ノロウイルス対策繊維/シキボウ「アルゴン」開発 近畿大学・坂上教授と協力

2008年01月31日 (木曜日)

 シキボウは30日、業界初となるノロウイルス対策繊維「アルゴン」を開発したと発表した。安全性の高い有機化合物を繊維に架橋結合させたもので、ウイルスを捕捉し、人体への感染を抑える効果が期待できる。機能評価には近畿大学農学部の坂上吉一教授の協力を得た。08秋冬からユニフォームや寝装用途などで販売を開始し、初年度1億円、3年後3億円の売り上げを目指す。生地値は未加工品対比で約20%増しとなる。

 集団食中毒を引き起こすノロウイルスは、一般の消毒剤では不活性化せず、85℃以上で1分間加熱するか、高濃度の次亜塩素酸ナトリウムで処理するしか不活性化の手段がなかった。しかし、ノロウイルス感染者からの排泄物や嘔吐物で汚染された繊維製品を次亜塩素酸ナトリウムで処理すると、素材劣化や色あせが発生するほか、有害な塩素ガス発生のリスクがあるなど、対策が難しかった。

 これに対してシキボウでは繊維に付着したウイルスを捕捉することで、人体への感染を抑える方法を研究し、安全性の高い有機化合物をセルロース繊維に架橋結合させることでこれに成功した。繊維に捕捉されたウイルスは2日程度で死活するという。

 機能の実証には近畿大学農学部環境管理学科の坂上吉一教授(薬学博士)の協力を得て、ノロウイルスと同じカリシウイルス科に属するネコカリシウイルス(注)を使用した実証試験を行った。ウマ血清5%を含むウイルス液をアルゴン生地に浸透させ、室温で10分間置いたものを分析した結果、未加工布との比較で、ウイルス感染値が半減、ウイルス数も99・4%減少する結果が出た。洗濯50回後の生地でも同等の試験結果を得ている。

 シキボウでは08秋冬から販売をスタートし、食品産業用ユニフォーム、福祉施設用ユニフォーム、介護衣、学童用給食衣、寝装用途などに展開する。また、綿やポリエステル綿混織・編み物のほか、不織布にも同じ加工が可能なことから、マスクやフィルターなどの用途開発も重点的に進める考えだ。加工は織物に関しては染色子会社、シキボウ江南とインドネシア子会社、メルテックスで行い、ニットは外注で対応する。

 (注)ノロウイルスは、生きた細胞中でしか培養することができないため人工的な実験での使用が難しい。このため、実験ではノロウイルスと同レベルの性質を持つネコカリシウイルスを代替使用する。この方法は、米国環境保護庁(EPA)でも一般的に使われている。