繊維ニュース

shoichi ウールのリサイクル本格化

2024年04月30日 (火曜日)

 アパレル商品の在庫処分サービスを展開するshoichi(大阪市中央区)は、ウールのリサイクル事業を本格化する。尾州の反毛業や紡績、泉州のニットメーカーと連携し、廃棄されるウール製品を集め、一度糸の状態に戻してから再び編み上げたニット製品を開発。アパレルメーカーや小売店への供給を目指す。

 同社は在庫処分サービスで買い取る商品以外にも「捨てられている商品がたくさんあり、何とかしたいと考えていた」(山本昌一代表取締役CEO)。さらに尾州産地の工場が反毛から紡績工程まで高い技術力を持つことに感銘を受け、5年前にリサイクルウールを使ったニット製品を開発。クラウドファンディングを通じて販売するとともに、品質の安定や技術的な改善に取り組んできた。

 反毛はサンリード(愛知県一宮市)、紡績は大和紡績(同)、編み立てや縫製はアイソトープ(大阪府泉大津市)が担う。100%リサイクル素材にこだわったことで、製品化に至るまで「ぶつかる壁が何度かあった」(デザイナーの出口雅一氏)。

 回収する製品をウール80%以上含まれるものに限定することで、風合いや品質を安定化。それでも反毛糸は強撚する必要からねじれやすく、滑りも悪くなり、繊維長が短く切れやすかった。編み立ても斜向や切れやすい傾向があった。そこで天竺編みからガーター編みにして斜向を抑えるとともに、編み機に反毛糸を通すと目落ちしやすくなることから蜜蝋(みつろう)によって糸を滑りやすくするなどの工夫を重ねた。

 ウール製品の回収は在庫処分品だけでなく、取引先の店頭で回収ボックスを設置するなどで集めた中古品にまで拡大。人工知能(AI)の活用で廃棄されるウール製品の仕分けにもめどが付いてきたことから、事業化に至った。

 環境負荷に考慮し染色をしていない15毛番手を使う。AIツールを活用することで廃棄されるウール製品のブランド、カラー、素材混合率によって、仕分けを効率化。色ごとに仕分けし、わた状にした繊維の色の調合によって、染色しなくても豊富なカラーバリエーションをそろえる。

 今年2月から自社サイトでリサイクルウール使いのプルオーバーやワンピースといった製品を販売したところ、わずか1カ月で完売した。同商品ではリサイクルナイロンを20%混紡。ナイロンを15~20%混紡した方が物性面で安定すると言う。

 今後に向けてベーシックな色しか選べないものの、カシミヤのリサイクルも進めている。

 アパレルメーカーや小売店などと連携したモノ作りを模索。ハイクオリティーを意識したブランド商品にも対応でき、環境配慮を含む「新たな見せ方による展開も見据えることができる」(出口氏)。AIツールの精度をさらに高め、製品回収の効率化を図るとともに、糸種や製品の種類も増やす予定で、山本CEOは「国内外を問わずアプローチできるようにしていきたい」と話す。