ひと/東レの取締役 生産本部(医薬・医療生産)担当に就いた・梅田 明氏

2008年07月16日 (水曜日)

生産技術で事業をけん引

 「医薬・医療事業は人命にかかわる大事な事業であり、責任の重さを痛感している。また東レの戦略的育成事業の一つとして拡大・発展の責務を全うしていきたい」と、柔らかな物腰の中にも重大な決意をにじます。

 まず柱の一つである、人工透析器のダイアライザー事業再構築に全力で取り組む。岡崎工場の生産安定化とともに生販一体の新体制により、現・国内シェア15%を倍増させる。併せて、海外展開も強化していく。

 入社当初から昨年6月まで、「テトロン」長・短繊維をはじめ、繊維事業の生産・技術開発をリードしてきた。1986~87年には、三島工場から愛媛工場への品種移管にも携わった。「当時、三島工場は特殊品を主体に147品種もの多品種少量生産、愛媛工場は50品種の汎用品を主体とする少品種大量生産――と両極端にあった。特殊品を三島と同じように愛媛で生産することに理解を得るのは大変だった」と振り返る。

 もう一つ忘れられないのが、貼付剤向けストレッチ不織布用潜在捲縮原綿「T24」の開発だ。毎月2回、不織布メーカーの担当者と打ち合わせ、共に開発してきた。その後さらに薄手の貼付剤用に、拘束力の大きい水流交絡不織布でも捲縮発現する「T25」を開発した。

 「直接顔を合わせ、共に困難を乗り越えてきた。こうした開発の姿勢は医薬・医療事業にも通じる」とも。昨年6月に生産本部の医薬・医療生産担当に就いて早速、技術開発スタッフも医療現場の声を聞くなど、世の中や市場の動きを生産技術に反映し迅速に動ける体制を整えた。

 「仕事の仕方や難局面での対処の仕方など、繊維の中で諸先輩から教わったことを医薬・医療事業でも生かしていきたい」と梅田氏。「医薬は創薬型で研究開発が引っ張る、医療材は生産技術力がけん引する。東レの中ではまだ新規事業なので、拡大していくには生産技術的な観点からスキルアップが必要」と力説する。

 趣味はランニングやゴルフ。三島工場長時代から走り始めた。三島工場長といえば地元の名士のような存在。就任した年末年始には様々な宴の席に招かれ、体重が1カ月で6キロ増えたからだ。今でも自宅周辺を、週に1~2回、約50分走る。取締役就任に当たり同僚から贈られたスーツを新調した時、数センチ大きくなっていたウエストが少し気がかりだ。 

うめだ・あきら

 1975年大阪大学大学院理学部化学科修士修了、東レ入社、97年ステープル技術部長、2000年生産技術第1部長兼技術センター企画室主幹、02年テトロンフィラメント技術部長兼ナイロンフィラメント技術部長、同10月フィラメント技術部長、04年三島工場長、07年生産本部(医薬・医療生産)担当兼生産技術第4部長、08年6月から取締役 生産本部(医薬・医療生産)担当。57歳。