不織布新書07秋/新不織布が続々登場 新市場開拓への起爆剤

2007年09月27日 (木曜日)

 独自性を持つ新不織布が本格期を迎えている。旭化成せんいは今月10日、新不織布「プレシゼ」の竣工式を開き、本格的な事業展開を開始、クラレクラフレックスが昨年導入した水蒸気不織布「フレクスター」も下期から本格販売に踏み切る。帝人ファイバーは日本毛織子会社のアンビック(兵庫県姫路市)に垂直不織布「V―Lap」の本格設備を貸与し、11月から本生産を始める。いずれも他社にはない独自不織布と言ってよい。新不織布で狙うのは新たな市場創造だ。

プレシゼの本機稼働/下期、フレクスター発売

 旭化成せんいのプレシゼは均一性が高く、優れた捕集性、高いバリア性などが特徴で、年産2000トン(1・3メートル幅、目付は15~150グラム)の本設備を導入した。本格事業化に伴いサブブランドも設定。ヒートシールタイプは「プレシゼ アルファシール」、吸水・吸湿タイプは「同モイスト」、フラットタイプは「同フラット」、超フラットタイプは「同スーパーフラット」とした。

 雛元克彦スパンボンド営業部長は「微粉体包材、食品フィルター、メディカルテープなど適正分野が決まってきた」と自信を見せる。原則として溶融紡糸できるポリマーはすべて可能であり、ナイロン製では「液体フィルターなどを狙う」(同)。初年度は半期で500トン、09年度にはフル生産が目標だ。また、薄くて均一で最先端をさらに追求する考えを示し、一層の細繊度化などプレシゼを進化させていく。

 クラレクラフレックスのフレクスターも1年間の開発を経ていよいよ動き出す。クラレグループの機能素材を水蒸気で交絡することで、吸収性、クッション性、伸縮性、断熱性など様々な特徴を発現。しかもボードまで生産できる。昨年、年産1000トン(1・6メートル幅)の本設備を導入し、需要家段階での開発を進めてきた。

 最も先行するのは伸縮包帯で「内外で商品化のめどが立った。下期から本格販売に入る」と濱幹広社長。その他、クッション性を生かしたブラジャーカップでの商談も進む。期待のボードも建材で評価中にあり、「07年度中にめどを付ける」考えだ。ウエットティッシュなど使い捨て中心から産業資材用へのシフトを進める同社にとって、フレクスターは戦略商品でもある。

 TFJがアンビックと組んだ垂直不織布も本格販売への手応えをつかんでいる。11月から本生産を開始する同不織布は繊維が縦方向に並ぶ。これにTFJの「エルク」やグループのPTT(ポリトリメチレンテレフタレート)繊維「ソロテックス」を組み合わせることで、反発性が高く、ヘタリが少ない、かさ高で軽量、通気性が高い、曲げやすくて成型しやすい不織布ができる。すでに「掃除機の吸音材やまくらなどに採用が決まっている」(TFJの籔谷典弘短繊維事業部長)と言う。

エスパンシオーネ好調持続/ベンリーゼ細繊度軌道に

 こうした独自不織布は既存でもある。KBセーレンのポリウレタン製メルトブロー不織布「エスパンシオーネ」はその一つだ。ポリウレタンを原料にし、伸縮性が特徴のエスパンシオーネは今上期も増収増益を達成する見通し。

 とくに救急ばんそうこう向けが好調で、販売量は前年に比べ2割も増えた。下期もこの勢いを持続するとみるが、川端徹工業資材事業部長は「分母が小さく、盤石ではない」と述べるなど、さらなる事業拡大に意欲を見せる。08年初めには後工程の改造で増能力するが、この5年で倍増規模に拡大するとともに、さらなるステップを視野に入れる。そのために、すでにオレフィンやエステル系での開発を進めているように、ポリマー段階での開発に力を入れている。同時に、エスパンシオーネだけの製法にとどまらない考えも示す。海外市場の開拓にも乗り出す構えで、08年は中国、09年は独で開催されるテクテキスタイル展に出展する計画だ。

 旭化成せんいのキュプラ長繊維不織布「ベンリーゼ」も世界で唯一だが、さらに進化させた細繊度の「ベンリーゼMF」が軌道に乗り始めている。すでに、全販売量の15~20%を占める。クリーンルーム用高性能ワイパー、メディカル、化粧雑貨などに販売している。また、毛羽の発生を既存品に比べて75%も引き下げた新タイプも下期中に技術確立し、08年度から販売を開始する意向だ。

 独自不織布はまだまだある。新日本石油の新日石プラスト(東京都港区)の経緯直交不織布「ミライフ」も一風変わっている。同社では不織布ではなく「積層布」(ミライフ推進室マーケティンググループの松本光太郎氏)として訴求。このほど海外の大手ブラインドメーカーへの採用が決定した。衣料用でも福井の産元商社が採用するなど、広がりを見せる。

VOICE!/タピルス社長・竹中康雄氏 技術偏重の企業目指す

 メルトブロー不織布(MB)では珍しい専業であるタピルス(東京都港区)。「技術に偏ったいびつな企業にしたい」と語る竹中康雄社長に販売状況と今後の課題について聞いた。

――今春、MB設備を増強し、生産能力が3~4割増となった。

 この1~2年で増能力分は埋める計画だが、現在の販売状況は一山越えた状態。ただ、先のSARSでマスク需要が急増した後に比べれば、今回の反動は少ないとみており、年末には需要回復を期待している。

――主原料であるポリプロピレン樹脂が高騰している。

 原燃料価格の高騰分を吸収するのは限界に近い。一律での価格転嫁を予定している。同時に採算性の改善などに向けて、既存技術をブレークスルーした商品の開発に取り組んでいる。需要家にもプラスになる商品であり、これを、この1~2年のうちに発売したい。もちろん、長期的に生き残るために、様々なコスト削減の検討も始めた。

――不織布生産量が伸びているが、原反輸入も増加している。今後をどうみる。

 新技術の開発で新たな用途開拓が進めば別だが、不織布が今後とも高い成長を持続するとは思えない。また、不織布輸入については直接的に輸入品に変わるリスクは少ないが、間接的な影響は出てくるかもしれない。

 というのも、中国企業が欧米輸出した加工品と日本の加工品との競合が懸念されるからだ。ただ、日本の不織布業界は独自技術による差別化を目指しており、その方向性がますます強まっている。それをどこまで追求できるか、技術力の問題であり、技術戦略が非常に重要になる。

――貴社の課題は。

 当社としては「技術でっかち」のいびつな企業にしたいと考えている。年末には試験設備も導入する。これを活用して開発をさらに強化する。また、将来の収益の柱を作るためにも必要だ。それには人材育成が最も重要になる。この4~5年で技術者を6人新規採用した。彼らの育成が緊急課題である。