この人に聞く 東レ/上田進康理事
1999年11月05日 (金曜日)
東レがセハンとの合弁を機に、SB(スパンボンド)不織布事業に本腰を入れ始めた。先ごろ設立した韓国の東レセハンでは予定を早め増設に着手。二〇〇一年にはドイツ・ライフェンフォイザー社製のSMMS設備レイコフィルシステム3(年産一万トン)を立ち上げる。増設の狙いや今後の販売戦略などについて、東レの上田進康理事産資・インテリア事業部門長に話を聞いた。
--SMMS新設の狙いは。
韓国の紙おむつ市場が予想以上の伸びを見せているためだ。紙おむつ市場は今後、年率九%成長が見込まれており、二〇〇〇~二〇〇一年にかけて韓国の紙おむつメーカーが増設するとの情報もある。大人用も二〇〇一年以降に本格化するだろうし、六〇%のシエアをもつ当社はトップメーカーとしての供給責任を果たし、その地位を固める意味もあって増設することにした。増設後はシエア七〇%を狙う。
--増設分の全量を韓国内でこなすのか。
日本への輸出もある。日本における旧セハンでの販売シエアはレギュラーSBとSMSで八%弱。韓国内への販売を優先するが、日本でのシエアも一〇%に高める。韓国はそれほどでもないが、日本では紙おむつのサイドギャザーは低目付化によりSMS、SMMS化が進んでいる。入り込むチャンスはある。
--韓国内でSMS、SMMS化が遅れているとすれば、新設分の日本輸出が増えるのでは。
予定より多くなるかもしれないが、シエアを取るため、値を崩すつもりはない。韓国内で価格は下がっていないし、むしろ粗原料の急騰で値上げを行っているほどだ。日本で値上げするのは難しいが、国産品は二〇〇〇年に立ち上がる三井化学だけであり、SMS、SMMS化が進めば玉不足になる。
--三井化学だけでなく、BBAノンウーブンズ、PGIノンウーブンズの海外の巨大メーカーも日本を狙っているが。
まだ、東レセハンは設備を発注したばかりで立ち上がるのは二〇〇一年初め。価格が崩れるようならその時点で対応を考える。むしろ、日本市場では衛生材料以外の用途開拓に取り組んでいくのが課題だ。基本的に紙おむつ用は東レセハンが販売するが、新用途については東レ本体で考えていく。実際、韓国内では生活資材や農業資材において、フィルムからの代替が進んでいる。
--「アクスター」、東レセハン、コーロンを含めたポリエステルSBの展開は。
「アクスター」は今上期、黒字転換しており、通期でも現在の水準を維持できるだろう。東レセハンもフル生産状態にある。この先、日本で増設するか、東レセハンで増設するか、あるいはコーロンでのOEMを増やすかは検討課題だが、日本と韓国両市場をカバーすることを考えると韓国で増設することがベターかもしれない。