08夏季総合特集/新たな発想で勝つ/合繊/産地の技術力活用

2008年07月14日 (月曜日)

 帝人の大八木成男社長は7日に名古屋市内で開かれた「中部帝人会」のあいさつで「時代が変わって、“私”だけ生きるというのは無理になった。これからはパートナーシップが重要」と、取引先企業とともに新しい繊維産業を構築する考えを示した。東レや帝人をはじめとした合繊は新たな産地企業との連携、協調を進めている。その方向性は着々と次世代型の繊維産業の姿へと向かいつつある。

第3ステージに立つ/東レ合繊クラスター

 先月6日、金沢市内のホテルで東レ合繊クラスターの第4回定時総会が開かれた。これまでの成果について、中山賢一会長(小松精練会長兼社長)は「3年半で着実に成果を上げた」と評価。今後の方針ではマーケティングを重視した運営を強めるため専任担当者を置くなど、東レ支援のもと“自主・自立”に向け「第3ステージに立った」と強調した。

 正会員の中からマーケティング専任者を選ぶとともに、事業系分科会の下に販売、参入、参画という面で横串的な機能としての「営業企画分科会」を置き、各技術・素材分科会と連携。マーケティング専任者と連動させることでマーチャンダイジングも進める考えだ。

 組織体制を既存の技術・素材8分科会から「先端素材」「環境配慮型素材」「革新技術」の3つの切り口から6分科会に再編した。各分科会で開発活動を進めるとともに、自動車資材、環境資材、先端ファッション、スポーツ・機能テキスタイルなどの用途、市場に向けて適時プロジェクトを推進し、公的資金の活用も行う。「購買・物流部会」も新設。共同購入などを視野に入れ、コラボレーションを進めることで経済効果を一定部分クラスターに還流させるとともに、「バーチャルカンパニー・トータルインダストリー」の考え方に基づく、SCM(サプライチェーン・マネジメント)の構築やトータルコスト削減への取り組みも促進する。

 東レ合繊クラスターの一番の目的は産地の自立にある。

 しかし、クラスターが“世界最強の産地企業集団”としてのビジネスモデルを形成してくれば、東レにとっても大きな力になる。

他社も産地技術力重視/帝人F、旭化成せんいなど

 帝人ファイバーは各産地企業と共同で新商品開発や市場開拓を進める「産地プロジェクト」の第2次プロジェクトを進め、今年度売上高10億円を見込んでいる。

 第2次プロジェクトでは産業資材用途でのテーマ選定を中心に、産業資材用特殊原糸やナノファイバー、耐熱性PLA「バイオフロント」繊維などの新規用途拡大を各産地で目指す。

 さらに第1次プロジェクトが産地企業サイドからの提案を受け入れる形であったのに対し、今回は開発精度を高めるために徹底的な産業資材市場の分析を実施、販売については帝人ファイバーが積極的に関与する。

 帝人ファイバーと産地企業が“1対1”で共同開発を進め、帝人ファイバーは長繊維技術や加工技術の提供、マーケティング資金のバックアップ、製品化のアレンジなどトータルコーディネーションを提供する。

 06年にスタートした第1次プロジェクトでは30のテーマで15社の産地企業と取り組みを進めており、今後も「産地と共に成長」をテーマに、プロジェクトを積極的に推進する考えだ。

 旭化成せんいもキュプラ繊維「ベンベルグ」を通じ、産地との連携で表現力を高めてきた。5月に開かれた09春夏アウター素材展では11産地から25社の有力コンバーターが参加、アウターとしてベンベルグの可能性を追求した素材を多彩に打ち出した。

 アシセン(栃木県足利市)はベンベルグトリアセテート、ポリエステルとの複合丸編み地、西川毛織(名古屋市)はメンズフォーマル向けにベンベルグの長・短繊維とウールの複合素材を、青文テキスタイル(山形県米沢市)はベンベルグ綿やポリエステル、アセテートなどとの複合先染めジャカード編み物を展示するなど高い技術力を駆使した素材が集まった。また、小井庸嗣・瀬田一郎両デザイナーとのコラボで製品展開も充実させ、プリントを含めた展開でトレンドを具現化するなど、ベンベルグのアウター素材への浸透を進めている。

日本化学繊維協会・坂元龍三会長/協会のあるべき姿検討

 繊維産業を取り巻く環境は、欧米の対中国への輸入枠撤廃やFTA/EPAの進展による国境なき競争激化、原燃料価格のさらなる高騰、地球環境問題の深刻化などにより大きく変化している。

 また2008年度からは国の繊維特別施策がなくなり、今後は行政支援を離れて自ら自立の道を開拓していくことになり、今後、日本の繊維産業は新しい時代に突入する。

 このような状況の下、構造改革をさらに推し進め、世界と競争していくためには会員各社の自助努力は当然のことながら、今後は企業間の様々な経営レベルでの提携、事業統合など業界の再編成による抜本的な競争力の強化といった視点が必要となる。

 また、個々の企業のみならず、業界団体の再編・統合も将来に向けての新たな課題としてとらえ、繊維産業全体の構造改革の道を求めていくことも重要である。

 このような事業環境を踏まえて、(1)繊維産業の活性化に資する情報収集、調査、分析活動の充実(2)会員各社の構造改革と軌を一にした環境整備に努め、効率的かつ実勢に沿った内容と規模の業界団体を目指す――を今年度の化繊協会活動の基本方針とする。

 具体的なテーマとしては、インド調査を実施する。中国が繊維大国から強国になった今、次の繊維強国の第1候補に挙げられるのがインドである。共産主義を標ぼうしつつも経済では市場主義を積極的に導入している中国に対して、インドは民主主義的な制度の下で社会主義的な施策が導入されているのに加え、民族、宗教、カーストなどの要因がその社会構造をより複雑なものにしている。その構造の下、インドの繊維産業は今後11年までの3年間で引き続き大幅な量の拡大を目指している一方、体質の改善、構造改革をも明言していることから、化繊協会としてもこの複雑な現状を現地調査を含めて分析し、未来の繊維強国候補に対する今後の我が国繊維産業の対応策や方向性について検討する。

 また中期運営計画の立案に取り組む。03年度に策定した中期運営計画(04~07年)を具体的に推進し、業界の変化に対応した業界団体の姿を目指して自ら変革に取り組み、一応の成果を見た。しかしながら、予想以上の事業環境の変化に対応し、会員各社が「集中と選択」をさらに進めた結果、化繊協会が支えるべき業界共通領域がさらに変化・縮小している。これらを踏まえて、本年は協会のさらなる運営効率化を目指し、今後のあるべき体制を具体的に検討し立案する。