帝人/東邦テナックスを完全子会社化
2007年05月30日 (水曜日)
炭素繊維を強化へ
帝人と東邦テナックスは28日、同日に開催されたそれぞれの取締役会で、9月1日を期して帝人を完全親会社、東邦テナックスを完全子会社とする株式交換を行うことを決めた。東邦テナックスの完全子会社化は、帝人グループの炭素繊維事業の強化が目的。
東邦テナックスに対する帝人の持株比率は現在68・41%。東邦テナックスの宇都宮吉邦社長は会見で、「炭素繊維事業は高い成長性が予想されるが、大競争時代。生き残りには生産、営業、技術開発の強化が必要で、完全子会社化で帝人グループの人材、資金力、グローバルな対応力などを得て、より競争力を強化できる」と述べた。
帝人の長島徹社長は「アラミドと炭素繊維は別物だが、生産面では品質確立が共有化でき、営業面でもコンポジットの分野でシナジー効果が予想できる」とし、帝人グループの企業価値を向上させるものと指摘した。また、完全子会社化後も、社名、経営陣、事業方針、ブランドなどは変えないという。
株式交換は東邦テナックスの普通株式1株に対して、帝人の普通株式1・15株を交付する。株主交換により発行する新株式数は約5666万株(予定)。6月28日に東邦テナックスが株式交換承認株主総会を開き8月28日に東邦テナックスの上場を廃止。帝人は10月下旬に株券を交付する。
「テクノーラ」増設/帝人高機能繊維事業
帝人の常務執行役員、亀井範雄高機能繊維事業グループ長兼帝人テクノプロダクツ社長は29日、東京で会見し、パラ系アラミド繊維「テクノーラ」を2000トンから5割増の3000トンへ増設する計画があることを明らかにした。テクノーラは、1987年に商業生産を開始したパラ型アラミド繊維。PPTA(ポリパラフェニレンテレフタラミド)繊維とは異なったプロセスで製造され、高強力や高弾性率、耐薬品性、耐摩耗性などに優れている。
帝人のアラミド繊維事業の成長率は2003年から年平均9%で推移している。亀井グループ長は「高機能繊維は安全、環境、資源に対し社会的要求に合った繊維。この潮流は5年先を見ても大きな変化はない」としたうえで、テクノーラについてはパラ系アラミド繊維「トワロン」との2種類でシナジーを追求し、市場拡大を図る構え。海底の石油採掘用途などにも信頼性が高まっていることから「テクノーラ独自の展開を図っていきたい」とした。 増設時期について亀井グループ長は「今秋冬には詳細を決定したい」と現段階では未定ながらも「1日でも早く」実施したい考え。トワロンを使用したゴム改質材料「サルフロン」は現在、タイヤメーカー数社がフィールドテストを実施している最中で「今期中のテスト結果次第で量産設備の増設を図る」とした。
<解説>
帝人による東邦テナックスを完全子会社化は脚光を浴びる炭素繊維大手である東邦テナックスの業績が帝人の株価に反映し、帝人の株主価値の増大につながるとの見方もあるが、事業面では加工品開発が加速する可能性も秘める。
東邦テナックスはアクリロニトリルを原料とするアクリル長繊維(プリカーサー)からなるPAN系炭素繊維を製造販売しており、東レに次いで世界第2位の規模(年産7800トンの規模)を持つ。
帝人は2000年2月、株式の公開買い付けを実施し、東邦レーヨン(現・東邦テナックス)普通株式の過半数を握り、連結子会社化。その後の第三者割当増資などにより持株比率は68・41%に達している。
帝人傘下入り後、東邦テナックスは課題であった米国での製造拠点(フォータフィル・ファイバーズを買収)を確立。独子会社、東邦テナックス・ヨーロッパの増設などを相次いで設備を増強した。業績も右肩上がりで、前3月期の東邦テナックスの炭素繊維事業の連結業績は売上高で前期比18%増、営業利益で40%増を達成。今期も15%増収、10%増益を見込む。
帝人は前3月期からスタートした新中期計画「STEP UP2006」で炭素繊維を成長SBUの一つに位置付け、選択と集中の視点から設備投資、研究開発費を積極投入している。
東邦テナックスは現在、現在、国内で2700トンの増設工事中だが、一方で原料売り比率が高く、プリプレグ(炭素繊維に熱硬化性樹脂を含浸した中間材料)やコンポジット(炭素繊維複合材料)など加工品の比率が2割ぐらいしかない。逆に東レ(年産1万3100トン)は5割強、三菱レイヨン(7900トン)は8割が加工品と推測される。
東邦テナックスでは、昨年10月には複合材料事業部門を新設し、加工品の強化に乗り出したが、帝人の連結子会社化によって、さらに加工品の開発が加速するかもしれない。




