商社07年度戦略/アパレル、SPAと連携 加速

2007年04月13日 (金曜日)

 商社の繊維事業は、主力のアパレル製品OEM(相手先ブランドによる生産)事業の収益構造が、高止まりする原燃料価格や円安、中国での人件費増など山積するコスト上昇要因によって悪化し続けている。新たなビジネスモデルが求められる中、2007年度は大手総合商社を中心にアパレルメーカー、SPA(製造小売業)との連携強化など、サプライチェーンのより川下へ向かった具体的な動きが加速する。

M&A・業務提携相次ぐ

 この3月、伊藤忠商事が25%出資する系列投資会社レゾンキャピタルパートナーズが経営再建中のしにせアパレル、小杉産業の株式公開買い付け(TOB)を実施すると発表した。

 これに対して今年度からの組織改編でも一段と川下志向を打ち出している同社繊維カンパニーは「生産管理、仕入れの実務がこなせる課長クラスの人材を派遣する」(岡藤正広専務繊維カンパニープレジデント)と、これまでに培った繊維事業のノウハウと国内外に持つ広範なビジネスネットワークで再生を全面的に支援する。

 繊維カンパニー自体の出資も前向きに検討しており、昨年のジャヴァグループへの出資に続くアパレルとの連携強化となる。独自の強みを持つブランドビジネスなどとのシナジーを生かし、ブランドマーケティング的な発想に基づくビジネスモデルの構築を急ぐ。

 豊田通商は6日、ミセス、ヤングキャリア、インポート、メンズなどのブランドを展開するファッション企業グループ、ビスケーホールディングスとの資本・業務提携を結び、第三者割当による新株発行を引き受け、36%超を所有する筆頭株主となる。

 同社の持つ生産調達、物流、IT機能とビスケーの商品企画、SPA型で80数店舗展開するリテール機能を生かした、生産からリテールまでの独自のバリューチェーンを構築、「製品事業の新たなビジネスモデルを作る」(中山純執行役員生活産業・資材本部長補佐)。

 専門商社でもヤギがSPA型アパレル、サラブランドを全額出資の子会社とした。同社が「サラブランド・ファーム」ブランドで運営する4店舗と併せて20店舗体制で、中期経営計画「N.Y.(NewYagi)115」の重要課題の一つ、消費者直販ビジネスを推進する。

 新生サラブランドの社長に就任した伊藤礼司取締役営業第二本部第二事業部長は「新業態での出店を積極的に考えていきたい」とし、ドッグカフェを併設した店舗など新たな店舗展開を検討する。

 住友商事は4月からメディア・ライフスタイル事業部門の管轄となったライフスタイル・リテイル事業本部が、「売り場提案型の衣料製品事業」(大橋茂執行役員ライフスタイル・リテイル事業本部長)でTVショッピングやネット通販など無店舗リテール事業を強化する。消費者の多様なライフスタイルに対応する新たな価値創造に対して、「一緒に取り組みたい」と興味を示すアパレルも多い。

商社/流通・小売業界の再編でバイイングパワーに対応

 商社がアパレルやSPAとの連携を加速し、新たなビジネスモデル模索する背景には、流通・小売分野における急激な業界再編がある。総合量販店(GMS)は、イオンとダイエーの資本・業務提携でイオングループと、イトーヨーカ堂のセブン&アイ・ホールディングスの2陣営に集約された。百貨店業界でも阪急と阪神、大丸と松坂屋、伊勢丹と東急など経営統合、業務提携が相次ぐ。

 リテール分野が寡占化されることで、それぞれの企業グループがかつてないほど巨大なバイイングパワーを持つ。衣料製品分野でも、それだけ供給サイドへの要望が増すことは容易に想像できる。「アパレル製品を供給する側も、リテールの要求に応えられるだけの大きなパワーを持つ必要がある」と伊藤忠の岡藤専務は指摘する。

 アパレル、SPAとの連携を加速する商社の新たなビジネスモデルの構築が進めば、川上、川中分野を巻き込んだ、より広範な繊維業界の再編につながっていく可能性も否定できない。