帝人、カーギルと合弁/PLAポリマー14万トン生産へ

2007年10月05日 (金曜日)

 帝人は2日、米国のカーギル社と東京都内で共同会見し、1日付で、バイオポリマーメーカーでカーギル子会社の「ネイチャーワークス」(米国ミネソタ州)に50%出資することで合意した、と発表した。同合弁は関係当局の許可後、1カ月後をめどに正式に発足する予定。世界最大規模を誇るネイチャーワークスの米国のポリ乳酸(PLA)ポリマープラントは、2年以内に現年産量の7万トンから倍増の14万トンに拡大する計画。

 ネイチャーワークスは、100%バイオ由来の原料を使用し、二酸化炭素排出量を抑えた低カーボンフットプリントポリマーを商業ベースで製造した初めての企業。独自のPLAポリマー「NatureWorks」「Ingeo」などのブランドを持つ。2005年以来、石油価格の高騰と環境問題に対する意識の高まりから価格競争力が増加し業績が向上し、現在はアジアで100を超える有名ブランドや小売業との取り組みを展開している。

 会見で帝人の唐澤佳長副社長は「帝人の持つ技術を導入して収益を上げ、一段とコストを削減したい」と語り、地球環境に配慮したPLAポリマーの生産拡大を強調した。

解説/ライバル登場で壁を越える?

 帝人の米カーギルのポリ乳酸(PLA)樹脂製造子会社である米ネイチャーワークスへの出資は「環境経営」戦略をグローバルに展開する帝人にとって、大きな武器になるとともに、耐熱性などの問題から伸び悩むPLA繊維の本格化が期待される。

 帝人はこれまで生分解性、カーボンニュートラルなどが特徴のPLAは独自に開発を進めてきたが、本格展開に至っていない。先ごろカーシート素材として発表した耐熱性PLA繊維「バイオフロント」も武蔵野化学研究所(東京都中央区)との実用化研究によるもので、これからの素材だ。

 しかし、今回の出資により、帝人が原料販売にとどまらず、ネイチャーワークス製PLAによる繊維やフィルム、プラスチックコンパウンドなどを事業化する可能性は高い。「当社が持つ用途開発技術はそれぞれの分野での新市場開拓に貢献することができる」とも言及しているからだ。ネイチャーワークス製PLAによる素材開発も行っていなかった。

 日本企業ではすでに東レ、クラレ、ユニチカなどがネイチャーワークス製PLA原料の供給を受け事業化している。とくに、東レは2003年4月にカーギル・ダウ(現カーギル)とPLA繊維に関する包括的契約を結んでおり「エコディア」ブランドで展開中。同社が拡大を進める先端材料の一つに位置づけている。

 帝人ではジョイントベンチャー化の後も原料販売について変わりはないとしているが、同じ原料によるPLAの新たなライバルの登場が伸び悩むPLA繊維が壁を越えることを期待したい。        

環境経営に最適投資先/帝人の長島徹社長の話

 カーギルへの理解が深まるにつれ、ネイチャーワークスのPLAポリマーなどバイオ由来製品に対して長期的なコミットメントを持つことに感心した。帝人グループは「環境経営宣言」し、「環境経営」戦略をグローバルに展開していくためにふさわしい投資先を求めていたが、ネイチャーワークスはまさに最適。両社の連携で、PLAポリマー事業をさらに成長させたい。