(欧州連合)内では一部用途で使い捨てプラスチック製品が原則として流通禁止となるなど世界的に脱プラスチックの流れが強まっていることが背景にあります。

 ですから、大きな流れとして再生セルロース繊維の需要は今後も拡大するはずです。その需要をどれだけ捉えることができるか。そのためにも生分解性や二酸化炭素排出量削減、そしてリサイクル技術の実用化を進めることでレーヨンの環境配慮素材としての強みを一段と打ち出すことが重要になります。