不織布新書07秋/海外を攻めろ! 内需型から脱却の動き

2007年09月27日 (木曜日)

「内需型」と呼ばれてきた不織布業界も海外市場の開拓に乗り出している。海外展示会へも積極的に出展し、輸出強化に動き出した。同時に、これまで国内生産にとどまっていた企業が海外生産の検討を進めるといった事業構造の転換に乗り出すなど“グローバル”がキーワードになってきた。

欧米・中国展に積極出展/独自製品で海外市場開拓

 財務省通関統計によると、2007年1~6月の不織布輸出量は前年比16・9%増の2万4590トンで、年間5万トン台乗せの可能性も出てきた。国内生産量を33万トンとすれば、輸出比率は約15%。輸出統計には人工皮革も含む可能性が高いため、正確にはもう少し低いかもしれない。そんな内需型の不織布で海外展示会への出展が活発だ。

 今年6月12~14日、独フランクフルトで開催された産業用繊維・不織布専門国際見本市「テクテキスタイル」に旭化成せんいが、新不織布「プレシゼ」と熱成型ポリエステルスパンボンド不織布(SB)「スマッシュ」を、クラレグループ出展でクラレクラフレックスが水蒸気不織布「フレクスター」などを出展した。

 プレシゼ、フレクスターとも次世代不織布の一つとして注目されるもの。テクテキスタイルに初出展した旭化成せんいの雛元克彦スパンボンド営業部長は「薄くて均一性が高いことから来場者の注目を浴びた。問い合わせも多い」と手応えを示す。

 同社スパンボンドの輸出比率はわずか2%に過ぎない。ナイロンSBも含めこの比率を20%に高める目標を立てる。専任担当を増員し「海外での取り組み先を探索する」と言う。すでに、2人が欧州に長期出張している。まずはマーケット性を分析したうえで輸出強化に取り組むとともに、海外生産も検討課題の一つに置く。

 クラレクラフレックスの濱幹広社長も、輸出比率を現在の10%以下から「少なくとも30%(売上高で)に引き上げる」考えを示す。輸出拡大においても戦略素材になるのが、フレクスター。最も先行する海外での伸縮包帯向けは、下期から本格販売を始める予定だ。

 テクテキスタイルに先立つ4月23~26日、米国で開かれた米IDEA(米国不織布総合展)に初出展したのはユニチカ。綿100%不織布「コットエース」の市場探索のためだが、これに続いて10月22~24日、上海国際展覧中心で開催される上海国際不織布材料展覧会(SINCE07)にも初出展を決めた。津川優上席執行役員スパンボンド事業本部長(10月1日から不織布事業本部長)は「中国展には加工業者が数多く来場する。米国への再輸出も含めて効果を見込めるのではないか」として急きょ出展を決めた。

 同社はポリエステルSB国内最大手(年産2万トン)で、かつては輸出比率も高かったが、タイに帝人とのSB合弁会社、テイジン・ユニチカ・スパンボンド〈タイランド〉(TUSCO、4000トン)を設立後、輸出は減少していた。しかし、国内のポリエステルSBが伸び悩むなかで「国内よりも海外の方がチャンスは多い。今後は輸出に負荷をかける」方針だ。

 SINCEには旭化成せんいもプレシゼ、スマッシュ、活性炭複合SB「セミア」などポリエステルSBを中心に、初出展する。

旭化成せんい「ベンリーゼ」/中国開拓に意欲燃やす

 旭化成せんいのSBやクラレクラフレックスはもともと、輸出比率は高くない。一方、海外の不織布展以外、とくにクリーンルーム用ワイパー「ベンコット」で半導体などの展示会に出展するのは、旭化成せんいのキュプラ長繊維不織布「ベンリーゼ」。こちらは輸出比率が3割と高いが、中国市場の開拓に意欲的で、香港駐在員も1人から今年3人に増強。今年は小津産業(東京都中央区)と連携して、2~3の展示会出展や展示会での講演会などをさらに加速、ブランド浸透を目指していく。

 輸出依存度が高い不織布の一つに、東レのポリエステルSB「アクスター」(年産4000トン)がある。生産量の約4割は欧米のカートリッジフィルター用であり、収益源でもある。

東洋紡/中国SB委託生産

 輸出だけでなく、海外生産の動きもある。ポリプロピレンSBではすでに、三井化学、東レ、ポリエステルSBではユニチカ、東レが海外生産するが、今春から東洋紡も、中国企業からのOEM(相手先ブランドによる生産)という形で生産販売を始めている。同一品質品で現地供給を求める自動車用だ。中国でのポリエステルSBメーカーは4~5社しかないだけに、OEM先はある程度、想像は付くが、同社が技術指導したという。

 香山和正機能NW事業総括部長は現在、15%の輸出比率を30%に高める方針を示すとともに「中国は適地生産の候補の一つ」と位置づけ、OEMにとどまらず、検討中の海外生産に意欲を見せる。

VOICE!/日本ルトラビル社長・獅子倉雅人氏 FFS増設で開発加速

 台湾のポリエステルスパンボンド不織布(SB)メーカーであるフロイデンベルグ・ファーイースタン・スパンウエッブ(FFS)は今年、2号機(年産1万2000トン)を稼働させ、総生産能力を2万トンとしアジア第2位の規模になった。そのFFSの日本での販売子会社、日本ルトラビル(大阪市中央区)の獅子倉雅人社長にポリエステルSBの将来性などについて聞いた。

――ポリエステルスパンボンド不織布(SB)の将来性をどうみる。

 ポリエステルSBは各種産業用に使用されており、紙おむつ中心のポリプロピレンSBにはない強度をはじめ特徴がある。もちろん、用途開拓に時間は掛かるものの、置き換わる素材はない。需要面では今後も底堅い動きを見せるのではないか。

――ポリプロピレンSBは独ライフェンフォイザー製設備の導入が進む。

 ポリプロピレンSBは設備競争ともいえる。用途開拓は行われているが、大半が紙おむつという単一用途だ。それに対して、ポリエステルSBは大型用途に集中するのではなく、幅広い用途で使われているので、ある面、安定性はある。

 また、作れば売れるものでもなく、技術力や用途開拓など企業間の差は大きい。

――今年、親会社であるFFSが増設を完了した。FFSの今後の戦略は。

 この数年間、FFSだけでなく、独フロイデンベルググループのポリエステルSBは極度の玉不足に陥っていた。このため、次の開発、改良ができない状態だった。

 ようやく、その余力が生まれたので、この下期から来年度にかけて新提案ができる準備を進める。

――FFSの増設は中国需要増への対応でもある。

 中国需要も急拡大からやや落ち着きつつあるが、堅調に推移している。現在、FFSの中国輸出は3割だが、増設後は4割を想定している。日本向けも拡販を目指しているが、主力のカーペット基布だけでなく、防水基布など他分野での開拓を進める。