健康・快適(機能繊維)特集/日本製は信頼のあかし 求められる客観的データ

2007年10月23日 (火曜日)

 日本の繊維素材メーカーが得意とする機能繊維。抗菌防臭に始まって、PHバランス、加齢臭抑制など、その機能はますます高度化している。その一方で、韓国や台湾、中国でも健康や快適をテーマにした素材開発が加速しているのが最近の流れ。ところが、あまりに安直にこういった機能をうたう商材がはんらんしたことで、消費者からみれば、果たしてどこまで信用できるのかといった不安も大きくなっているのではないか。中国からの輸入製品が回収されるという事件も起こっている。こうした事態は、消費者の疑心暗鬼をますます増大させる危険性がある。だからこそ、いま求められているのは、正確な実験データなどによって機能を実証した素材だ。そこで今回の特集では、確実な機能の裏付けを持つ機能素材を集めた。いずれも日本の繊維企業が持つ高い技術力によって開発された素材だ。“日本製”は信頼のあかしである。

ダイワボウノイ「パラモス」/素肌と同じPHバランス

 ダイワボウノイは、カルボキシル基練り込みレーヨンと綿の混紡素材「パラモス」を、肌に優しいPHバランス素材として訴求している。天然繊維である綿と天然系繊維であるレーヨン、そして天然由来成分配合という特徴を生かし、直接肌に触れる用途での拡大を目指す。

 パラモスは、カルボキシル基練り込みレーヨンと綿の混紡糸を使ったテキスタイル素材。ソフトな風合いと優れた吸湿・保湿性に加え、生地表面のPH値を人間の素肌が本来持つPH値と同じ弱酸性に保つ機能がある。このPHバランス性を武器に、細番手使いがふとん側地に、中番手使いがインナーなどに、いずれも直接肌に触れる用途で市場開拓が進みつつある。同社では今後、弱酸性で肌に優しいという機能を生かし、コスメ分野やレディースのユニフォーム系シャツ地などにも提案を進める考えだ。

 そのほか健康・快適をテーマに、ミルクプロテイン練り込みレーヨン・綿混紡素材「ミルククラウン」、白金ナノコロイド配合素材「プラチナエリート」、コエンザイムQ10配合素材「VITA・Q10」などを多彩にそろえる。

オーミケンシ/クラビオン軸に機能わた

 オーミケンシは、健康や快適を機能レーヨンの開発テーマの中心に据える。キチン・キトサン繊維「クラビオン」はその一つ。抗菌防臭性と高い保温性を有するクラビオンはインナー、寝装、マスク、トレーナー、タオルなど幅広く展開している。

 「97・6。F」は特殊ポリマーを練り込んだレーヨン短繊維で、特殊ポリマーの温度緩衝性を利用して衣服内の温度を快適にするもの。インナーや靴下、寝装向けに投入する。「紀州備長炭繊維」は、その名の通り備長炭を練り込んだ遠赤外線放射などの機能を持つレーヨン。消臭、マイナスイオンなどの効果があり、インナー、靴下、寝装、タオルやフェースマスクなど向けに販売する。

 同社の特徴はこうした機能レーヨンを有するとともに、紡績、編み立て、さらには縫製品まで一貫での生産体制を有している点で、要望に応じた形で供給する。

KBセーレン 「ドーデンH」/耐久制電に蓄熱も

 KBセーレンは「美・健康・安全・安心・環境」を素材開発のテーマに据える。紡糸技術や加工技術に強みを持つ同社が、重点的に打ち出すのは「リブフレッシュPスーパー」「ドーデンH」「優しっそ」の3素材だ。

 リブフレッシュPスーパーは抗菌ガラスをポリエステルに練り込んだもの。常に微量の銀イオンを放出することで、細菌の発生を抑えるとともに、菌の増殖を制御する。インナー、スポーツ、ユニフォーム、寝具など向けに投入する。

 ドーデンHは、同社の導電繊維「ホワイトベルトロン」を使用した耐久静電気防止ポリエステル素材。蓄熱材との組み合わせで蓄熱効果も付与する。スポーツ、インナー、裏地が主力用途だ。

 優しっそは綿加工素材で、花粉やダニによるアレルギー疾患の原因となるアレルゲンの不活性化と抗菌効果を付与するもの。シャツ、インナー、ユニフォーム、寝装品向けに販売している。

シキボウ「トレハクール」/トレハロースで加齢臭抑制

 シキボウが林原生物化学研究所と共同開発したトレハロース配合素材「トレハクール」は、高い熱伝導性による涼感、形態安定性、速乾性、SR性に優れることに加え、最近では加齢臭の原因物質の発生を抑える機能も注目だ。

 トレハロースは、食品の甘味改善や鮮度保持に広く使われている非還元性二糖。保水性が高いうえ、べとつかない特性がある。これを繊維に加工することで、ドライタッチで清涼感のある素材として誕生したのがトレハクールだ。

 このトレハクールには、加齢臭の原因物質を抑える働きが確認された。加齢臭(ノネナール)は通常、汗・皮脂などに含まれるパルミトオレイン酸が分解することで発生するが、トレハクールは生地上のパルミトオレイン酸の分解を抑え、ノネナールの発生量を10分の1以下に抑えることが実験で確認された。また、汗の臭気を抑える機能も確認されている。

 同社では、速乾性・放熱性と合わせて、近年とくに中高年層の間で話題になる加齢臭抑制という機能を生かし、トレハクールの拡大を進めている。

日清紡「Agフレッシュ」/ナノテク加工を応用

 健康や快適をテーマにした開発を重点的に進める日清紡は、ナノテク加工を応用した抗菌防臭素材「Agフレッシュ」や、防汚加工「デュアルクリーン・(DC・)」などを豊富にラインアップする。

