アジア特集/持ち味生かし業容拡大/日本の繊維検査機関
2007年03月28日 (水曜日)
日系繊維検査機関は中国を中心にアジア各地で徐々に業容を拡大し、日本での試験・検査体制とほぼ同じ体制を整えつつある。とくに繊維製品の安全基準が厳しいと言われる中国では今後、検査機関の役割は重要性を増してくる。既存の試験・検査だけでなく、多様なサービスで業容拡大を進める。
カケン/生産拠点分散化に対応
日本化学繊維検査協会(カケン)は、“中国プラスワン”など繊維生産地の分散化を見据え、アジアに設けた11の拠点をベースに、グローバルな戦略を展開している。
初の海外進出は1988年。7月に韓国繊維技術研究所と提携、11月には香港検査所を設置した。85年のプラザ合意後の円高により、生産機能の海外シフトを進める日本企業を主対象に、現地で試験・検査業務を開始した。
台湾(BVCPS台湾)、インドネシア(BVCPSインドネシア)、タイ(COPIT)と、順次拠点を拡大し、05年8月にはベトナム(KVL)でも始まった。KVLは韓国繊維技術研究所が設けた試験室。KVLとの提携により、カケンは、日本向け繊維製品や服飾雑貨の品質検査を行っている。
これまでアジア各地に検査拠点を設置してきたが、今後は繊維産地の移動の行方を見極めながら新設を検討する考えだ。当面は既存拠点における試験機器や人員の増強などに力を注ぐ。中国本土でも、中心的存在である上海科懇服装検験修整をはじめ、寧波、無錫に日本人スタッフを1人ずつ増員する。
上海科懇服装検験修整は製造から販売の過程で品質評価や紛糾処理の根拠となる「CSM2000」に加え、今春には国家基準の試験室認定「CNAS」も取得する見込みだ。
QTEC/着々と中国拠点広げる
日本繊維製品品質技術センター(QTEC)は現在、上海、青島、無錫、深せんの4都市に拠点を持ち、中国での事業を拡大している。昨年12月にオープンした中国で4番目の拠点、深せん試験センターが今年から本格稼働に入った。深せんは日本の検査機関としては初めての進出。広東省一帯では衣料だけでなく、生活用品の生産も多いことから、カバンや靴などの検査も可能だ。
ほとんどの業務が日本向け製品の検査となる。内販向けでは無錫出入検験検疫局や国際検査機関のインターテックを通じた検査証明書を発行できる体制を整え、少しずつ日系企業からの委託を含めたローカル企業への対応も増えてきた。
日本国内で行っていた検品会社などへの指導・認証業務の依頼も増加している。中国では日系企業だけでなくローカル企業も含めて30社以上に対応し、縫製や検品工場のシステムの効率化や作業環境の改善、検品技術の向上などを目指し、工場全体のレベルを高める指導を行う。
今後「データの信頼性確保」を重視しながら、作業環境の改善や効率性の向上、同じ試験機でも複数導入することでデータの信頼性を高めるなどにより顧客満足度を追求する。さらに試験依頼が増加していることから、新たな拠点設立も検討する。
メンケン/速く確実な納期に評価
綿繊維紡織品検査協会(メンケン)は01年から、安徽三朕集団との提携により、衣料品や生地の検品業務を行う上海申磐奈辛格服装内に、上海試験中心と上海検品中心を設け活動している。
糸から織物、二次製品までの検品、検反、試験を行う。その迅速な対応と納期の確実性に評価が高まっており、検品では検品手順を変えるなどにより生産性を向上させるという。
順調に業績を伸ばす上海試験中心は、繊維強度・染色堅ろう度・寸法変化率の試験のうち、染色堅ろう度に対する試験依頼がとくに多い。カジュアル衣料品は一般に低価格のため染色技術での問題が多く、業務の依頼増につながっている。また衣料品の表示ラベルの相談も増えており、絵表示や繊維組成、原産地表示などのコンサルティングも行う。
製品の検品を行う上海検品中心は、迅速かつ確実な納期対応が評価される。最近では物流システムの一環として検品が行われているが、検品の質という面では、同協会のように第三者機関が検品する方が信頼性は高く、依頼業務も年々増えているという。8月の閑散期に特殊作業服の検品が入る。一般作業服に比べ検査も細かくなるが、これにより信頼性が高まっている。
日本染色検査協会/5拠点で密着サービス
日本染色検査協会は中国での検反や試験・検査体制を強化している。昨年から内販向け製品の検査を本格化し、多様なニーズに対応できる体制を整える。
中国では01年、日本染色検査協会と中国の出入境検験疫局などとの提携により、南通天山紡織品検整を設立した。以後、南通を中心に事業規模を拡大。一昨年には日本の得意先の要望が多かった上海での試験を開始し、昨年5月には倉庫業の共栄倉庫公司と提携し、中国現地法人で倉庫保管、検品などを行う上海共栄 明倉儲服務で検反業務も始めた。
現在は南通に3カ所、上海に2カ所の拠点を有し、検反から検品、検査まで繊維製品全般にかかわる総合的な業務ができる体制を構築した。
試験業務では日本向け製品の対応が大半を占めるが、昨年南通の人民格事務所では、提携先がCMA(中国内販品にかかわる試験機関資格)とCNAS(中国実験室国家認可)を取得したことから、内販向け製品の検査を本格化。中国の紡績品安全技術要求「GB18401―2003」に対応した検査体制を敷く。
また日本での「・・Oco―Tex Standard100」の認証機関の立場を生かし、中国へ進出する日本企業向けに同規格の認証活動も推進。同規格は欧州向け輸出には不可欠になっており、今後重要性が増すとみて力を入れる。
日本紡績検査協会(ボーケン)/抗菌試験対応を強化
日本紡績検査協会(ボーケン)は日系企業の進出とともに、中国での拠点を広げてきた。現在、常州、青島、上海、杭州、寧波、広州、香港に拠点があり、ほぼ日本と同じ試験体制を整える。
上海試験センターでは、国の検査機関である上海出入境検験検疫局と業務提携しており、中国内販でも公的な証明書の発行が可能だ。浦東だけでなく日系企業の多い虹橋にも拠点を設置し、利便性を高め、サービスの向上に努めている。
最近は検査内容が変化し、中国でも定番的な試験だけでなく、日本と同じような検査の要請が増えている。このため、04年7月から、上海試験センターで抗菌試験を始めた。当時、重症急性呼吸器症候群(SARS)の流行以降、抗菌機能に対する関心が高まっていたことから設置に至った。
単に抗菌試験ができるだけでなく、日本のSEKマークの取得や、中国国内でも通用する「CIAA」マークを発行できる。今春からは提携先の上海出入境検験検疫局が持つ「CNAS」(中国実験室国家認可)に準拠させることでより精度の高い認定となるため、現地企業への対応も増えそうだ。
上海だけでなく青島、常州でも同様に公的機関との業務提携を行い、その他の拠点は国際的な試験機関であるSGSグループと業務提携し、欧米向けなどへの対応ができる。また、靴や服飾雑貨の品質検査、じゅうたんやカーテンのホルマリン検査など衣料品以外の試験体制も強化しており、広州、上海、香港では家具類の検査体制も整えている。