ベトナム特集・縫製機器メーカー編/WTO加盟で需要拡大
2007年02月26日 (月曜日)
ペガサスミシン製造/中小縫製業の支援充実
ペガサスミシン製造のホーチミン事務所は、同社の東南アジアの重要拠点シンガポールペガサスの管轄で、2001年の活動開始以来、ベトナムの販売代理店を着実にサポートしてきた。・代理店の営業販売を支援する販促活動・修理など代理店のサービス活動のサポート・新しい技術の提供など技術支援の3点を主な業務とする。
ベトナムでの体制は13の販売代理店が全土をカバーし、ホーチミン事務所のもとホーチミン、ハノイ、ダナンの三つのサービスセンターが販売代理店のアフターフォローを支援する。
ベトナムの代理店は毎年着実に販売を伸ばし、06年は前年比20%増を達成した。07年は同50%増を目標に掲げる。ホーチミン事務所の江金興所長は「世界貿易機関(WTO)加盟で外資系縫製企業の進出や国営縫製企業の民営化が増え、販売チャンスも広がる」と意欲を見せる。
従来は高級機を使用する大手の縫製企業をターゲットとした販促活動が中心だったが、今年は古いミシンの買い替え需要が大きい中小の縫製企業にまでターゲットを広げ「コストパフォーマンスに優れた中級機をアピール」(江所長)し、新たな販路を開拓する。
昨年、日本の海外技術者研修協会(AOTS)の支援で開き好評だった研修会議を今年も開催する予定で、中小縫製企業まで含めた業界支援を充実させる。
JUKI/ブランド力で総合展開
JUKIのベトナム進出は30年以上前にさかのぼる。現地アパレル企業のサポートを開始し、現在ではJUKIブランドが工業用ミシンの代名詞となるほど認知度が高まった。ハノイとホーチミンに拠点を設け、26人(うち日本人駐在員1人)体制で、営業・サービス活動を行っている。
1995年に工業用ミシンの部品工場であるタントゥアンプレシジョン(現JUKIベトナム)を設立した。ホーチミンタントゥアン輸出加工区での日系企業第1号だった。02年にはロストワックス精密鋳造の開始、昨年7月には第3工場を竣工し、JUKIグループの部品製造や組み立て、開発の一翼を担う。
今やアジアで中国に次ぐ経済成長を続け、1月には150番目のWTO加盟国となったベトナム。JUKIは工業用ミシン世界ナンバーワンシェアを誇るブランド力を生かしながら、工業用ミシンだけでなく全事業分野でJUKIブランドの一層の浸透を図る。
その一環で、1月中旬と2月初旬の2回(ハノイ、ホーチミン)、工業用ミシン、産業装置、家庭用ミシンの全製品をそろえた総合展「JUKI EXPO 2007」を開催。両会場合わせて約6000人(目標比3倍)が来場し、大盛況だった。05年1月のクオータ撤廃後、“中国プラス1”のアパレル生産地としても注目される。JUKIは今後も2拠点を中心に、顧客満足に取り組んでいく。
ヤマトミシン製造/アフターケア万全に
ヤマトミシン製造は、今年1月、ホーチミンにサービスステーションを設立した。同社は従来、ベトナムの販売代理店へのアフターケアを日本からの出張サービスで行ってきた。しかし、世界的に中国リスクの受け皿としてベトナムが脚光を浴びるようになったことで、メンテナンス対応が追いつかなくなり、行き届いたサービスが提供できかねないとの判断からサービスステーションの設立となった。
今後は地元縫製工場や海外から進出してきた縫製企業へのメンテナンス対応や技術指導で得た情報を、国内の技術、営業部門にフィードバック、緊密に連携を図ることでサービス品質の向上を目指す。
縫製業界では2008年の北京オリンピック以降も中国の内需拡大、人件費高騰の影響を受け、ベトナム生産がますます増加するとみられる。ベトナムはワイシャツなど布帛製品の輸出をメーンとしてきたが、ポロシャツ、カットソーなど製品アイテムのバリエーションが増えつつあり、ニット生産の拡大も期待される。付加価値の高いモノ作りができる生産拠点として欧州からの評価も高まる。
同社のベトナムでのアフターケア体制強化の背景には、確実に国際競争力を高めるベトナム縫製業の発展がある。
日本化学繊維検査協会/存在感高まるKVL
日本化学繊維検査協会(カケン)は1988年以来、海外支所と提携機関を合わせてアジア全体で11の拠点を設け、グローバルな対応を推進している。
ベトナムでは05年8月、韓国で業務提携を結ぶKOTITI(韓国繊維技術研究所)がビンズン省のソンタン産業団地内に1800平方メートルの「KOTITIベトナム試験室(KVL)」を開設。日本向け繊維製品の品質試験に関してはカケンが行っている。
KVL開設は、世界の繊維貿易の完全自由化への対応とともに、成長と発展の潜在力が高い東南アジア地域に海外進出の橋頭保を確保するためだ。欧米向けに加え、カケンと提携しての日本向け繊維製品の品質検査が業務の中心となる。
カケンでは、KVL開設の3カ月前から現地スタッフへの試験教育訓練をスタート。2カ月前には日本向け業務のための専門スタッフを派遣し、ベトナムで生産する繊維製品や服飾雑貨などに対する品質試験を現地で実施できるようにした。
今やベトナムは、アジアにおいて中国に次ぐ経済成長を誇り、1月にはWTO(世界貿易機関)に正式加盟した。繊維産業においても“中国プラス1”のアパレル生産拠点として存在感が高まる。カケンはKVLを通して、今後も生産者やバイヤーにとって身近で便利な試験・検査サービスを提供していく。
阪急交通社/ハノイにも事務所
阪急交通社は現在のホーチミンに加えて、3月にはホーチミン以上に急ピッチで開発が進むハノイにも駐在員事務所を設置する。近郊に縫製工場が増えてきたこともあり、繊維製品の物流にも一段と力を入れる。
高度経済成長が続き急速に発展しているベトナムだが、繊維製品は同国からの輸出品で工業製品のトップに位置する。ホーチミン事務所の土井隆彦所長は「アパレル製品は無視できない存在」と指摘する。
ベトナムでは縫製に使う素材を日本や中国、韓国、タイなど周辺国からの輸入に頼っている場合が多い。それだけにアパレル製品の物流に携わることは、素材輸入と製品輸出の往復で輸送を取り扱えるメリットがある。航空便輸送では情報機器の電子部品などの取り扱いがメーンだが、アパレル製品の輸送も2~3割を占める。
ベトナムから日本へのアパレル製品の物流は現在、10日から2週間かかる船便が主流。「エアー(航空便)は納期的に船ではどうしても間に合わないときに使われるが、年々、発注サイクルが短くなり、納期が厳しくなっているため、エアーが増える傾向」(土井所長)にある。
90年代に香港駐在を経験し、アパレル製品物流にも長くかかわってきた土井所長は、現在のベトナムの発展について、「かつて深せんを生産背景に昇竜の勢いで繊維産業が発展したころの香港と雰囲気が似ている」と印象を語る。ベトナム北部への拠点設置で繊維製品の輸送にも従来以上に力を入れる。