ひと/クラボウ次期社長に就く・井上晶博氏

2007年03月29日 (木曜日)

 創業から13代目。繊維営業出身の社長としては7代目以来、42年ぶりになる。丹羽ひろし社長による人物評は「明るい性格で、はっきりとものを言うが、人に腹を立たせない」。

 入社後は織物貿易畑を歩み、訪れた国は30数カ国に及ぶ。「当時はプラザ合意前でよく売れた。嫌なことも商売ができることで忘れた」。出張の際には苦い経験もしたが、今覚えているのは楽しいことばかり。87~91年にタイに赴任、97~2001年にタイクラボウの社長を務めた。

 他企業の経営者では伊藤忠商事の丹羽宇一郎会長、キヤノンの御手洗冨士夫会長に共感する。「丹羽さんの『清く、正しく、美しく』ではないけれども、現在、従業員に話していることは『清く、楽しく、美しく』」。「公私混同、ルール違反は許さない」「心身とも健全で楽しく仕事する環境でないと新しい発想は生まれない」「外見も内面も清潔で品格ある姿に」と話す。

 来期からの新中期計画では、繊維事業の安定収益基盤確立とともに、非繊維事業の拡大を重視する。繊維営業一筋で、その他の分野は白紙とするが「知らない者の強みもある」と考える。繊維については「いったん忘れる」。知り過ぎるとできない理由が分かってしまうからだ。119年の歴史を重んじ、その中で培ってきた企業文化を大切にしながらも、「その上でチャレンジするリスクは必要。今はノーリスク・ノービジネスの時代」と言い切る。

 丹羽社長も「営業出身の社長はしばらく途絶えていた。財務体質も改善しており、これからはフロントエンジンで引っ張ってほしい」と井上氏のパワーに期待を寄せる。

 家族構成は妻、長男、長女の4人。趣味はゴルフと読書で、最近は肩のこらないベストセラーを読んでいる。食事は肉より魚で、お酒を好む。座右の銘は「得意端然、失意泰然」。20年前に海外の日本料理屋でこの言葉に会って以来、ずっと手帳に書いて自分を戒めている。

ひろし=日のしたに大

いのうえ・あきひろ

 1971年慶大・商卒、クラボウ入社。2001年取締役、常務を経て06年から専務。6月28日付で社長就任予定。58歳。