繊維機械は高品質、汎用性追求へ
2007年05月09日 (水曜日)
TMTマシナリー/画期的な高速延伸仮撚機
TMTマシナリーが画期的な高速延伸仮撚機を開発した。同社独自の「ニップ」タイプを一段と発展させ、高い汎用性と高速性を実現したもので、「ATF12」「ATF21」の両機種で「クアトロニップ」タイプとして展開する。
新タイプは20~900デニールという幅広い原糸の仮撚りが可能で、かつ一般の「フリクション」タイプより毎分100メートル速い生産性を誇る。また、原糸の特徴を損なわずに加工できるため、糸切れが少なく、中空糸や異型断面糸など、特殊糸の仮撚りにも優れる。
さらにニップタイプに比べベルトの寿命が長くなり、メンテナンスも簡単になるため、ランニングコストが低下する。
ニップタイプで使用する2本のベルトを4本に倍増し、クロスさせる構造を取り入れることで、糸の接圧を減らすなど、従来にない技術とノウハウを加え開発した。
同社の合繊機械の販売は中国中心に回復しているが、日本国内は依然停滞している。三木勝策副社長営業本部長はクアトロニップを、糸段階から差別化を図る繊維先進国に向けて販売していく考えで、日本のほか、韓国、台湾を主要ターゲットと位置づける。衣料用を先行させるが、産業資材分野にも徐々に浸透を図る。
9月にドイツ・ミュンヘンで開かれる「ITMA(国際繊維機械展示会)07」で、クアトロニップタイプを目玉機種として出展、本格販売に乗り出す。
豊田自動織機/06年AJ販売1万台突破
豊田自動織機の最新鋭エアジェット(AJ)織機「JAT710」の販売が06年、1万台を突破した。織機の年間販売が1万台を超えたのは、G型シャトル織機時代の1937年(1万104台)以来、69年ぶり。06年の販売高1万206台はそれを上回る過去最高となる。
04年から05年にかけて調整期にあった最大市場の中国が回復したほか、インド、パキスタン、ブラジル、バングラデシュなどの市場開拓が実った。
また、紡績機械の販売も好調だ。台湾の大手紡績にリング精紡機「RX240NEW」20万睡強を成約したのに続いて、中国の大手紡績にコンパクト精紡機「RX240NEW―EST」5万睡を決めた。パキスタン、バングラデシュ、インドネシア向けも好調で、山北幸男常務役員・繊維機械事業部副事業部長は「紡・織機がそろって良い」と胸を張る。
AJ織機の販売ではパキスタン向けが金利の上昇から伸び悩みに転じるなど、一部懸念材料が出てきたが、ここ数年低迷していたウオータージェット(WJ)織機輸出が回復に転じており、織機全体では今年も高水準の販売を維持できる見込み。WJ織機輸出の回復は、昨年10月の「CITME(中国国際繊維機械展示会)06」で発表した最新鋭WJ「LWT710」によるところが大きい。
LWT710はJAT710とのフレーム共通化や新たなオサ打ち機構の採用によって、毎分1250回転の高速性を可能にした。さらに緯入れ可能時間と打ち込み性を確保しながら、ショートストロークを実現するなど、品質、汎用性の面でも大きく向上。3月末の時点で、すでに300台強を成約している。
村田機械「ボルテックス」/川下起点の糸作り推進
村田機械の革新空気精紡機「ボルテックス」は、従来の空気精紡機や結束紡機とは全く異なるコンセプトの革新機だ。リング糸をしのぐ抗ピル性、速乾性を生かし、高付加価値の糸作りに貢献するだけでなく、川下起点の糸作りという従来の精紡機の常識を超えた領域への挑戦を続ける。
ボルテックスは、超高速エア旋回流により繊維の先端が中心で集束され、一方の後端が他の繊維に巻きつくように外層を形成する点に特徴がある。超高速エアにより短い繊維は吹き飛ばされ、それぞれの繊維は糸の中心に向かって撚り込まれ、他の繊維に覆われる。ボルテックス糸は糸内部に繊維が強固に保持された
“最も毛羽の少ない紡績糸”となる。このため、ボルテックス糸を使った製品は、優れた抗ピル性と速乾性、洗濯耐性を持つ。
従来、紡機メーカーは、生産効率を訴求することが多かったが、ボルテックスは“この糸を使うと、どんな製品が作れるか”という点を訴求ポイントに据えるなど、川下起点の糸作りを前面に打ち出した点が画期的だ。2003年からボルテックス商標を記したタグを展開するなど、ボルテックス糸の高機能を店頭に向けてアピールしている。
また、ボルテックス糸は、リング糸に比べシャリ感やドレープ性が出ることから、近年のレーヨンブームを背景に、とくに再生セルロース繊維の紡績で活躍するほか、国内紡績を中心に、コアヤーンなど高付加価値の複合紡績糸開発にも不可欠の設備として注目が集まっている。
石川製作所/最新鋭レピア、販売本格化
石川製作所が最新鋭レピア織機「ビートマックス2200」の販売を本格化させた。昨年10月の兵庫県西脇市を皮切りに、12月には愛知県一宮市、今年1月には岡山県井原市で最新鋭レピアの実演展示会を相次いで開催。播州、滋賀、岡山などの産地ですでに実績を上げている。
