環境特集(6)/わが社の環境戦略/レンチング/東洋紡せんい/ダイワボウレーヨン/小松マテーレ

2022年06月27日 (月曜日)

〈持続可能性の第一人者/発売から30周年迎える/レンチング〉

 オーストリア・レンチングの精製セルロース繊維「テンセル」リヨセルは2022年、発売から30周年を迎えた。13~15日にはオーストリアの本社で記念式典も開いた。

 この30年でテンセルリヨセルに対する世界的な評価は大きく変わった。当初は風合いなど素材特性が評価されたテンセルリヨセルだが、昨今はサステイナビリティーに対応した繊維の第一人者として、世界的にも認知され、需要を拡大する。それに伴い、生産能力も増強。今年、タイに年産10万㌧のテンセルリヨセル新工場を立ち上げた。

 日本でもサステイナブル繊維として地位が高まる。アパレルなどからの問い合わせも増加。ブランドとの共同プロモーションも展開する。今後もブランディングに重点を置き、小売りなど川下企業や消費者に対する啓蒙活動に重点を置く。消費者に向けてはインスタグラムなど会員制交流サイト(SNS)を通じてダイレクト訴求を行う。

 日本ではこれまで同様、商品開発、用途開拓に向けても取り組む。テンセルリヨセルと生分解性ポリエステルの混紡糸を使ったインテリアやアウター用向けのハイパイルもその一つ。21~23日、ドイツ・フランクフルトで開催された「ハイムテキスタイル」でも提案した。

〈環境対応の総合ブランド展開/新開発品もラインアップに/小松マテーレ〉

 小松マテーレは、グループのサステイナブル素材や製品の総合ブランド「mateReco」(マテレコ)を新たに立ち上げた。独自の審査基準をクリアした素材だけが冠することができ、現在展開している染色・加工や生地、製品の3~4割が当てはまる。適合品を順次増やす。

 同社はSDGs(持続可能な開発目標)への対応のため「小松マテーレ・サステナビリティ・ビジョン」を策定し、環境経営の理念を体系化した。新総合ブランドの立ち上げもその一環で、社名の「matere」と「eco」を組み合わせた。新技術・新素材を生み出し続けるという思いから、大文字の「R」を採用した。

 新開発品の「ダントツ撥水CZ」なども加わる。非フッ素系撥水(はっすい)加工だが、従来の非フッ素系と比べて高い水切れ性を発揮し、高耐久性も備える。ニット生地向けの水系薄膜コーティング加工に透湿性をプラスした「エアシャットMP」なども新素材だ。

 染色加工時の環境負荷を低減する「WS」、水を使用しない着色技術で環境に優しい「モナリザ」などもそろう。2030年までにグループ売上高の50%以上を同ブランドで占めたいとしている。

〈レーヨンの持続可能性/先進技術開発にも積極参画/ダイワボウレーヨン〉

 サステイナブル素材としてレーヨンなど再生セルロース繊維への注目度が一段と高まった。国内唯一のレーヨンメーカーであるダイワボウレーヨンは、先進技術開発にも積極的に参画し、サステイナブル素材としてのレーヨンの可能性を追求する。

 同社はこれまでもさまざまな環境配慮型レーヨンを開発してきた。海水中での生分解性を確認した「エコロナ」はその一つであり、引き合いが増加している。そのほかにも二酸化炭素排出権取引を組み込んだカーボンニュートラルレーヨンや、合繊複合でも一浴染めを可能にすることで染色時の環境負荷を低減するカチオン可染レーヨンを開発した。撥水(はっすい)機能を付与することでプラスチック代替も狙える「エコリペラス」も注目の商材だ。

 H&M財団の支援でポリエステル綿混素材の分離・リサイクル技術開発に取り組む香港繊維アパレル研究所とも連携し、回収した綿パルプを原料として再利用したレーヨン「RDセル」も開発した。3月に「ジュネーブ国際発明展」に出品し銀賞を受賞した。

 廃棄繊維をリサイクルしてパルプを製造しているスウェーデンのリニューセル社とも原料供給に関する基本合意書を締結した。リサイクルレーヨン「リコビス」の量産が可能となった。

〈綿でFRPを開発/かなりの手応えを示す/東洋紡せんい〉

 東洋紡せんいのマテリアル事業部が、綿を混ぜて全体を強化した繊維強化プラスチック(FRP)の開発に取り組んでいる。

 5月11~13日にインテックス大阪で開催された「第2回〈関西〉サステナブルマテリアル展」に出展。同展には1万7771人が来場し、同社のブースには千人弱が訪れたと言う。

 同展では、天然繊維を複合した強化プラスチック、産業資材用シート、改質わたの3タイプをPRした。

 紡績工場や縫製工場で発生した端材を生分解性樹脂に混ぜてプラスチック「アップトゥサイクル」を開発。提携する樹脂メーカーで商品化したフレークを出展した。

 綿と酢酸セルロース樹脂を複合したバージンコットンプラスチック、プレス成形向けのプラスチック・コットンFRTP(熱可塑性樹脂を用いた繊維強化プラスチック)も構える。

 シートでは、サイジングした経糸を糊(のり)付けして生分解性樹脂による不織布と積層させた「ウェイシート」を出展。吸湿発熱「ホットナチュレ」、除菌「リフレス」、消臭「デオドラン」といった綿やレーヨンの改質わたもラインアップする。

 出展を終え、天然由来の素材を使ったFRPに「かなりのニーズがあることが分かった」との認識を示す。