 Agフレッシュは、ナノサイズの銀粒子を生地に浸透させることで高い抗菌防臭性能を持つ。また、通常の後加工と異なり、バインダーを使用しないため、風合いがソフトで耐久性にも優れる。綿100%はもちろん、ポリエステル綿混生地もそろえることで衣料品から寝装品まであらゆる領域で使用できる汎用性も魅力だ。

 また、ナノテク加工を応用した機能素材であるDC・は、優れた吸水性と同時に油汚れも洗濯で容易に落ちる。着心地と防汚性能を高バランスで実現した素材である。こちらも綿100%とポリエステル綿混をそろえ、衣料、寝装、そのほか全用途向けだ。

 同社では、近年のストレス社会の進行や地球環境への認識の高まりを背景に、日々の生活のなかで“健康・快適”へのニーズは確実に強まっているとして、引き続きこういったニーズに対応する素材開発を進める考えだ。

富士紡HD「ケアトリナチュレ」/天然成分配合 肌に優しい

 富士紡ホールディングスは、安全・環境・健康・快適の4つのテーマで商品開発を進める。とくに天然成分を活用した「ケアトリナチュレ」「キシリフレッシュ」などで肌への優しさを打ち出す。

 ケアトリナチュレは、動物や植物由来の天然成分を用いた抗菌防臭素材。世界的に化学的に合成した物質の安全性に不安が高まるなか、天然成分使用を生かし、素肌に優しいのが特徴だ。肌の水分量を保つ機能もある。主に肌着、靴下、寝装用途に投入する。

 キシリフレッシュも天然系成分であるキシリトール配合繊維。水分で吸熱反応を起こす性質を利用した涼感素材だ。この機能を生かして、寝装やシャツ用途に採用されている。

 そのほか、汗染みが目立たない吸汗拡散素材「ディスノーティス」など、アウターやスポーツ用途でも豊富な機能素材をそろえる。

 同社では、安価な大量生産品から、より安全で、プラスアルファの機能を求める消費者のニーズが強まっているとして、健康維持や快適重視といったコンセプトの素材開発を進める考えだ。

出光テクノファイン/「快適、健康、環境」追求

 機能素材メーカーの出光テクノファインが開発した有機・無機複合系の抗菌・防カビ剤「コーキンマスター」が、衣料品や靴、車両用シートなどで様々な用途展開を見せている。

 繊維評価技術協議会の抗菌繊維製品基準(SEK規格)や抗菌製品技術協議会のSIAA規格を取得するコーキンマスターは、従来の抗菌剤の15倍にあたる372の菌種に対して機能を発揮。ハロゲンフリーのためダイオキシンなどを発生させる恐れがなく、さびにも強いといった特徴を持つ。ゴム履物・革靴の製造・販売を手掛けるアサヒコーポレーションと共同で開発した、コーキンマスター採用の抗菌上履きが学校関係者から好評を得ていることから、教育関係のほか、医療、福祉分野での市場拡大を視野に入れる。

 また、同社ではコーキンマスターを使用したアパレル製品を08年春夏から本格展開する予定だ。

三甲テキスタイル「ナノ トレンド ダイヤモンド」/超微粒子ダイヤで消臭

 三甲テキスタイルの「ナノ トレンド ダイヤモンド」は、毛織物として日本で初めてダイヤモンド触媒技術を応用した消臭・抗菌加工素材だ。

 ダイヤモンド触媒は美術品や伝統文化財などを長期間、保護するために開発された技術。超微粒子ダイヤモンドは多数の官能基を持つため、電荷移動触媒(UDD)として消臭・抗菌機能を発揮する。電荷移動触媒とは電子ドナー(電子供与)、電子アクセプター(電子引き抜き)により酸化還元反応を起こすこと。

 同社によれば硫化水素の残臭率は24時間経過後にはゼロ。抗菌試験では静菌活性値が2・7(2・2以上で抗菌効果あり)。

 光を必要とせず、低温時も安定した機能を発揮し、触媒作用のため効果が長時間持続し、素材の風合いを損ねることもない。先ごろ大阪で開いたスクールユニフォーム展示会(東京は24、25日)でも来場者から高い関心が寄せられた。

 ウールでは同社モノポリーで展開。すでに青山商事がスーツに採用しているが、今後、学生服はもちろん、ビジネスユニフォームや一般衣料、ニット糸での展開も予定する。

丸紅/消臭縫製糸「ピュアシーム」

 丸紅はフェニックスと共同で開発した消臭縫製糸「ピュアシーム」の販売に注力する。ピュアシームは、レーヨン繊維にカルボキシル基をグラフト共重合した消臭縫製糸。洗濯や日干しで消臭効果が復元するため、繰り返し使用できる。繊維自体を消臭繊維に改質していることから、半永久的に効果が持続する。また、アンモニア(尿、汗などの分解物)、イソ吉草酸(わきが、足のにおいの原因になる前身物質)など、嫌なにおいだけを中和する選別消臭能力を持つ。

 販売展開はシャツやインナー、ユニフォームなどの衣料製品のほか、タオル、シーツ、マット類などの生活雑貨、寝装分野など。昨年から販売を開始し、「徐々に実績が上がってきている」(丸紅)状態だ。消臭製品に関する市場ニーズの高まりがあることから、今後はGMSとの取り組みを拡大する方針だ。