ただ、佐々木鉄男営業部長の思惑からすると、「まだ成果は小さい」。販売の主要ターゲットと位置づける衣料用織物がスポーツなどの一部を除き低迷していることが、販売拡大を妨げる最大の要因とみる。
2200は同社独自のガイドレス技術の発展やダイレクト駆動モーターの採用によって、織機の基本性能である汎用性、操作性、織物品質、生産性を一段と向上した。佐々木部長は「機械の評価は高い」ことから、今後の販売拡大に期待を寄せる。また、オサ幅は280センチまでで展開していたが、資材分野などで広幅化の要求が強まっていることに対応、330センチ幅を近く販売する。
同社繊維機械部門のもう一つの柱である合繊機械でも新機種を加え、販売の底上げを図る。延伸仮撚機「1205」シリーズの新タイプとして開発した細繊度専用機は、スポーツウエア分野中心に増加している細繊度素材に対応したもので、ポリエステル、ナイロンの22~33デシテックスの高品質の仮撚りが効率よくできる。タッチパネルの導入などで、操作性を向上していることも特徴だ。
北陸産地では一般衣料用も含めて細繊度素材の需要が増加しているほか、仮撚機の更新がこのところ行われていなかった事情があり、新タイプの引き合いは当面、高水準で推移しそうだ。
また、同社はユーザーとの連携で特定の分野を対象とした特殊機械の開発にも力を入れる。タイヤコード用撚糸機もその一つで、大手タイヤメーカーへの納入が決まっている。
津田駒工業/AJ輸出好調、WJ回復
津田駒工業ではエアジェット(AJ)織機の輸出が中国、インド向け中心に好調に推移しているのに加え、ここ数年低迷していたウオータージェット(WJ)織機の販売が回復。繊維機械事業部門の業績は大きく好転している。
中国向けは年初、契約が鈍化したが、旧正月明けと同時に引き合いが活発化している。また、インドは政府の設備投資支援が今年で打ち切られるとの見通しから、一時LC(信用状)の開設が停滞したものの、支援延長が決まり、一昨年来の好調を取り戻すとみられる。
懸念されるのは、パキスタンで、とくに米国向け輸出が後退しているシーツなどの広幅織物分野が良くない。竹鼻達夫常務繊維機械事業統括・繊維機械販売部長は、かねてから販促活動を強化していたトルコやブラジルなどの拡大で、前年並みの輸出を維持する考えだ。
同時に昨年から最重要課題として取り組む「受注価格の改善」をさらに推進し、全社の業績向上に寄与する。
AJではタオル用の「ZAX9100テリー」の成約が日本国内、海外の日系企業や中国、インドなどで順調に進んでいることも好材料となる。タオル用AJの開発にいち早く取り組んだ同社の実績と最新鋭AJ「ZAX9100」の開発技術を基に、高速性と汎用性を兼ね備えた最新鋭タオル織機として打ち出した。
WJの好転は最大市場の中国の回復によるところが大きいが、北陸産地への販売も昨年後半から拡大に転じている。スポーツ衣料分野で細繊度織物の需要が増加し、機能と汎用性に優れる最新鋭WJ「ZW408」への関心が高まっている。
同社ではWJの販売促進と同時に、フィラメント用サイジングマシンでは世界最高の機能を誇る「KSX」を改めてアピールする。細繊度素材の拡充など差別化に取り組む北陸産地機業への販売も徐々に進んでいる。9月にドイツで開かれる「ITMA(国際繊維機械展示会)07」でもKSXの優れた機能を訴える予定だ。
スルテックスジャパン/資材分野にも広がる
スルテックスジャパンはスイス・スルテックス社のプロジェクタイル、レピア織機と併せ、今年からスイス・ベニンガー社製部分整経機の販売を始めた。
今年の織機販売は昨年のような大口がなく、プロジェクタイル、レピアともに数量的には伸び悩んでいるが、展開分野は大きく広がっている。1件当たりの導入規模は小さいものの、瀬谷昌宏営業部長は「毎年のように設備を更新する既存の顧客があるほか、昨年から今年にかけて、新規顧客の開拓が進んだ」と胸を張る。
プロジェクタイルの主力機種「P7300HP」は既存顧客の更新が主力となるが、最新鋭レピア「G6500」は資材分野で一気に浸透した。自動車業界の好況に支えられるカーシートをはじめ、インテリア、建築・農業資材など、従来あまり実績がなかった用途で販売を伸ばす。
瀬谷部長は国内の織物産地の状況は一部を除き昨年より悪化しているとみるが、エアジェットやウオータージェット織機では生産しにくい付加価値の高い織物を生産し、海外生産品との差別化を図る動きは強まっていると指摘。こうした機業に積極的にアプローチすることで、需要を掘り起こしていく考えだ。
付加価値の高い織物を高速で生産するためには、準備工程の近代化や技術革新が欠かせない。ベニンガー社製部分整経機の販売を加えることによって、準備から製織工程までのアフターフォロー体制を充実し、業界への支援体制も強化する。